映画雑誌の広告で55万おまけ
戦時中の日本で作られたアニメーションと云えば、例の「海の神兵」(『桃太郎 海の神兵』)、「くもとちゅうりっぷ」の二作が良く知られているが、それ以外に何も作られていなかったわけではない。しかし、そう云う知識を得た本の表題すら忘れて久しくなっていても、日常生活に何らの支障はなく、ただ、どんな絵だったのだろう…と云う思いだけが沈殿し、今に至る。
古本屋に昭和18年の『映画旬報』が何冊か出ているのを見つける。
一冊の表紙が「加藤隼戦闘隊」のスナップで、手に取ればビニール袋に入っていても、封はされていない。目を通してみると、文化映画「爆風と弾片」の広告が載っており、これは使えると、棚からめぼしいモノを何冊か買ってくる。
その中にあったのが、これだ。マンガ映画決戦大会
マンガ映画決戦大会/大陸新戦場
銃後の感激と慰安を兼ねた映画界七月のおくりもの
紙面の下半分は、「文部省推薦」の記録映画、「大陸新戦場―浙カン作戦の記録―」である。
昭和12年7月から、延々6年も支那大陸に多大な兵力を投入し続け、今更「新戦場」と云われて(米国とやりあってる場所こそ、『新戦場』だろうに)、銃後国民が「感激」―今風に云えば「感動」―すると本気で思っていたのだろうか?
戦時中の映画広告を、ムック掲載の換金記事に使った事がある。その時は新聞(縮刷版)を使っていたので、戦時下であっても、映画雑誌の中には見開き・色刷りの広告が存在している事に、素朴に感動する。
と云うわけで、今回は、広告の紹介を越えるものでは無い。
次のページもマンガ映画決戦大会の広告だ。「笑慰団」(しょういだん)の当て字が楽しいが、その後、ホンモノの焼夷弾で殆どの都市が焼き払われたことを思うと、のんきに喜んでもいられない。
マンガ決戦大会
銃後の笑慰団来る!
プログラムは「フクチャンの増産部隊」「お猿三吉 闘う潜水艦」「お山の防空陣」「ナカヨシ行進曲」「マー坊の落下傘部隊」「仔馬」(文化映画)」の6本だ。
どんな内容なのか、観たことの無い作品を語る、器用なマネは出来ないので、面白そうなタイトルと絵を引き、そこから読み取れる所だけに基づく所感を記す。一介の潜水艦乗りが、どうやればルーズベルト大統領に刀を向けることが出来るのか? なんて事は考えなくてよい映画なのだろう。
お猿三吉闘う潜水艦
日本では、幽霊の親玉のように描かれる、敵国最高指導者だが、さすがに米国でこんな描き方はしないだろう。日米同時期に描かれた、それぞれの姿を見比べたいものである。
ヘルメットのマークは海軍の錨のようなので、「海の神兵」同様、海軍の落下傘部隊が出てくるのだろう。
マー坊の落下傘部隊
マー坊の後ろに見える黒い筒を良く見ると、銃身が突き出て発砲しているのがわかる。これはまさしく「空中トーチカ」ではないか! これは観たい。
(おまけのおまけ)
ありません。