温新知故

『新しい時代語の字引』で78万おまけ


 新しい事を知るとうれしい。違った見方に気付くと楽しい。ふる〜い昔の新語辞典は、両方あるから面白い。

 『新しい時代語の字引』(実業之日本社出版部編、昭和3年)を読む。


『新しい時代語の字引』(左が箱、右が本体)

 序にいわく

 言葉は時代の反映である。時代の刺激・要求に従って、古い言葉が変形復活したり或は新規案出される。(略)新しい時代の言葉の発展・流行は驚くべき現象であって、新聞・雑誌に現れるところの、謂(いわ)ゆる現代語の往来たるや、実に頻繁多岐を極めている。

 その中から、「新時代の活きた社会の標準的常識語を、汎(ひろ)い範囲に渉り吟味選出」してまとめたのが、この本であり、そこから主筆が面白いと感じた―タメになるとは一言も申しません―項目を羅列するのが、今回の趣向になる。言い替えると「青い字ばかりでごめんね」。
 例によってタテのものをヨコにして、かな遣いをチト改め、ルビはカッコ書きに改め、読みやすさを考慮して改行や句読点を足したりしています。御利用にあたってはその旨御諒承願い上げます。

 まずは昭和初期らしいモノから…

モダーン・ガール
 英語のModern girlで、現代女性・近代婦人・当世女・新しい女・新時代の女学生などの意味がある(モダーンと発音するのが正しいが、訛って「モダン」ともいうから以下「モダン」と記す)。
 震災後、何ビルの女事務員中に『ジャンダークのお何』と称する不心得の若い女性を出して以来、流行の髪形・けばけばしい服装・濃厚な脂粉の装いをし、言語・行状が従来の淑やかさの性情を欠く者を総称して、世間ではモダン・ガールと称え、多く嘲笑的の語として用いられる傾向を生じた。
 殊に、新聞に現れる当て字新語を見ると、毛断ガール(断髪)、盲断ガール(何も分からぬ癖に何事も一人ぎめ)、無断ガール(家人に無断で勝手に出歩く)、モウ旦那ガアル(情夫のある事)、毛断蛙(断髪でガヤガヤした事が好き)、弗旦(ドルだん)ガール(金のありそうな男を探す)等々―そのあまりに多いのに驚かされる。


 このモダン・ガールの対語として現れたのが「モダン・ボーイ」(Modern boy)であって、現代型青年とも称すべきか。マドロスパイプ、水兵型(セイラーがた)ズボン、ロイド眼鏡などの身の回りから始まって、いわゆる当世のアメリカ式ハイカラの軽調さを罵ったのである。

 然しながら、一面に於ては、そうした事実もあろうが、他面に於ては、洗練された服装・住居・減築・家具・芸術・娯楽・装飾・化粧・美容等…の進歩そこに、いわゆるモダン(近代文化の義に解す)の反映がうかがわれるわけである。またモダン・ガールなるものも、ヤンキー張りの、軽調な物好き婦人ばかりを指すのではなく、ガンジーに代わって祖国のために警鐘を鳴らす印度女流詩人ナイヅーを初めとし、日本最初の世界的女性、人見絹枝嬢の如き者こそ、真のモダン・ガールとして、世の偏見を打ち破る活きた問題を、我等の前に投げ出すものではなかろうか。


 いわゆる「モガ」。ついでに「モボ」にも言及している。「兵器生活」読者諸氏には説明不要だろうが、やっぱりこれを載せないと昭和ヒト桁感が出ない。
 「ジャンダークのお何」は、正しくは「ジャンダークのおきみ」。昼は丸ビル勤めの事務員で、夜は…と云う不良娘である。女流詩人ナイヅーはインド国民会議の政治家サロジニ・ナイドゥ。「ローカル英雄伝」(http://matsumat.web.fc2.com/novel_007.htm)に小伝がある(http://matsumat.web.fc2.com/hero21/page01.html)。人見絹枝は日本初の女子五輪メダリストとして有名。
 「嘲笑的の語」とはあるが、今日そのニュアンスは失われ、単なる洋装・断髪の女性、あるいは職業婦人程度の意に捉えられている。
 この項に出て来る「モダン・ガール」の様々な当て字も、昭和史読み物で目にすることが多い。

 参考までに「ハイカラ」、「ヤンキー」も紹介しておく。

ハイカラ
 英語のHigh collarから転訛した言葉だ。明治三十四五年頃の造語で、当時『東京毎日』紙上に、「洋行帰りの気障な奴は学問を覚えて帰るよりは、ネキタイの付け方や、ハイ・カラーの用い方を覚えて来ただけで、彼等はホントにネキタイやハイ・カラーの化け物だ」と真っ向から罵倒したのが、此の語の起源だという。高いカラーをつけることは、当時随分流行を極めた。

 さてハイカラーの片仮名書きに「灰殻」の文字をあてたのは『東京日日』が始めたのだという。なるほど「灰殻」は文字からして吹けば飛びそうな感じを与える。ハイ・カラーの語は流行後程なくハイカラと詰めて唱えられ、何でも、目先の変わった、しゃれたものは、すべて此の語を以て片づけられる奇風を生じた。

 役立たずの洋行帰りを罵倒する言葉が、しゃれたモノ全般を指すものに変容したと云う(真贋は請け負わない)。

ヤンキー
 英語のYankeeで、原意は、俄分限、俄成金。米人に対するあだ名。一にも金、二にも金、黄金万能の、米人中の一部の教養のない人達を諷した言葉。


 ニューヨークのプロ野球チームの選手が揃って黄金万能・無教養と云うわけではないだろう。米国人自身はこの呼称をドー感じているのやら。現代日本俗語の「ヤンキー」とは違う言葉である。

 言葉の「正しい意味」は、図書館でまっとうな辞書を引けば解るし、それを「兵器生活」主筆に求める読者はおるまい。自分の認識とちょっとズレてる感じを楽しんでいただくのが本稿の主旨である。

 文化史方面からも紹介しておこう。このあたりは主筆の趣味です。

円本
 一円本、一円均一の叢書の意味。昭和二年春、日本文学全集に依って火蓋を切った一冊一円の叢書の刊行に依って、我が国希有の出版戦国時代を出現した。相次ぐ一円本の続出は此処に「円本洪水」の観を呈した。これを「昭和円本戦役」と評する語は、たしかにその間の消息を伝えている。費やす所の軍費一億何千万円、参加する叢書・全集類全国を通じて数百種(中には三円・五円定価のもある)これが為めに召集せられた原稿執筆者何千なるを知らず、実に壮観を極めた。昭和三年春に於て、ともかくも、まず平時に復した形である。


 小説家が「儲かる」職業となった出来事を、おもしろおかしく書いてある。原稿執筆者の何割かは、昔発表したものが全集・叢書に収録されただけだから、検印を押す手間がかかったくらいなものだ。「戦役」と云う言葉、もはや「ルウム戦役」など歴史上の出来事ぐらいにしか使わない。

つんどく
 全集に次ぐ全集を以てする当今、読者は読むよりも配本されることに追われ、読まずに、そのまま積んでおく。それをしゃれて言った語。


 「円本」なければ「積読」も無かったと云うことか。古本道楽を始めた頃は、「円本」を並べてみたいなんて思ったりもしたが、手ェ出さなくて良かったと今では思っている。

探偵趣味
 猟奇趣味というのと同じだ。奇を猟(あさ)り異を探す趣味で、探偵小説的趣味というほどの意味。
 明治時代に紹介された探偵小説・探検小説・冒険小説と称する類は、徒らに、怪奇・冒険・異変・神秘・犯罪などそれ自身の面白さだけを高調する場面が多い。従って空想的・誇大妄想的 単に痛快一点張りの筋書が多かった。―例えば筏に乗った怪人が暗夜東京湾を脱出した。それを日本の軍人が軽気球で追跡する―式のものが大部分を占めた。処が、大正に入ってから全く様式を一変し、怪奇神秘の本体を、最も痛快に切り開いてゆく科学の力に依る理知の鋭さ、その点に興味の中心を持ってゆく新しい描写が行われるようになった。


 川崎ゆきお「猟奇王」シリーズの「猟奇」の使い方がまさにそれだ。説明の語り口は「SF」にも通じる気がする。
 しかし「筏に乗った怪人」って、東京湾要塞司令部は何をやっているんだ!
 昭和初期なら左翼思想、と期待される読者もおられるだろうが、引き写しても主筆には面白味が感じられぬから、こんなあたりをご紹介。

庶民
 広い意味では「一般人民」のこと。財政・経済上では、「銀行から金融上の便宜を得ることの出来ない階級」と解して居る。震災後金融問題が喧しいので、庶民の語は盛んに新聞紙上に現れる。


 「庶民金融」なる言葉の背景はこれか。

民衆
 一般人民の集団という意味。但し、これには二種類の意味がある。いわゆる大衆(一般に世間の老若男女)を指す場合と、一揆に組する暴民を指す場合とある。昔の新聞は、暴民又は暴徒の文字を平気で使っていたが、愛国の赤誠ほとばしって乱暴を働く人達の如きは、酌量の余地があるので、暴徒呼ばわりは酷にすぎるというので、大正二年『大阪朝日』が全国新聞に先立って民衆の語を用いた。


 「暴徒呼ばわりは酷にすぎる」、実に味わい深い「言い替え」ではありませんか。
 食べ物をいくつか挙げる。晩の食卓にスグ上げられる、説明不要なモノが、委曲をつくして記述されているのを読むのは愉快だ。

カツレツ
 英語のCutlet 俗に略して「カツ」というが、これは下等語に属する。紳士淑女の口にすべき言葉ではない。英語の発音はカツレット。肉片に鶏卵(たまご)をつけてパン粉でまぶし、ラード又はヘット或はバターで揚げたもの。カツレツには数種あるが、明治三十年前後、東京にビーヤ・ホールが出来て、いわゆるお手軽一品洋食をひろめて以来、豚肉(ポーク)カツレツが有名になり、カツレツとさえ言えば、「(とん)カツ」の卑俗語を連想するまでに此の語は知れ渡った。


ビーフステーキ
 英語のBeef-steakで、西洋料理の厚焼きの牛肉。日本流ではビフテキまたはビーステーキなどと訛って称える。略してテキと呼ぶのは下等俗語で紳士淑女の口にすべき語ではない。ビーフ・ステーキに用いる肉はロースである。


 「紳士淑女の口にする言葉ではない」が良い。トンカツが今も卑俗語のままだったら、何と呼ばれているのやら。

スープ
 英語のSoupで肉汁のこと。西洋料理の吸物。スープは晩餐のものとされている。
 有名な某ホテルに宿った相当の身分の人が朝食にスープを註文したら、給仕が「只今スープはございません」と答えた。乃(そこ)で「こんな大きなホテルでスープがないとは変な話だ」と厭味を言って、却って笑われたという実話がある。またスープは食欲催進・消化液分泌・疲労恢復を促す効能があるだけで、滋養分は殆どない。


 「西洋料理の吸物」が泣かせる。朝にはスープを出さぬが作法なら、「朝ごはん、ちゃんと飲んでる?」と云ってた、昔のTV−CMの立場が無い。効能を並べ立てて「滋養分は殆どない」はヒド過ぎる。

ウィスキー
 英語のWhisky これを「ヰスキー」というのは訛った下等語である。ウィスキーは米国読み。英人は必ずWの音を強く響かせてホイスキーと称える。大麦から作った酒で、強烈・芳醇、飲酒家の好む所。
 ホイスキーを客に出す時、欧州流は冷水入りのコップを添える。ホイスキーを冷水に混ぜて飲むためで、強い酒を生のままで飲むのは下等だと思っている。米国流は生のまま飲んで、あとで、何か水物を飲む習わしがある。要するに強烈な酒を飲み放しにすると、胃癌に罹り易いというが、相当の理由があるらしい。


 この項を書いた人、ウィスキーを呑んだことが無いんぢゃあなかろうか。
 余談だが、この辞書、ウィスキーで項を建てておりながら、他では「ホイスキー」と表記している。食物の項になると、「下等」だ、「紳士淑女の口にすべき語ではない」など、書き手の人格が立ち上がってきて、読んでいて楽しい。
 最後は「紳士淑女が口にすべきでない」項目で締めたい。

フィッシュ・スキン
 英語のFish-skinで、学名はコンドーム。日本ではルーデ・サック(語源不詳)と称えて、明治三十年頃から知られている(輸入当時「小夜衣(さよごろも)」の訳語を使った時代もある)。十五世紀以後仏国から出たもので、フレンチ・レターともいう。これは包装が仏国の郵便の如くに象ってあるので、この称がある。花柳病予防・受胎制限の器具として、段々進歩した品が現れたが、最近では魚の膀胱を利用した精巧な品が出来た。スキンとは薄皮の意。

 名前くらいは見てはいる。藤田昌雄『陸軍と性病』(えにし書房)の「附章 コンドームの歴史」では、

 本邦では「コンドーム」を「サック」・「衛生サック」・「ルーデサック」。「小夜衣」等の通称で呼称しており、起源は江戸時代にオランダより輸入されたものである。

 とある。文政年間に出た『閨中女悦笑道具』記載があると云うので、安易にネット検索すると、江戸時代の避妊具や避妊法を紹介する記事(Japaaan(ジャパーン))が出て来る。画像もある。しかし、紳士淑女が白昼堂々見るべきものではないので注意されたい。
 革で出来た細長い袋を、陰茎に被せ、裾を紐で括る仕組みだ。詞書きには、「茎袋ハ柔き唐革にて作り蛮名をリユルサツクといふ淫汁を玉門の中へ洩らさぬための具ゆえ懐胎せぬ用意なり」とある。
 「附章 コンドームの歴史」には、昭和初期の問屋カタログ、『主婦之友』掲載広告の数々(ナゼここに広告を出す?)が載っているのだが、商品名は「サック」が多く、「フィッシュ・スキン」は広告の片隅に1行記されるパターンが殆どだ。この「字引」で「ルーデ・サック」を引くと、「フィッシュ・スキンを見よ」なので、どっちが良く使われた言葉なのか、両者の力関係が良くわからない。
 そこでネット公開辞書、Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 隠語大辞典 とたどって行くと、「ルーデサック」の項がある。

 2.男女○○する場合に、花柳病予防又は妊娠忌避の手段として用ゆる器具のことをいふ。独語のRud-Sack「男根の嚢」の事である。
 3.ルーデは独乙語の男根。サツクは同じく独逸語で嚢の意である。即ち花柳病を予防するに用ふるコンドームの俗称。

 さきの「語源不詳」がたちどころに解ってしまう。この辞書に「フィッシュ・スキン」は載っていないから、両者の力関係も解る。編集者/執筆者はドイツ語に疎いことがわかって面白い。
 調子に乗って国会図書館のデジタル資料も見る。
 『秘密辞典』(自笑軒主人、千代田出版部、大正9年)では、

【さっく 英 Sack】
 1袋。包。2るーでさっくの略。
【るーでさっく 独 Rute-Sack】
 病毒予防などの為に用ふる男子の淫具。


 とある。ここからドイツ語の辞書を見て行く。
 『独逸医学辞典』(新宮涼園 等編、英蘭堂、明治19年)。書き写すのが面倒なので画像で御容赦願う。


※画像を90度回転させてある

 陰茎が「Ruthe」、これが「ルーデ」。残念ながら「ルーデ・サック」は載ってない。明治19年は一般的では無かった事の傍証と云えるかは、いくら「兵器生活」でも断言出来ぬ。
 もう少しあと、明治42年『最新医薬学辞典』(島田耕一、同済号書房)より


 この辞書にも「ルーデ・サック」はありません。こちらは「Rute」、つづりが違っていますね(冷汗)。
 日本でも陰茎を「竿」に例えることはあるが(『隠語大辞典』にも記載あり)、「鞭」は長さ的に無理があるような気がする。もっとも、『家畜人ヤプー』で切り取ったヤツをムチに加工して、持ち主を打擲する場面を読んだ記憶はある(紳士淑女がコッソリ見ている動画で『ペチペチ』やってるモノはありますが…)。
 現在流通している辞書を使えば、どこからも文句が来ない内容になるが、それだと面白くないので、あえてここまでにしておく。

 「ルーデ・サック」がドイツ語となれば、戦前日本で「コンドーム」よりこの言葉が一般的に使われていたのも納得だ。江戸時代の「リユルサツク」はオランダ語なのだろう。それを「茎袋」と直訳したセンスは、「小夜衣」ほど雅ではないが、昨今の「ゴム」より、よっぽど文化的と云える。くだいて云えば「マラぶくろ」。広告などで「サック」と略すのも、「ルーデ」の意を思えば、表記を短くする以上の意味があったように思う。

 サックで防ぐ病気(花柳病)の呼び方にも新語がある。

社交病
 従来の社交場の中心は多く花柳界であった。それがために、ややもすればそこにいわゆる花柳病の伝播が行われた。花柳病というと、如何にも低級な感じがするし、学術上の病名を掲げたのでは一般向でないので、近時斯道の開業医が社交病の語を大衆向の広告に用いている。


性病科
 専門学名を掲げたのでは素人には解りにくい、さりとて花柳病の看板では俗悪でもあるし、一般性的疾患の総称にならないというので、近頃開業医がこんな看板を掲げ始めた。

 「社交病」と「性病科」、どちらも同じ頃に出来た新語だったのだ。どっちが生き残ったかは記すまでもないが、50年後の読者の便宜を思い、「性病科」の看板は今でも見ることが出来る、と書いておく。
 帝国陸軍では、疾病をその原因によって「一等症」から「三等症」に分類していたのだが、最も不名誉な「三等症」が、これにあたる(『陸軍と性病』)。
 古い(いいかげんな)辞書は面白い。
 調べる目的で使う限りでは、その語、関連語を見て終わりだが、全体にざっと目を通し、そこから面白そうな項目を拾い、改めて掘り下げて行くと、掘った先から余計な知識が崩れ落ちてきたり、穴底から湧いて来る。読み物にまとめるには余計であり無駄なのだが、辞書の項目とは、モノゴトをコンパクトにまとめたものである事が実感出来る。
 一杯の「ホイスキー」からその瓶を、青い麦畑(バーボン党はトウモロコシを)を想像する。辞書で遊ぶとは、そう云う事だ。
(おまけのおまけ)
 今回も知らぬとて、社会生活には一向困らぬ内容ばかり紹介したのだが、主筆にも良心のカケラくらいはある。紳士な読者のため、実用的な記事を一項引いておく。

カフス
 英語でCuffsでワイシャツの袖のこと。カフスにつけるボタンはカフス・ボタンである。
 西洋人はカフスの汚れを極度に嫌う―それは、彼らはワイシャツを下着・肌着・下帯兼用として用いるからである。従って猿股を用いない。(乃(そこ)で、ワイシャツの裾は長く胴全体を包むように作ってある)―というわけで、袖口の汚れで、他のかくれた部分がどれくらい汚れているかという例証になるからである。


 「下帯」は、「ふんどし」「腰巻き」の別名。たぶん紳士淑女が口に出しても恥ずかしくない言葉。ワイシャツ袖口の汚れは嫌われると云う事です。
(おまけの余談)
 参考にした『陸軍と性病』、例によって本の山に埋没しており、探す気にもならず、もう一冊(新本で)買ってしまう。来月には埋もれてしまうのは確実。

 ルーデ・サックの意味がわかったのは、主筆も想像していなかった今回最大の収穫だ。しかし、ルーデサックの語が廃れたのは何時なのかと云う、余計な疑問が湧いてしまったのは、ドーしたものだろう。ちゃんとした百科辞典を繙けば、答えが見つかるのだろうか。