264 k−102

 (264) K−102 競速機
       K 生  案

 発動機    倒立V型 2500馬力 1基
 全幅      9.40米
 全長      9.20米
 全備重量   2500瓩
 最大速度   800粁/時

 特色
 プロペラは大小2個コントラとなし、前方小プロペラは着陸時ピッチ負
 となり抵抗を生ず。

 可動翼、固定翼の間隙には発條のある金属小片にて整形す。

 外皮はプラスティックにて形成され完全平滑にして金属板の場合
 の鋲による空気干渉ない。

 発動機排気は主翼付根上面に導き胴・主翼間の悪気流を最小限
 ならしむ。

 十文字尾翼、座席カバー上下可動。

 「空」S15.10

 石田一郎の批評(S15.11)

 詢に垢抜けした立派な三面図だ。往年の時田氏のものに比敵する。隅にあるマークも、味があってよい。
 小プロペラをコントラに回す等はチョット面白い様だが全々何もならない事だ。前面図に在っては脚柱を斜めにして居るのが遺憾である。須く垂直にした方が応力が楽であり、軽単に仕上がるであろう。敢えてメッサー機を真似るには及ぶまい。彼の構造的要求があるのだ。
 平面図、水平尾翼の可動舵を二分するには及ぶまい。排気口を翼付根に設ける事は確かに悪気流の排除に役立つであろう。併しその程度はどの位のものか、それによってフィレットを廃し得る様であれば上首尾。
 側面図、競速機の十文字尾翼は果たして必樞なものであろう。プロペラ気流の捻れをコントラするものであるそうだが、これしきのものがそう役立つとは思われない。それに接地するとすれば相当の強度を持たせねばならず、又地上迎角が少ないと兎角鼻付きをする恐れを生ずる。併し模型機ではこの様な尾翼を推奨したい。


 水平垂直尾翼は同じ位置に組み合わせた形が普通である。その方が整って居て美しい。併し往々にして両者を前後にズラした設計を見受けられる。先ず垂直尾翼を後方に出す場合は利きが良くなる故、形を縮小出来る訳で必ずしも良案ではない。併し前方に移す場合は色々の点で構造が楽になる。その上錐揉みに際しても制御効力をよく発揮する取柄がある。
 飛行機が錐揉みになれば主翼ばかりで無く水平尾翼も失速する。そして其処からの乱気流が垂直尾翼に当たれば、覆われただけ垂直尾翼の効力を失わせて了う。従って前方にある場合は攪乱流を完全に避け得て制御力を失う様な事はない。又別に垂直尾翼を水平尾翼の後下方に広く下げる場合もあるが矢張り同じ意味合いからである。
 失速に陥った場合の命の綱は僅かに垂直尾翼に在る事を想うべきだ。

 総督コメント

  画像の圧縮を掛けすぎで、図版が汚くなってしまった。

 先の湯川氏の作品評があっさりしているのに対し、この分量は何なのだろう。書き写すこちらの身にもなってもらいたいものである(笑)。

 当時のハイテク素材である、プラスチックを利用した競速機である。着眼点が素晴らしい。とは云え、K生氏の意図としては、プラスチックを使うことで、表面の平滑さ=空気抵抗の減少を実現しようとしたようで、現代の軽量化と云う意識はまだなかったようである。現実に樹脂素材が航空機の外装に利用されるようになったのが、ここ10年くらいの事を想えば仕方の無いことなのかもしれない。

 氏の空気抵抗を敵視することは親の敵のごとしで、翼本体と動翼の間には、バネ状金属片(じゃばらのようなものだろう)をはめ込んで、あくまでも流れるようなラインを維持したいようである。ただしバネ状だとすれば、バネの抗力が操舵に与える影響が心配である。


 現実の競速機の場合、空気抵抗減少のためのからくりを装備することの重量増を嫌ってか、発動機出力の増大と、外形での空気抵抗の減少に務める事が多いようである。


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