あるいは不幸の軍事博物館余話
私が、先日まで北京に流刑となっていたことは、読者諸兄の既に知るところであるが、佐渡島、シベリアを例に引くまでもなく、流刑には労働と云うものが付き物である。
今回の流刑においては、一つには坦克博物館に於ける九四式軽装甲車の撮影、もう一つは軍事博物館に於ける九五式装甲軌道車の撮影と云う、過酷なノルマがあった。
流刑地の労働と云うものは、やはり過酷な労働環境と云うものが「お約束」であって、九四式はガラスケースの中に鎮座しており、充分な撮影機材(偏光フィルタ)の供給を受けることもなく、撮影を強いられ、旅券・航空券・現金を入れた手帳を紛失すると云う生命の危機を味わうこととなった。
一方、軍事博物館での奉仕活動では、博物館リニューアルの余波をまともに受けて、くだんの車輌を展示してある兵器館中庭が、立入禁止区域となっていたのである!
しかし、ノルマと云うやつは「無理を通して道理が引っ込む」のが常である。九四式の方は、おいおい我が稚拙な撮影技術を白日の下に晒し、世人に物笑いのタネを提供するのであるが、九五式に関しては、今回撮影はおろか、見る事さえかなわなかったので、2000年1月に撮影したもので代替する次第である。
見ての通り、「こう云うモノがありまっせ」と云うレベルのものでしか無いが、現地でどう云う状態で保存されているかを伺う事は出来うると思っている。撮影されたモノに対してご不満のある方は、現地に行かれて(事前に見られるかどうかを確認しておくことをお勧めする)気の済むまで撮影されんことを切に希望する次第である。
幸いにして中国は日本に比して物価が安いし、軍事博物館は地下鉄駅のすぐ近くである(笑)。
九五式装甲軌道車。24ミリレンズのため、車幅が広く写っている。
反対側からの撮影。車体前部の連結器は失われている。車体のクラックに注意。
履帯部分のアップ。かなり後ピンである。広角レンズを使用したことによる車体の歪みと、低感度フィルムを使用したためのピントの甘さ、ストロボの光量不足が厳然と存在するので、なんとか再撮影したかった車輌の一つであった。
註:文中、まるで私がいやいや北京で、写真撮影をやっているかのような印象を持たれた方がおられるかも知れぬが、あくまでもこう云う文章表現を使って遊んでいるだけであり、当人は好きこのんでやっている事は云うまでもない。
軍事博物館で、所蔵物品展示のリニューアルを行っている(兵器の再塗装等)ことは事実であり、したがって九五式装甲軌道車が、再塗装の上、あらためて公開される可能性はある、と私は信じている。また、旧軍銃器・火砲に関しては色々と公開されているので、一度遊びに行く価値は、依然として存在するとも思っている。軍事/模型マスコミの入念な取材記事を期待したいものである。