たまには吠えてみる

あるいは芸の無い36000おまけ


 一般世間では「どこから見ても地道な勤め人」にしか見えない私であるが、人並みに虚栄心や功名心くらいはある(そもそもそう云うモノが無くて、なんで「兵器生活」などと云うページを維持拡充しているものか!)。

 功名心に駆られ、北京まで出かけて錆びだらけの戦車の(下手糞な←ここでカッコを使っている所に、写真道楽者としての虚栄心を読みとってもらいたいものである)写真まで撮ってきた事は、読者諸氏もご存じでがあろう。
 本人としては、とっとと本職が現地に出向き、商品としての素晴らしい資料写真を発表してもらいたいもんだ、とずっと思っているのだが、なかなか発表されない。
 まあ一個人が自腹を切り、道楽でネタを発表しているのであれば、突っ込みの足りない点や、多少の誤りなどはウェヴの掲示板あたりで叩かれる程度で済むのであろうが(ただし叩く以上は、何故叩かなければならないのかを明確にしておくべきである)商業出版社や研究者が発表する以上、憶測や、誤りに対して気を遣うあまりに、あるいは商売上の理由(売れるかどうかと云う毎度おなじみの問題)で、肝心の研究・収集成果が世に出ないと云うのも仕方の無い事ではある。

 しかし、読者=消費者=客である私としては、研究部分はさておき、自分の興味のあるモノの写真類が世に出ぬ事を憂い悲しむ心の方が、より強いのである。


 人は、惚れた相手を知ろうと思い、あるいはその代換品として、様々な物体を手に入れようとするものだと私は思っている。もちろん功名心や殖財心から様々な物資を求める事もあるが、兵器愛好家が兵器や兵装の残骸や美品をコレクションしたり、写真集や模型を手にする動機と云うのは、やはりそう云うところから出ているものだと思う。少なくとも私はそうである(そうすると、「あんたは大日本帝国が好きなのか?」と訊いてくる人が出そうなので、あらかじめ答えてしまおう。「そうだよ、だってオモシロイんだもん」)。

 <アイドル写真集>と称される商業出版物が、大々的に流通している事を知らない、年頃の日本国民はおるまい。
 要は世間一般から、その美と愛嬌その他を商業的に使用する事を認められた女の子や男の子の姿が、キャノンやニコンの300ミリf2.8レンズその他で撮影され、それをデザイナーがああでもない、こうでも無いとレイアウトして、印刷屋が精魂こめて紙にして、製本屋が本と云う物体にして、さらに取次の手を経て振り分けられ、運送屋がトラックその他で、書店の店先にドンと置いた箱から、書店店員が取り出し陳列し、<○○ちゃん可愛い〜>などと折り目をつけつつ立ち読みし、平積みの上から3番目をあなたがレジに持っていこうとしているそれの事である。(本屋によっては、ビニールパックされ、内容が確認出来ないようになっているところもあるようだが)
 賢明なる読者諸氏よ!それらのページをめくって見よ、その写真一つ一つに<何時・何処で撮影された>などと書かれているか?<彼女はどこそこの洋服を着用している>などと書かれているか?撮影当時の彼等の体重が記されているか?せいぜいサイパンだ、グアムだ硫黄島だとかつての<○○基地にて(海軍省貸下)>と同等の情報が記載されている程度ではないのだろうか。
 しかし、世間の善良な市民は<キャプションが出鱈目だ>だの、<写真は良いが、資料的価値は低い>などと云う贅沢な事は云わず、嬉々として金を払っているのではないのか??


 ここで心ある読者諸賢はお気づきになるだろう。趣味の兵器本が、実物の解説がほとんど無くても、現物兵器の写真をふんだんに掲載するだけでも商売になりそうな事を…。そして我が身を振り替えれば、自衛隊の兵器が、旧軍の兵器が我が写真機を通り抜け、印画紙に定着した交通費と現像代の結晶が、趣味の兵器本にあるような詳細な説明書きも付けられないまま、部屋の片隅に積み上げられていると云うこの事実!
 つまり、私も含め、一般の兵器ファンの<まず>求めるものは、精緻な兵器写真そのものに他ならないのである。そして写真を補足する図版である。
 その段階があって、その兵器が出現するに至った背景や開発経緯、使用された履歴が求められるのである。そして、その仕事は商業出版と個人ウェヴが競合しながら行われるべきものなのである。(ごくまれに過去の兵器ファンの言動が知りたくなって古本に手を出し、エライ事になっている馬鹿者も存在するようだが、それは他人事として無視してもらいたい)


 と云うわけで、私としては<旧軍兵器アイドル写真集>の発売を心ある出版人士に切望する次第なのである。そう云う本があれば、わざわざ図書館に行かなくても、古本屋で金払わないでいいじゃない!と云う総督府の事情は別としてもである。
 蛇足ながら一言、図版所有者あるいは提供者には充分な謝礼をはずみ、そして読者には安価で販売する事を重ねて希望する次第である。書籍だとコスト高になると云うのなら、CDかDVDにでもしてしまいなさい!

 と、トンデモなく長い前フリが終わったところで、本来のおまけネタが出てくるのである。旧軍兵器の現役時代の写真は世間に存在する数が限られているのだから、本当になんとかならないものなのでしょうか、と前段で強く出たくせに、ここでは下手に出ておくのである…。そうそう、出すなら私にお金のある時にして下さいね…。

 今回は行きかがり上、気になってしょうがない九四式軽装甲車写真を掲載する。すでにどこかで紹介されたモノもあるかと思うが、それを気にし出すとネタが作れなくなるので御容赦願いたい。

 「アサヒグラフ」昭和16年7月30日号表紙。上で書いた事と矛盾するようであるが、出典を極力明確にするのが総督府の方針なので<ホントニホントニゴクロウサン>とでも思っていただければ良い。一人の読者としては、出典など目も向けないが、一研究者としては、これが無いと股ゴムのゆるんだブリーフを穿いているように落ち着かないのである。

 見ての通りエンコした車輌の引き上げである。軽と云っても引き上げるには人手は多い方が良い、と云う見本。ディオラマの参考にでも。後でコッテリ叱られるんだろうなあ…。
 「国際写真新聞」昭和13年6月20日号より

 「国際写真新聞」昭和13年6月20日より。掲載の記事での被写体は板垣中将(中央でなんとなくカメラを気にしているヒゲの人)なのだが、軽装甲車の内部が写っているのからここに掲載しているに決まっておる!かつこの写真欲しさにこの本を買ってしまったのだから、他で採り上げられていても、こいつをはずすわけにはいかないのであった(笑)。
 本来ならば<九四式軽装甲車写真集!>とまとめてしまいたいのだが、集と云う程ネタが無い事と、なによりメンド臭いので、ある程度溜まったらネタとして放出してやる事にした。何年かかるのか解ったものではないので、明晰なる読者諸兄は、どこぞの出版社がこいつの写真集をドーンと出してくれる日を、ぢっと待っていた方が現実的と云うものだ。

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