非合理的な存在や力を信じる若者が増えている。

 NHKの放送文化研究所では1973年から継続して5年おきに、全国の16歳以上の国民5,400人に対する「日本人の意識」調査(個人面接法による)を行っている。2013年の有効回答数は3,070人(回答率56.9%)である。刊行されている報告書は「現代日本人の意識構造[第八版] 」(NHKブックス)。

 この継続調査の中で、神や仏とならんで、あの世、奇跡、お守り・おふだの力を信じるかを訊いている(同じ調査の結果で日本人全体でそうした宗教的なものの何を信じているかについては図録3971b)。

 この結果を見ると若者の中でこうしたものを信じる割合が顕著に増加してきている。2008年から13年にかけては、「あの世」と「奇跡」に関して信じる若者は横ばいとなったが、「お守り・おふだ」を信じる若者は依然として増えている。

 毎回若年層から5歳刻みで人が移って行く先の中年層もだんだんと若者層に近い考え方になっている。

 一方、逆に、60歳以上の高年層では、こうした非合理的なものを信じる者の割合は減っている。

 この結果、お守り・おふだの力を信じる者は1973年当時には高年層、中年層、若年層の順に多かったのが、2003年以降は、若年層、中年層、高年層とまったく逆の順になった。奇跡を信じる者は現代では高年層では7%しかいないのに、若者層では37%と約4割に達している。

 我々(筆者はもうすぐ高年層)は、若いころ、古い世代の人間のように非合理的なことを信じるのは、非近代的、前近代的であり、知的に劣る人種だと思っていた。こんな考えの者が高年層に増えてきたので、60歳以上ではあの世、奇跡、お守り・おふだの力を信じる者は減っているのだと考えられる。現代の若者は、こうした考えからは自由であり、気楽に非合理的な存在や力を信じるようになったのであろう。

 あの世や奇跡やお守り・おふだの力を信じようと信じまいと現実生活に余り影響はなく、どっちでもよいことだといえる。

 しかし、あの世を信じる者、お守り・おふだの力を信じる者が、一時期、1993年から98年にかけて減ったのは、1995年のオウム真理教事件の影響とも考えられる。

 オウム真理教のような非合理的な宗教活動、あるいはそれより深刻なことだが、非合理的な目標を掲げる政治運動が、今後、こうした考え方の変化を基礎に勢力を増すことがあり得るのであろうか。果たしてこれは、イスラム原理主義運動やそれに対して非合理的に反撃した米国の戦争などと国境を越えて通底している潮流なのであろうか。

 なお、以上の変化を別の形で裏づけるデータとして、宗教心を「信仰・信心」と「あの世を信じるか」の2面に分け、この50年間の世代別の変化を見たグラフを図録3971aに掲げた。

 また、姓名判断や結婚式や引っ越しの日取りにおいて縁起のよさを気にするかについての韓国、台湾、中国との比較を図録8058に掲げている。

(2010年4月2日収録、4月12日図録3971aへの参照追加、2011年5月9日図録8058への参照追加、2015年3月9日更新)


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