厚生労働省によって行われたホームレス調査(実際は市区町村職員が巡回目視によって調査実施)による人数推移を掲げた。厚労省発表の各年次の結果資料は2011年2012年2013年2014年2015年。

 調査方法については「昼間に街中を見回るだけで「テントや段ボール内の確認、本人への聞き取りはしていない」(都福祉保健局)という。ネットカフェなどで夜を過ごす人や昼間に働いている人は漏れてしまうという」(東京新聞2014.2.16)。従って、人数そのものはそれほど厳密なものではない。ただし、毎回同じ調査方法なので増減傾向には確からしさがある。

 全国の人数は2003年の25,296人以降、徐々に減少してきている。2011年には、半数以下の10,890人、2012年には1万人を切って9,576人、2013年、2014年、2015年にはさらに減り8,265人、7,508人、6,541人となっている。都道府県別・政令都市別の結果は図録7348参照。

 これは格差や貧困が増えているという一般に流布している考え方とは相容れない結果である。

 人口2,200万人のオーストラリアでは、「豪州政府統計局によると、最新の11年調査でホームレスとされたのは10万5237人。9万人未満だった06年の約1.2倍に増えた」(朝日新聞2014.8.28)とされるが、これと比較すると非常に少ない。(もっとも、オーストラリアのホームレスの定義は、最低限の住宅居住水準に達しない者とされ、一部屋に何人もで暮らしている者や他人の居宅に一時居候している者なども含んでいる。オーストラリアのセンサス報告書によると、野外居住者というホームレスの定義(Persons who are in improvised dwellings, tents or sleeping out)では、2001年、2006年、2011年に、それぞれ、8,946人、7,247人、6,813人となっており、人口比では日本より多いが、それほど大きな違いはない。従来のコメントは誤解を生みやすい記述だったので、このように追加しておく。)

 ホームレス人数減少の理由としてあげられるのは「自立支援法で、一定期間入所して生活・職業相談を受け自立を目指す自立支援センターや、緊急的な一時宿泊所であるシェルターなどの設置が一定の効果を挙げたことです。また、東京都が進めた、アパートを借り上げ自立を促す地域生活移行支援事業や、自立を支援する民間団体などの活動も功を奏したとされています。」(東京新聞2012.11.7生活図鑑「426ホームレス」)

自立に向けた施策(ホームレス自立支援法による)
  事業内容 実施自治体数
○自治体等の職員が公園等を巡回(総合相談推進事業) ●巡回相談による相談活動の実施 全国で53自治体(2011年3月現在)
○緊急一時宿泊事業(シェルター) ●緊急一時的な宿泊場所の提供
●健康診断等の実施
施設型:全国で2自治体、5施設、定員1514人(2011年11月現在)
借り上げ型:全国で40自治体、63施設、定員652人(2011年11月現在)
○ホームレス自立支援事業(ホームレス自立支援センター) ●宿泊所、食事、入浴、衣類下着類の提供
●生活・就労・健康相談
●住民登録も可能
●免許・資格を取得するための技能講習など、就業機会の確保
全国で11自治体、24施設、定員1958人(2011年11月現在)
(資料)東京新聞2012.11.7生活図鑑「426ホームレス」

 ホームレス人数の内訳を見ると男女別では男が圧倒的である。男女不明が多いのも目視調査であるからだろう。

 主要な都市の増減を見ると、東京、大阪といった主要都市、及び多くの都市で減少傾向が続いている。2015年には名古屋市と神戸市で昨年対比増加となった。

 生活場所の変化としては、都市公園の減少が目立っている。各生活場所で人数が減少している。都市公園から追いやられ、河川敷に向かうというような状況はないようだ。

 東京オリンピックの前には私の通っていた小学校の近くの赤坂の外濠 (弁慶濠)の池の縁にもホームレスが小屋を建てていたと記憶するが、多分にオリンピック開催にあわせて退去させられたのではなかろうか。汚い、臭い、見苦しいという理由でホームレス追い出しの動きは常に繰り返されてきている。「東京都渋谷区の区立宮下公園から2013年末、炊き出しなどをするホームレス支援団体が閉め出された。夜間などは公園を施錠するという規則が、支援より優先された。(中略)江東区の堅川河川敷公園では2012年、「憩いの場を不法占拠している」という理由で、ホームレスのテントが追い出された。近くの東京スカイツリーが開業し、観光客などが増加していた時期だ。07年末には東京メトロ副都心線の開通を前に、渋谷駅の地下通路からホームレスが追い出された。愛知万博の開催を前にした名古屋市でもテントの撤去があった。大型事業やイベントのたびにホームレスは居場所を失ってきた」(東京新聞「こちら特報部」2014.2.16)

 ホームレスの生活実態については、主要市の1,300人前後のホームレスに対して個別面接調査が行われた(2012年速報値)。以下はその結果である。高齢化、ホームレス生活長期化、無収入化が進行していることが分かる。

■生活実態調査の結果概要(2012年、厚生労働省) *カッコ内は順番に2007年、2003年の値

1 年齢の状況
○ 平均年齢 59.3歳(57.5歳、55.9歳)
○ 年齢階層
・40〜49歳 11.8%(10.6%、14.7%)
・50〜54歳 10.9%(15.9%、22.0%)
・55〜59歳 18.3%(26.8%、23.4%)
・60〜64歳 25.7%(21.2%、20.3%)
・65〜69歳 16.6%
・70歳以上 12.9%

2 路上での生活
(1)路上生活の形態
○ 生活している場所が定まっている者は93.2%(84.4%、84.1%)
○ 生活場所
・河川 29.0%(31.8%、17.5%)
・公園 28.2%(35.9%、48.9%)
・道路 15.9%(11.1%、12.6%)
(2)路上生活の期間
○ 今回の路上生活の期間
・「10年以上」 26.0%(15.6%、6.7%)
・「5年以上10年未満」 20.2%(25.8%、17.3%)
・「3年以上 5年未満」 15.8%(18.9%、19.7%)
・「1年以上 3年未満」 17.7%(16.8%、25.6%)
     → 「5年以上」の者が46.2%(41.4%、24.0%)となっている
(3)仕事と収入の状況
○ 仕事をしている者は60.4%(70.4%、64.7%)
     → 主な内訳は「廃品回収」が77.7%(75.5%、73.3%)と最も多い
○ 仕事による収入月額
・「1万円未満」 94.0%
・「1〜 3万円未満」 5.9%(29.8%、35.2%)
・「3〜 5万円未満」 0.3%(25.1%、18.9%)
・「5〜10万円未満」 0.0%(21.5%、13.5%)
     → 仕事をしている者の平均収入は、約0.4万円(4万円)

3 路上生活までのいきさつ
(1)路上生活の直前の職業と雇用形態
○ 職業
・「建設・採掘従事者」46.2%
・「生産工程・製造作業者」 14.5%(12.2%、10.3%)
     → 建設業関係者が約5割を占める
○ 雇用形態
・「常勤職員・従事者(正社員)」 42.0%(43.2%、39.8%)
・「日雇」 25.8%(26.2%、36.1%)
(2)路上生活に至った理由
・「仕事が減った」 34.0%(31.4%、35.6%)
・「倒産や失業」  27.1%(26.6%、32.9%)
・「病気・けが・高齢で仕事ができなくなった」 19.8%(21.0%、18.8%)

4 健康状態
○ 身体の不調を訴えている者 26.7%(50.2%、48.4%)
   → このうち治療等を受けていない者 62.8%(65.8%、68.4%)

5 福祉制度
○「巡回相談員に会ったことがある者」 78.2%(62.3%)
   →「会ったことがあり相談した者」 38.5%(35.9%)
○「シェルターを知っている者」 65.9%(61.9%)
   →「知っており利用したことがある者」 18.5%(13.1%)
○「自立支援センターを知っている者」 64.7%(66.3%)
   →「知っており利用したことがある者」 10.3%(9.1%)
○「生活保護を受給したことのある者」 25.3%(24.3%、24.5%)

6 自立について
○ 今後どのような生活を望むか
・「アパートに住み、就職して自活したい」 26.3%
・「何らかの福祉を利用して生活したい」 11.5%
・「アパートで福祉の支援を受けながら、軽い仕事をみつけたい」 11.9%
・「今のままで好い」 30.4%
○ 求職活動状況
・「求職活動をしている」者  13.7%(19.6%、32.0%)
・「今も求職活動をしていないし、今後も求職活動をする予定はない」という者 63.9%(59.8%、42.0%)

(2007年4月9日収録、2010年3月29日更新、地域別結果を分離独立し図録7348へ、2011年4月25日更新、2012年4月14日更新、7月9日生活実態調査の結果概要更新、11月12日東京新聞情報追加、2014年2月16日更新、追い出し情報追加、2014年5月12日更新、8月28日オーストラリアとの比較、11月17日オーストラリアとの比較は誤解を生みやすいので補訂-新井氏のご指摘による-、201年6月17日更新)


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