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長谷川博之(トークライン中学秩父JEサークル)
日記を書かせる。作文を書かせる。
子ども達は放っておくと抽象的な形容詞を多用する。「〜はすごいと思う」「とてもたのしかった」などである。
形容詞を使えばなんとなく文章がまとまってしまうから,使う方は楽である。しかし読み手は苦労する。イメージをつかみにくいのである。何がどれくらい,どうすごいのかがまったく分からないのである。
抽象的な形容詞を使うのは表現力の貧しさゆえのことだ。これは指導すべきである。具体的で意味がはっきりしている言葉で表現させる習慣をつけさせるべきである。
だが,「描写しろ」といって出来るものではない。取立て指導が必要である。
ここでは「承」を書かせる際に有効な「描写」の授業実践を書く。変化のある繰り返しで言語技術を習得させる実践である。たいへん盛り上がる授業である。
指示1 同じスピードで写しなさい。
A 彼女は別れが辛くて泣いた。
B 彼女は列車の窓から身を乗り出し,溢れる涙をそのままに,手を振り続けた。
数回音読させる。
「ドラマの一場面を文章にしたものです。同じ場面です」と告げる。
「北の国から」の石田あゆみが東京に戻っていくシーンを見せる。
発問1 AとBの違いは何ですか。
指示2 ノートに書きなさい。書けたら見せにいらっしゃい。
見せに来た生徒のノートに丸をつけ,「もうひとつ書きなさい」といって戻す。半数の生徒が持ってきた時点で発表させる。「書けなかった人は,友達の意見を参考にしなさい」と告げて,である。
そして,発表させる。生徒から出なければ,教師が「描写の文」「説明の文」という呼び名を教える。
詳しい説明は省いて,作業の中で理解させるために,発問を畳み掛ける。
指示3 写しなさい。
C 父は防火用水桶の前で,やせた妹の肩を抱き,声を上げて泣いた。
発問2 これは説明ですか,描写ですか。
これは分かる。描写である。
指示4 写しなさい。
@ 秩父夜祭に行った。とてもおもしろかった。
発問3 傍線部(板書は縦書き)を「おもしろい」を使わずに,描写の文にしなさい。たとえば,このように。
「その晩は興奮してなかなか寝つけなかった」と板書する。最初だから例示するのである。
書けた生徒から持ってこさせ,補助黒板を生徒たちが見えないように反転させて,書かせる。黒板がいっぱいになった時点で反転させ,読ませる。書いた本人→全体と読ませる。 笑いが起こり盛り上がる。
慣れないので,まだ「思い」を説明してしまう生徒が多い。
10点満点で個別評定して,なぜ高得点,なぜ2・3点なのかを全体に問うのもよい。
指示5 写しなさい。
A 彼女にふられた。僕はとても悲しかった。
発問4 傍線部を描写の文にしなさい。
同様に進める。
「体験した人はちがうなあ」「リアルでよし」などとテンポ良くコメントを付けていくとさらに盛り上がる。
このあたりで「できない子」も要領をつかめる。次は全員ができる。
指示6 写しなさい。
B 合格通知を手にした。私はとてもうれしかった。
発問5 傍線部を描写の文にしなさい。
「3月4日,自分が笑っている姿をイメージしてごらん」
「これが書けたら,現実になるぞ!」
などと声をかけた。
どの子も作文できた。読みの場面ではたいへん盛り上がった。
この日の日記には,授業の感想とともに,多くの子が「先生,これは描写になっていますか!?」と自作の文を綴っていた。