非正規雇用の拡大が格差問題と関連して我が国社会の重要関心事となっている。2008年4月1日から改正パートタイム労働法が施行され、(1)賃金、訓練、福祉厚生制度などについてのパートタイム労働者と通常の労働者の均衡(バランス)のとれた待遇、(2)パートタイム労働者の職務の内容(業務の内容と責任の程度)が通常の労働者と同じ場合の賃金の同等化努力や待遇の差別禁止、などが図られている。

 ここではOECDの資料によって、パートタイム労働者の賃金水準がフルタイム労働者と比較して時給ベースでどのような水準にあるのかの国際比較を掲げた(OECD諸国の間でも統一的なパートタイム労働の定義はないため各国の定義によるデータである。また集計対象が製造業だけの場合もあれば全産業の場合もある)。

 日本の場合、パートタイム賃金の水準がフルタイム賃金に対して48%と他のOECD諸国と比較して格段に低い点に特徴がある。

 例えばオランダの場合、ナショナルレベルの政労使の合意をベースに「同一労働価値であれば、パートタイム労働社員とフルタイム労働社員との時間あたりの賃金は同じにする」制度がある(図録3080参照)。このためパートタイム賃金の相対水準は92%と高くなっていると考えられる。

 日本の場合、何故このように欧米先進国と比較してパートターマー賃金が低レベルなのかを考えてみると、長期継続雇用(終身雇用)、年功賃金、企業別労働組合に特徴づけられる日本型雇用制度のもとで、企業も労働組合も組織への「帰属」に価値をおき、「労働」そのものへの価値づけを軽視してきたためであろう。1990年代後半以降の規制緩和とリストラの中で、「帰属」社員を減らし、パートタイマーに重要な仕事を任せるようになったにもかかわらず、それなりの労働評価が行われていないと考えられる(正社員並みの仕事をしているパート労働者の増加については図録3260参照)。

 パートタイム労働は画一社会から多様な働き方の社会への転換のためには不可欠な選択肢といえる。しかし、これだけの賃金格差があると働く方としては多様な働き方どころではないという気になってもおかしくない。パートタイマーとフルタイマーとの余り大きな賃金格差は多様な働き方の社会への転換へのむしろ阻害要因となっている。一家の大黒柱を守るという意識のみを先行させ、実際はそれほど守れていない労働組合も、一頭立ての馬車ではなく多頭立ての馬車として家計を捉える仕組みづくりへ転換するのに遅れたことを大いに反省すべきである。

 以下には原データを掲げる。ここには、パートタイマーとフルタイマーの週当たり労働時間の差、及びこれと賃金格差とから導き出される実際の週給格差についてもデータが掲げられている。パートタイマーの週給についても日本の場合フルタイマーとの格差は最大となっている。

パートタイム賃金の国際比較(2003年)
パートタイム賃金
のフルタイム賃金
に対する比率
(%)
パートタイマーの
週当たり労働時間
のフルターマーに
対する比率(%)
パートタイマーの
週給のフルタイマ
ーに対する比率(%)
オーストラリア 74 63 47
ベルギー 82 55 45
カナダ 66 44 29
フィンランド 92 57 52
フランス 81 59 48
ドイツ 74 61 45
ハンガリー 63 73 46
イタリア 93 63 59
日本 48 59 28
オランダ 92 55 51
ニュージーランド 91 34 31
ノルウェー 78 48 38
ポルトガル 79 52 41
スペイン 76 50 38
スウェーデン  91 (manual) 51 (manual) 46
85 (non-manual) 61 (non-manual) 52
スイス 96 58 56
英国 65 48 31
(注)パートタイマーの週給のフルタイマーに対する比率(%)は左2項を乗した値。
(資料)OECD, Taxing Wages 2004/2005: 2005 Edition

(2008年4月14日収録)


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