ミステリは読まないが35000おまけ
夏本番ともなると、梅雨の存在などは文字通り雲散霧消してしまうのだが、日本列島が今の位置に留まり、かつ気象が急速に変化しない限り、また梅雨はやってくる…。
と、例によって強引な導入から、一気に本編に入っていくのであった…。
国民学校展望
新案 雨傘体操 千葉県 茂原国民学校
梅雨時は国民学校の体練科のなやみの種である。
仕方なしに、狭い屋内体操場などで、悪い埃を吸いながら体操しているが、子供達の健康にこんなに悪いことはない。ともすると、体操をやめて、他の授業をやる。だから梅雨時などには、兎角、運動不足から、子供達の健康は損なわれる。
なにも梅雨にかぎらない。雨が降ったら傘をさしても体操を、と鹿間校長は”雨傘体操”を創案したのである。
”冬の間は充分な効果は得られないだろうと思うのですがマア今頃の気候には大いに利用してよかろうと思っているんです。雨が降って体操が出来なかったら、傘を持ってやろう…ただこれだけです。別に発表されるほどのこともありませんよ”校長は至極気軽なものだ。
その日はカンカンたる炎天。校長自ら校庭に出馬して雨の日に備えて、一生懸命「雨傘体操」の練習にはげんでいた。
”まだ基本体操程度ですが、これから、いろいろと工夫して、これを活用しましょう”と語る校長は、雨傘さして友達を背負い、競争に打興じる子供達の笑顔に、つい引込まれて苦笑をもらすのであった。
(アサヒグラフ昭和16年7月30日号)
屋内体操場が子供の健康に悪いのなら、MBAの選手はみんな喘息持ちになるに違いない。それはともかく、この「雨傘体操」であるが、<雨が降ったら傘をさしても体操を>と記事にはあるが、どう贔屓目に見ても、<傘を使った体操を考案したかった>としか思えないシロモノである。
これが雨傘体操だッ!と力んで書くまでも無いわいな。本当に雨の屋外でコンな事をやっているのか?埃を吸って喘息になるのと、雨に濡れて肺炎になるのと、どう教育的効果に違いがあると云うのだろうか…。
「体操」と云うより「曲芸」に近いものを感じるのは私だけではあるまい。裸足で平均台の上を分福茶釜よろしく傘を持って歩き回るとは、おそるべし千葉県。雨が降っていたら滑るんじゃあないだろうか…。
これは男子雨傘体操の図である。体格別に傘の大きさを変えているのだろうか、だとすれば、恐るべき科学的体操指導と云わねばならない。えっ?単に個々人の持ち物だからバラツキがあって当たり前だって?
今回の鑑賞のポイントは、何と云っても、三枚の写真における男女比に尽きる。坊主頭の雨傘体操を撮るよりは、女の子を撮った方が紙面も華やかになると云うものである。
何か戦中生活の断面と云うよりは、NHKおはよう日本の「とれたてマイビデオ」の映像にケチを付ける年寄りのようなネタになってしまった。もしかすると、今なお茂原市の小学校では「雨傘体操」が行われているのかもしれない…。