いい品質の吟醸酒の見分け方

<目次>                             §トップページに戻る§

1.<吟醸酒の裏ラベルのうまい読み方>

   (1) 酒造米について
(2) 精米歩合について
(3) 使用酵母について 
(4) 仕込水について
(5) 杜氏と蔵元について
(6) 純米酒とアルテン酒の違いについて
(7) 私と関矢健二氏について
(8) 淡麗酒について
(9) ラベル明細の見方 
(10)瓶詰の日付について
(11)酒販店の見分け方について

2.<吟醸酒のタイプ別の話>

   清酒の製法品質表示基準
  <特定名称の清酒の表示>
  <普通酒>
製造上の特徴から分ける方法 
  原酒、生酒、生貯蔵酒、生詰め酒、火入れ酒、新酒と熟成酒


 

いい品質の吟醸酒の見分け方

 絵画を見れば判るように、良いキャンバスにフランス産の高価な絵の具を使い最上の道具で描かれた絵でもへたくそが描けば、だめで観られない絵になりますが、これを名人上手が描けば素晴しい1級品の名画に成るのです。落語の世界にも「頼むから下手な絵だったら書かないでくれ。このままの白い”ついたて”だったら、高く売れるのだから。」と言うのがあります。
 同じ様に酒造でも良い杜氏に掛ると魔法のようにそれらの原料が生きてくるのです。材料が同じなら杜氏の力、杜氏の力が同じとすれば(この様なことはあり得ないが)次に説明する酒造米、精米歩合、酵母の3要素で決ります。それと仕込水、蔵元の姿勢で決定的に吟醸酒の味、香りが決ります。
 ここで吟醸造りとは何かと言うことをおさらいしておきますと、特別に吟味して醸造することをいい、伝統的には、よりよく精米した酒造好適米を低温でゆっくり発酵させ(約30日位)、特有な”吟醸香”を有するように醸造することを言います。吟醸酒は吟醸造り専用の優良酵母、原料米の処理、発酵の管理から瓶詰、出荷に至るまでの高度に完成された吟醸造り技術の開発普及により、商品化が可能となったものです。
 しかし、毎回言うように吟醸酒もピンキリです。ですから何処を押せばイイ吟醸酒に行着けるかの話をします。

 

1.<吟醸酒の裏ラベルのうまい読み方>

 最近の吟醸酒のビンには当然付いている表ラベルの他に、ビンの裏側に内容説明のための裏ラベルが貼ってあるのが主流になってきています。 この裏ラベルの見方によって内容の吟醸酒を推察する、うまい読み方を伝授します。
 YK35
と言う言葉があります。これは日本酒鑑評会で常に上位入賞をする為には、これだけの内容が必要という略号で、Yは山田錦のY、Kは協会9号酵母のK、35は精米歩合35%を指す言葉で、これだけそろえば「まーランクですよ」と言う意味です。このへんを中心に話が進みますが、本当は、それだけでは無いのが吟醸酒の奥の深さです。

 

(1)酒造米について
 日本酒鑑評会で常に上位入賞をするには酒造好適米の「山田錦」を使わないと無理と言われる程の酒造米で、横綱中の横綱と言われる位の、もう右に出るものは居ないと言うほどのものです。この山田錦は味も落着いた貫禄のあると言っても鈍重では無く軽快で品が良く飲手をうならせるだけの深みのある旨さを醸し出します。これ程良い米なら何処の蔵元でも使えばいいのにと思いますが、絶対量が少なく前年の購入実績を元に奪うようにして各蔵元に消えていきます。ですから高価です。しかし農家では、この米はリスクが大きく手が出せないのです。それは米粒が大きく、稲穂の背が高いので倒れやすく、奥手で収穫時期が遅いので丁度台風の時期と重なるのです。全滅の危機さえ有ります。さらに岡山の様な気候風土、日中の温度差の激しい所で棚田のような山肌を好み大変気むずかしく、機械化がしにくく人力に頼るような耕作になり収量も食用米から比べると少なく、作り手からすると作りたくない米の一つです。しかし繰返しますが、この米無くしては今の吟醸酒はあり得ないのです。
 一級と言われる食用米の「ササニシキ」や「コシヒカリ」の様な食用米では、どんなに頑張っても良い酒吟醸酒は残念ながら出来ないのです。
 酒造好適米には、山田錦の他に、五百万石、美山錦、雄町、八反錦、玉栄、日本晴、松山三井等があります。酒造好適米の生産量は全国で約7万トン弱で、五百万石が約3万2千トンで全体の約半分。2位の山田錦は1万3千トンで約2割。この両者を足すと全体の7割前後の量になります。

 

 (2)精米歩合について
  上質の吟醸酒は50%以下(数字の上では小さい数の方が良)の精米歩合が目安です。ただし、鑑評会向けの吟醸酒は35%前後です。
 精米歩合とは、精米された米(白米)の重量÷最初(玄米)の重量×100=精米歩合%で表されます。たとえば精米歩合45%というのは、55%の外側を削り取り残りの中心部の45%で仕込むことを意味します。米のなんと55%はヌカとして棄ててしまうと言うことで、大変贅沢な造りだということが判ります。
 なぜその様なことが行われるかと言えば、米粒一粒ひと粒は胚芽や表層部に近いほどタンパク質や脂肪、灰分、ビタミン分が多いのでそれを削り取り、中心部(これを心白と言います)の炭水化物(でんぷん)の多いところを使うのです。タンパク質や脂肪分は酒造には適さず、質の悪い酒にしか成りません。
 ちなみに、家庭で食用にされる白米の精米歩合は約92%程度ですから、いかに贅沢な造かがわかります。特に、特定名称の清酒に使用する白米は、3等以上に格付された玄米に限定されています。普通酒で75%位です。
 この50%精米歩合は時間にすると、約3昼夜掛ります。大変な時間と手間が掛っています。

 

 (3)使用酵母について  
 
これも日本酒鑑評会で常に上位入賞をするには「協会9号」を使わないと無理と言われる程の実力を持っています。この協会9号は「香露」と言う有名な銘柄を出している、熊本県酒造研究所の産で、酒の神様と言われた故 野白金一博士の数々の業績の一つとして、熊本酵母(協会9号)が誕生したのです。最近では、大多数の蔵元がここから生れたこの酵母を使い吟醸酒造りをしています。

 

 (4)仕込水について  
  軟水だ硬水だ鉄分の含まれている水は醸造には使われない、などの難しい話は別の解説書に譲るとして、ここではいくつかのエピソードを紹介することで、大切さを感じてとって下されば幸いです。
 私達は蔵元を訪問すると必ず、することがあります。ひととおり説明を受けた後、普通は試飲となりワイワイ、ガヤガヤとなるのですが、この後必ずその蔵元の仕込に使う井戸水すなわち仕込水を飲ませてもらうのです。この井戸水の水質がその蔵の酒の味を全て決めているのです。その蔵元の酒は、その仕込水にアルコールを乗せたような味になり、本当にこの水が味のベースに成っているのです。
  美味しい水の時はもらったコップの水を綺麗に平らげてしまい、酒でもないのに(?)お代りを所望する者まで出てきます。反対にまずい水に出会うと口を付けただけで飲まずに、元のお盆へ戻してしまいます。蔵元さんとすれば「水をくれ」というお客も希ながら、全員が希望するので手間は大変なことになります。その上一見飲まずにそこに放置されたままになるので、なおさら蔵元の接客の方は「なんだこの人達は?」となってしまいますが、こちらも飲めないものは飲めないで、困ってしまうのです。
 地方の人が上京してくると必ず「東京の水はマズイ」と言います。いつも飲んでいる水との違いは直ぐに判るのです。我々都会に住んでいる者でも、海の近くに行くと飲水から潮の香りがするのが判りますし、温泉地に行けばその温泉の香りを感じます。しかし、いつも飲んでいる水の質、香り、味はなかなか客観的に判定を下すことが出来ないのです。蔵元さんもそうなのでしょう。よほどの研究家で無い限り、慣れすぎて水質まで気が回らないのが現実だと思います。
 ある蔵元で、飲ませてもらった水が東京の水道水(失礼!最近は美味しいのです)より悪く、本当にこれを仕込み水としていることが信じられず、「水道水ではなく、仕込水を」と言ったら「これがそうです」との返事、みんなで顔を見合わせてしまいました。しかし、ひるまずもう一度聞きました。「活性炭を通しているのですか?」、「いいえ」....もう会話は無くなりました。
 またある蔵元では、出された大皿のお新香がおばあちゃんの秘伝の物でまあー美味しいこと、蔵酒も仕込水の悪さもあり本筋はほったらかしで、みんなで平らげて、そのまま帰って来てしまったことを思い出しました。

注)活性炭について、家庭で使っている活性炭入の浄水器と同じ原理で、工業用の大型の浄水設備。これを通せば、当然変な臭い、味が取れて爽やかな飲口の水になる。しかし、当然ながら金と手間が掛る。

 

 (5)杜氏と蔵元について
 本当はこの項目の杜氏についてを、一番先に書かなければ成らない程、酒造には大事なことなのですが。ラベルの見方と買方のアドバイスと言うことで、今になってしまいました。最近ではどの瓶にも裏ラベルに杜氏の名前が入っていますが、最初に買うとき、本当は買手としては良く判らないのです。判らない初めてのジャンルの音楽CDを買うとき、判らないアーチストの名が入っていても判らないものは、判らないのです。しかし、一度美味しい吟醸酒に出会えたら、そのアーチストである杜氏さんの名前を記憶しておいて、次からはその杜氏さんのフアンになりましょう。音楽も美酒吟醸酒も同じです。
 そうでした、杜氏さんの素顔を紹介するのを忘れていました。杜氏とは、酒を造るときの最高責任者です。野球で言えば監督、大工さんで言えば頭領(東京ナマリで”とうりゅう”と読みます)になります。大手の蔵元の様にエアコン完備で、365日酒造が成されている所では、常駐の杜氏さんが居ますが、大部分の蔵元では昔通り、杜氏さんは通常自分の田圃で秋の刈入れが終るとその足で、仲間を連れて蔵を訪れます。そして真冬の仕込(寒仕込み)をして、春になる頃最後の仕込を終え、仕上げが済んだら、郷に帰るのです。普通蔵元では春から秋までの暑い時期は仕込はしません。それは寒仕込と言うことでも判りますが、良い酒は寒さの中で醸し出されるのです。実は杜氏さんが郷で米作りをするので出来ない、というのはウソです。冗談はさておき、杜氏さんはアーチストであり、センスと技量と経験が全て吟醸酒の中に醸し出されます。歌手や画家や彫刻家の様にその人、その人格、品性がそのまま作品と言う吟醸酒の中に映し出されます。立派な杜氏さんの手に掛った作品=吟醸酒はもはや芸術作品なのです。
 蔵元について、野球で言えば杜氏の監督と蔵元のオーナーの関係にそっくり当てはまります。杜氏の監督をいかに働きやすくするか、又はバックアップ出来るかがオーナーの懐の深さでもあり、信頼関係の良さでもあります。利益だけ追求するオーナーではイイ吟醸酒は出来ませんし、無知で口だけは出し杜氏をコントロールする事もできないようでも困りますし、イイ意味の二人三脚が出来た蔵元が、イイ吟醸酒造のベースを築くのだと思います。

 

 (6)純米酒とアルテン酒の違いについて
 アルコール添加(アルテン)について話18でも書きましたが、もう一度大事なことなので一部再録しますと、  普通酒での話は別にして、吟醸酒では、別の使われ方をします。それは、アルテンする事によって、吟醸香を最大限に引き出す事を目的に添加されています。 これは”もろみ”(出来上った白濁の酒の元=これを絞ることによって清酒と酒粕になる)の最終段階で、アルコールを添加することにより、酒粕の方に付いていく香りやうま味コク等を清酒中に溶かしだし、旨さ香りを最大限引出すために、加えるのです。元来、吟醸酒とはこの様に旨さの元を、充分引出して造るのが本筋なので、添加することにより、初めてその上質な旨さ香り等が生きてくるのです。 なお副次的に、喉ごしの”キレ”を良くする事があります。アサヒビールのドライと同じ理屈で、アルコール度数が高いと喉ごしが爽やかになる傾向があります。 また香味を劣化させる乳酸菌(火落ち菌)の増殖を防止するという効果もあります。
通常アルテンは最小限度で止められますが、その量についてはどの蔵元も銘柄ごとのハッキリした数字を上げてくれませんので判りませんが、10%以下だと信じます。10%以上添加したものは吟醸酒とは言え無くなります。前途した三増酒の使われ方と根本的に違うのです。表現(アルテンと言う表示方法)は同じでも内容(目的)は全く違うのです。 
 純米酒はこのアルコール添加がありません。
もうここまで読み進まれた皆様は、私が次に書くことを、判っていながら読まれることになりますが、当然アルテンしていない純米酒の方が、混ぜ物がないだけ質がイイかと言えば、そうではなく、どうしても、欠点として味がもたつき重く、喉ごしの切れが悪く、香りも華やかさがないのが特徴で、薄暗がりの中でカーテンの向うの美女(?)を見るような頼りなさと、いらいらが募ります。
 今までの説明のようにアルテンした吟醸酒の方がずっとウマイのです。日本酒鑑評会で常に上位入賞をするのは、このアルテン吟醸酒ですし、主流です。 純米酒の良いところは(?)混ぜ物がないだけですが、中には例外というものは必ずある物で、「これが?」と言う位素晴しいものも有るには有るのですが多勢に無勢です。ですが、
近年純米酒でもこれらの欠点が無いものが数多く見られるようになってきました。今後の楽しみが増えました。
 純米酒の旨さの誤解について重ねて言うと、アルコール添加酒についても同じ事が言えますが、これについてはアルテンの有無ではなくて、当然原料の米、米麹、精米歩合の善し悪しで決りますし、それに仕込水、杜氏の力量などで決定的になります。どれ一つでもレベルの低いものがあればそれに引きずられて、イイ純米酒(吟醸酒)は造れません。
 蔵元も”熱ものに懲りてなますを吹く”ではないのですが、三増酒などで使われているアルテンが、良いことだとは思っていないことを自分自身が一番判っているせいか、アルテンしていない純粋(?)の酒イコール良い酒との認識で数多くの純米酒が造られ続けて居るのではないかと思われます。また消費者も米だけで造られた酒が混ぜものが無く純粋で本物だ、みたいな変な偏見で純米なら何でも良いと、吟醸酒を選んでいるのも原因の一つではないかと思われます。
 造られ方や原料に惑わされず本当に美味しいものは美味しい。マズイものはマズイと言えるように早くその事に気づきましょう。 

 

(7)私と関矢健二氏について
 関矢健二氏は酒のコーディネーターと最近は自称しています。東京・東上野”関矢酒店”店主。NHK−TV「酒蔵の立直し、請負います」にも出ていたので、ご存じの方も居られると思います。
  はじめて美味しい酒だなーと 、思って飲始めた酒は千葉の蔵元の生酒で、これは当時ビックリ驚いて、天井に頭をぶつけてそれいらい、髪が薄くなった位旨かった。しかし直ぐ売切れて無くなり、蔵元に掛合いその年の暮れに1升瓶に10本、私だけに限定販売してもらい喜んで飲んでいたところ、白濁し始め味は腰が抜けたようになり情けない酒に成下がってしまいました。蔵元もそれいらい販売してくれず、幻で終っていましたが、ある時偶然に、この関矢氏と出会い酒の話をいろいろ伝授していただき、彼の店「関矢酒店」から吟醸酒を何点か購入して飲んだ所、千葉の酒の旨さと全然レベルが違うのを知り、カルチャーショックを覚えたのを今でもハッキリ覚えています。その吟醸酒は彼がコーディネートした吟醸酒だったのです。 私はその酒を一人で飲んでいるのが、たまらなくもったいなく思えて、友人知人にその話をすると、皆眉につばを付けるのです。そこで、それならみんなにも飲ませてあげようと思い、酒の宴が開かれたのです。当然みんなその時以来フアンになってしまい、毎月飲みたいと言うことになり、自然発生的に会が出来上りました。毎月1回ずつ集り休会も無しに10数年が経ちました。スイマセン話がそれたようで。
しかし、このカルチャーショックから私は吟醸酒に目覚め、沢山の会友に恵まれ、その会友もこの関矢氏に啓蒙されて、蔵元見学会に、屋形船に、酒造米の田植にといろいろ参加させていただき、今日の能書の言える私に育てていただいたのが、関矢健二氏である。本物を創り育て消費者の指向を受入れながら、啓蒙しつつ、良い吟醸酒を透浸させていった功績は計り知れないものがあります。私を含め我ら会友は関矢氏自ら売っておきながら、のんべいの会と言われるが、一番の弟子だと自負しています。吟醸酒と言えどもピンキリであるが、この関矢の酒は裏切らぎった事が無い。関矢氏の人格である。

 

 (8)淡麗酒について
 食べ物の味にも流行というか、好みの大きな流れがあって、この2〜30年で濃い味またはコッテリ味から薄味.サラッとした口当りの味に、味覚が変化していると私は思っています。
 例えば、ラーメンで見てもそれが直ぐ判ります。以前では札幌味噌ラーメンが主流で、並んで食べたものですが、今でも当時と同じように美味しいのですが、今では閑古鳥が鳴いています。ラーメンは確実にサラリ味の豚骨ラーメンや喜多方ラーメン、東京ラーメンに座をゆずり渡してしまいました。この味の違いは決してスープが薄いのではなく、それどころかしっかりとスープを取りながら、喉ごしが爽やかさなのです。ちなみに札幌にあるラーメン横町のラーメンを私も食べましたが、ここで美味しかったとの話は友人達から未だ聞いたことがないし、残念ながらまた行こうとは思いません。しかし函館空港の待合室ロビーにあるカウンター型式のラーメン屋の、醤油味のごく普通のラーメンであったが、スープもきっちり取ってあり、さらりとしていて美味しかった事を覚えています。この話を友人にしたところその彼も偶然同じ体験をしたと話していた。美味しい物は誰が食べても判る物だと、時間を超えて同じ体験をした彼と、つくずくうなずきあったものです。
 洋食(言い回しが古いが)でもしかり、フランス料理の下火傾向からイタリア料理の若々しくサラリとした味に変わっていった事でも判ります。
 ウイスキーも同じで、我々若いときはストレートかオンザロックで飲むものだと先輩に教えられ、またその様な飲み方で楽しんでいた。軟派なヤツが居てコークハイにしたり、ハイボールにしたりそれぞれ飲んでいたが、今の様に水割にするのには時間は掛らなかった。最近ではその水割も「ウイスキーが入っているの?」と言うほど薄く、氷水を飲んでいるのかウイスキーを飲んでいるのか判らないくらいになってしまった。 焼酎も同じでウーロン茶、レモンジュース、炭酸水いろいろなもので割るが、割ると言うよりその中に焼酎を申訳程度入れるだけである。焼酎の量が多いとクレームが出るという、のんべいには理解しがたい現象すら出てきている。
 ビールで考えると直ぐ判るように、人気のあるビールは、味そのものが大事なのは当然ながら、喉ごしの爽やかさが大切なことが判ります。 さらりと飲めて、後味がすっきりとして、含み香が素晴しいのです。

 そして日本酒。 酒の質は同じように素晴しいとして、味の甘口べたべたが辛口サラリに変化してきた。これは蔵元での糖類の混入量を減らしているに過ぎないのだが、ここでも大きな流れには逆らえないのです。普通酒でもそうであるように、吟醸酒でも同じで、濃厚で重いものや、過熟成タイプは流れの中では主流には成りきれず、味覚の主流は”淡麗”なのです。淡麗とは五味一体となってバランスが取れた中庸な味で、喉ごしが爽やかで後味・含み香まで優れているものを言います。中庸な味とは甘口でもなく、かといって辛口にも偏向していなく、濃厚すぎずまた軽々しくなく、華やかすぎず穏やかすぎないで、全てを持ちながら中央でバランスしている様を言います。 
 ここだけの話ですが、「吟醸酒を飲みに行ったら、どのように注文をすればいいですか?」と良く聞かれますが、こう答えます。「"淡麗"なお酒を下さい」と。キザですが、これ以外の言葉は今のところありません。
 なお、淡麗だけれど濃厚だとか、淡麗だけど芳醇だとか言う事があります。淡麗=薄口、サラリ、淡麗の反対に濃厚、芳醇ではありません。

 

 (9) ラベル明細の見方 

   項 目   説 明
a. 酒質・酒名・清酒 ごぞんじ銘柄名及び肩書(下表参照)。例;大吟醸「***」。大吟醸酒・吟醸酒・純米吟醸酒か本醸造等、及び"清酒"の表示
b. 原材料名 米、米麹、醸造アルコール(純米酒では米、米麹)。下表参照
c. 醸造者名 蔵元名。 クレームの時?いえいえ追加注文の時に必須
d. 醸造者住所 蔵元住所。電話番号。これも追加注文の時に必須
e. アルコール度数 17.0〜17.9%。これより前後1〜4%程の濃淡あり。
f. 製造日 製造日(何年に造られたか;1年以内のものを)通常はビン詰出荷日(一番飲み頃で美味しい出荷日又はその1〜2ヶ月前に瓶詰;なるべく出荷後短期間に購入を)、通常はこれを表示。
g. 内容量 1800,720,500各ミリリットル瓶の内容量。
h. 原料米 山田錦、五百万石等 使用酒造米名。(上記説明有)
i. 日本酒度 +1〜+*(辛口)、0、−1〜−*(甘口)。 糖分の多少量(説明有)
j. 酒質濃淡度 淡麗か、濃厚か、甘口辛口等の表示
k. 精米歩合 精米した%。下表参照(上記説明有)
l. 酸度 コハク酸、リンゴ酸、乳酸等の量。数字が多いほど酸が強くなる。
m. 杜氏氏名 醸造した杜氏名及び出身地。(上記説明有)
n. 備考 酒の特徴、コンセプト、歴史等の説明文。(蔵元の特徴が出る。)

  a から までは表示義務が課せられているものです。必ずどこかに表示しなければ成りません。 h.以降は自由で各蔵元の判断で表示したり無かったりします。 

 この他にも、「お酒は20歳を過ぎてから飲みましょう。」の表示・飲み方のアドバイスや酒質の視覚化や保存法など、各蔵元が独自の項目をもうけて消費者に内容の深い説明を行っています。

 (10)瓶詰めの日付について
 話9.にも書きましたが、吟醸酒は鮮度です。お酒は醸造されてから寝かされ、一番おいしくなった時に瓶詰されて出荷されます。しかし、現実には流通段階でのロスタイムがありますので、最上の時期の1〜2ヶ月前にそれを見越して瓶詰されることが多いようです。ですから、その時(賞味時期)を外すと味は下降線をたどり、最後は飲めなくなります。出荷の日付を見て時間の経った物は敬遠しましょう。酒質や保存陳列方法により一概に時間は言えませんが、最大経過して数カ月以内が妥当でしょう。2ヶ月以内なら文句有りません。
 通常製造日と表示されているものでも、瓶詰出荷日のことを指します。決して醸造されて絞られて、酒が誕生した日ではありません。

 

 (11)酒販店の見分け方について
 
これを書くのが一番難しいのです。なぜなら、いつも世話になっている酒屋さんを悪く言えないし、かといってこれから世話になるであろう酒屋さんもあるでしょうから、私も人の子まだ色気もありますので、ここはひとまず、割引いてお読み下さい。(^_^;)

 まず、良い店は日本酒、吟醸酒に精通していて、その解説が最低限出来ること。お客の要望を的確に聞き取れること。素人さんでもその説明で、的確な商品選びが出来ること。最新の正しい情報を提供できること。
 しかし、反対に結構このタイプの主人がが多いのですが、独りよがりで押しつけがましい事(客の私のことではない)。 無理に自分の主張をお客に押売りしたり、まだ飲んでいない味が判らないものに、さも判って居るような態度で反対の説明をしたり、店側はそうとは気付いていないが、地酒なら何でも良いような、または品揃えが偏向していたり、安い酒より高い酒が旨く 、大吟醸酒と付けば高くて当然、、という方針というか態度。みないけません。まだまだこの様な店が多いのです。我々客は店の意見とラベルだけで新しい酒を選ばなくては成らないのですから。
 ただ最近は、吟醸酒を扱うことの多い店ではインターネットの導入とか、新しい蔵元や銘柄の発掘、試飲の導入、消費者への啓蒙、酒質の向上への取組み、新酒の開発、と色々努力されています。そのようなアツーイ元気な酒店も増えました。頑張って下さいと応援したくなります。それと、お客の要望、クレーム、等を的確に蔵元えへフィールドバックしてくれたら、最高です。それと、ケースから取出して見ていても、嫌な顔をしないこと。 
 次にハードの面で、吟醸酒用の保冷ケースが完備していること。その中に保管されていること。西陽や直射日光が直接日本酒に当らないこと。店先に野積みされているなどとんでもないことです。
 お店とお客、これの出会いは、”一期一会” 成すべきしてなすです。イイ吟醸酒に出会うためには、イイ店との出会いを。それしか有りません。お店と充分なコミニケーションが取れれば、きっとあなただけのイイ情報を耳元に流してくれるはずです。


   ”それでは、あなたにあった最高の1本を、今宵一献。”

 

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 ◆次のページは見てのお楽しみ、ゆっくりご覧下さい。 木戸銭は出口で・・・、
いただきませんので。


 

2.<吟醸酒のタイプ別の話>

 

清酒(日本酒)の製法品質表示基準        

 清酒には「特定名称の清酒」と「普通酒」の2種類に大きく分類されます。

 

<特定名称の清酒の表示>                     国税庁「酒のしおり」より

吟醸酒、純米酒、本醸造酒の3種類を特定名称の清酒といい、原料、製造方法等の違いによってさらに8種類に細分類されます。それぞれ所定の要件に該当するものにその名称を表示することができます。

 特定名称  使用原料   精米歩合   香味等の要件
1吟醸酒 米、米こうじ  醸造アルコール  60%以下      吟醸造り        固有の香味、色沢が良好
2大吟醸酒 米、米こうじ  醸造アルコール  50%以下      吟醸造り        固有の香味、色沢が特に良好
3純米酒 米、米こうじ  70%以下 香味、色沢が良好
4純米大吟醸酒 米、米こうじ   50%以下      吟醸造り        固有の香味、色沢が特に良好
5純米吟醸酒 米、米こうじ   60%以下      吟醸造り        固有の香味、色沢が良好
6特別純米酒 米、米こうじ 60%以下又は特別な製造方法(要説明表示) 香味、色沢が特に良好
7本醸造酒 米、米こうじ  醸造アルコール   70%以下 香味、色沢が良好
8特別本醸造酒 米、米こうじ  醸造アルコール 60%以下又は特別な製造方法(要説明表示) 香味、色沢が特に良好

 

     ◆上記以外に普通酒と呼ばれるグループがあり、以下の2種類です。

 

    <普通酒  

@三増酒、 米、米こうじ、醸造アルコール(60%混入)、糖類、調味料 (別項説明有り) 
Aアルテン酒  米、米こうじ、醸造アルコール(40%混入)、         (別項説明有り)

 

 <今(平成9酒造年度)は大吟醸酒、吟醸酒11%。本醸造酒16%。普通酒73%。が製造販売されています。逆に言えば、普通酒が約7割以上飲まれていることです。>

 この”特定名称の清酒”の割合が年々増えています。良い傾向だと思います。
しかし統計をよく見ると大変なことが判ります。実数(=出荷量)で見ると、吟醸酒は微増、本醸造酒は微減、両者合わせて横這い。普通酒は年々減少傾向にあります。当然日本酒全体で見れば減少傾向にあります。平成5年で142万klが平成9年では117万klになっています。普通酒の落込みがひどいのです。たった5年位で18%も出荷量を減らしています。上質酒が頑張っているのが良く判ります。飲手(消費者)はやはり賢いのです。 

 

 

 製造上の特徴から分ける方法

原酒。
 
充分発酵させたものでは、アルコール度数が20度近くにもなり、通常では加水(割水)してアルコール度数を調整して製品としますが、そのまま手を加えず瓶詰したものが原酒です。
味は原材料・造りによって決り、原酒だから旨いとはかぎらない。誤解の無いように。

生酒。
 もろみを絞ってから、一切加熱処理をしない酒。
味は絞ったままの自然さがあり、コク、まろやかさがあり、香りも充分堪能できるものが多い。麹やその他の菌が生きているので、変質しやすい。

生貯蔵酒。
 もろみを絞ってから、一切加熱処理をしないで貯蔵して、瓶詰出荷時に1回加熱処理をする酒。
味は生酒と火入れ酒との中間的な風合をもつ。

生詰め酒
 
もろみを絞った後、加熱処理(火入れ)をし貯蔵して、熟成後瓶詰時に、火入れ処理をしないで、生(?)のまま出荷されるもの。
味は生酒と火入れ酒との中間的な風合をもつ。

火入れ酒。
  
もろみを絞った後、加熱処理をし貯蔵して、ここから後は生貯蔵酒と同じで、瓶詰出荷時に再度加熱処理をする酒。計2度の加熱処理をしています。
味は生酒から比べると、コク、まろやかさが平坦になり、香りも弱くなる傾向がある。しかし味、品質の劣化、腐敗が防げるようになり、これにより、日本酒の安定供給が出来るようになった。

新酒と熟成酒
 冬から春にかけてその年一番に造られた酒を新酒と言い、ワイン風に表現すれば”ヌーボー”です。
また”冷やおろし”と言う言葉があり、これは夏を蔵元の涼しい蔵の中で過ごし、涼しくなってきた頃、出荷される酒をこう呼びます。そして熟成された味になって、香味が整い味も丸くなって酒質が良くなってくることを”秋あがり”または”秋晴する”といいます。この頃から冬にかけては熟成酒の出番です。
 新酒の味は軽快で若く落着きもありませんが香りは華やかです。イメージとすれば人間の若者と良く似ています。
 江戸っ子(だけではないでしょうが)は初物好きで、なかでも初鰹が有名ですが、これとて戻り鰹の脂の乗ったコクのある濃厚な味にはかないませんし、他の農作物でも初物は珍重されますが、ご存じのように味・香りは頑張っても”旬の物”にはかないません。
 吟醸酒にもこの傾向があります。しかし、いくら熟成が必要と言っても、貯蔵タンクに1年以上寝かせた物はチョットご遠慮したくなります。酒は生物です。”旬”をとっくに過ぎた過熟成の古酒はご勘弁下さい。


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