「戦車双六」で70万8千おまけ
『ガールズ&パンツァー 劇場版』を観る。
総督府にはテレビ無く、DVDを積むような空間は紙屑がすでに占拠しているので、世間様で話題になっているのを横目にスネて無視していたのである(それでも廣済堂出版『ガルパンの秘密』はコッソリ読んでいるのだ…)。
威力偵察気分で観てみると「ファン向けエキシビジョン映画」であった。しかし、静止した写真にプラモデルでカタチだけはおなじみ―とは云えぬモノもあるが―の戦車がゴロゴロと走り回っている姿を見ていると、エキシビジョン大いに結構! と木戸銭以上に楽しめたのである。
主筆同様気にはなっているが今更…と二の足を踏んでいるヒトも、戦車好きが前提ながら機会があったらぜひドーゾ、くらいの事は書いておく。
と云うわけで、今回ご紹介するのは国防科学雑誌『機械化』附録の「戦車双六」だ。
古書店目録に載っていたモノを大枚叩いて買ったは良いが、デカイので画像取り込みが億劫になりお蔵入りしていたもの。今を逃したら二度と日の目を見せる機会は無いゾとご紹介する次第。
戦車双六
ワク線の一部を取り込み損なっているが、これが全体の姿である。6分割してスキャナ読み込みしているので、少しばかり傾いていたりズレている所もあります(笑)。
右下の「出動」に始まり、中央の「戦捷」が上がりである。
こう云うモノなので解説のつけようがない。
原寸画像を掲載し各自ダウンロードして正月遊んで下さい(コマは1/144戦車がピッタリだ)、以上! と云うのが王道(世間様のウケも良いと思う)なのだが、ウェヴに載せられる容量には限りがあるから、マス目をバラして載せる。
ヒマな方は適時印刷・切り貼りして自分だけの「戦車双六」を楽しんでいただきたい。
出動
進軍
警戒
前進
休み
障碍
故障
基地
水中進軍
命令・湿地難行
手入・突入
紆余曲折・艱難辛苦(『故障』と『手入』があるのが良い)を乗り越えて、
「戦捷」(上がり)に至る。
新春の「日の出」、「日の丸」を示すめでたい赤丸の中に、新鋭九七式中戦車と「機甲団の歌」が載せられている。そのまんま年賀状の図版に使えます。
軍歌 機甲団の歌
陸軍機甲本部 陸軍少将 山田國太郎 作詞
陸軍戸山学校軍楽隊 陸軍大尉 大沼哲 作曲
一
八紘一宇の 礎(いしずえ)を
世界にたつる 機甲団
強く大地を 踏みしめて
並ぶ威容は 鉄壁ぞ
妖雲消えて 日の丸の
旗(はた)風清く 天高し
二
山川森野(さんせんしんや)を 踏み破る
電光石火 機甲団
敵の背後に 殺到し
奇襲急襲 忽ちに
殲滅なって 日の丸の
旗風清く 天高し
三
十字の火猛や 弾丸(たま)の雨
二十重(はたえ)の陣地 貫きて
猛る戦車は これ鬼神
驀進蹂躙 くまもなく
敵陣ついえ 日の丸の
旗風清く 天高し
四
屍山血河(しざんけつが)の 激戦に
あらわす勇士 機甲団
勝利の扉を 打開き
轟(とどろ)きわたる 万歳の
声朗らかに 日の丸の
旗風清く 天高し
あがった人は「機甲団の歌 一節朗読」。これは罰ゲームではない。
盤面には4つの標語と、戦車豆ちしき(仮名にひらかないと感じが出ない)が掲載されている。
機械化へ民一億の赤襷(出動)
見ても聞いても語るな軍機(警戒)
隙ある防諜スパイが傍聴(障碍)
国防へ先ず機械化の勢揃い(湿地)
凡庸な標語の中、「隙ある防諜…」だけムダに光る。「豆ちしき」は以下の通り。
三十五度から四十五度位の斜面なら平気で昇ります
軽戦車は二米、重戦車は五米位の壕は乗り越えます
歩兵が進軍出来る程度の湿地ならば戦車も進軍出来ます
こちらも知って自慢できるような出来ないような、微妙な「豆ちしき」である。
「国防科学雑誌」附録にふさわしい「戦車双六」なのだが、帝国陸軍の戦車が今日とかく色々云われるのと同様、この双六にも問題点がいくつか存在する。
これは、「出動」のマス目にある、サイコロの出た目で進むところの指示なのだが、「4」で進む先の「食事」のマスは盤面のどこを見ても無い。盤面での4つめは「休み」だ。デザイナーへの指示がうまく行ってないらしい。
「障碍」の上にある指示も、この通りだ。
同じ目で行き先が違うのはどう云うことだと驚くが、どうも上半分が「基地」、下が「障碍」の分になる。ここにも「食事」が出て来ており、しかも存在しない「食事の標語音読」までやれとある(読めません)!
ちなみに「命令(出動へ戻る)」とあるのは、その賽の目を出したら最初は「出動」(ふりだし)に戻り、以後は「命令」に移動すると云う指示らしい。
しかし、この双六最大の問題は、あがりの一つ前「突入」の先である。
あがりの「戦捷」に進める目がどこにも無い。
「1」を出せばそのまま上がりになるはずが、また「突入」に戻されてしまうのだ。これはヒドイ。マァ世間一般の帝国陸軍戦車評に照らしてみれば、それも仕方ないよね…と納得出来てしまえるのがさらにヒドイところだ。
機甲団の面目丸つぶれである。担当編集者でなくてホントに良かったと心底思う。