物件No.20 「検見川送信所」 千葉県

「ニイタカヤマの残像」

 千葉県の静かな住宅地のど真ん中に、この物件は位置します。周りに積み上げられた土や植物によって、それはまるで砂漠の中に浮かぶ「遺跡」のようでした・・・。「検見川送信所」の詳細は、サーチエンジンで探せば沢山有りますので、ここでは書きません、1920年代に建造されて、太平洋戦争の引き金になった真珠湾攻撃の「ニイタカヤマノボレ」の暗号文を送信したらしいです・・・。その後1970年代に閉鎖し廃墟になったようです。

 とにかくデザインの美しさ、年月が培ってきた特有のオーラの様なものさえ感じる事に出来る、数少ない物件です。外観だけでも凄いので、初心者にも最良ではないでしょうか。ちなみに敷地は普通に車両などの抜け道として使われていますので、法に触れることなく近寄ることが出来ます。

場所も「某大学」のアートみたいなイベントのHPが残っているので簡単に特定できます。ちなみに私は、そんなイベントをやる前に廃墟&近代建築のHP「アーカイブズ」のKEIKOさんに教えていただきました。近代建築系にも最高の物件です。駅からも近いので、カメラでも持って、散歩がてら行ってみてはいかがでしょうか?

外観1

広い空き地の真ん中に、コンクリートの建物が静かに佇んでいます。
古い地図上ではNTT倉庫と表記されています。
昔は、黒電話が沢山有ったらしいです。
外観2

1階の窓は全て鉄板で塞がれていますが2階の窓は開いています。
誰かが、ガードレールを滑り台のように、2階窓の渡してくれていました。
有り難く使用させて頂きました。
しかし、数人がかりでないと、持ち上がりません。
ご苦労な事です・・・。
外観3

上の画像と違う日です、多分半年ぐらいの時間差が有ります。
建物の周りの土が、以前より掘り下げられていました。
ガードレールの角度が更に鋭角に・・・。
セピアのコンクリートと錆びた鉄板のコンビが素敵な色を演出しています。
入ってすぐの部屋

ガードレールを登って2階の窓から入ってすぐの部屋です。
ひっそりと静まり返った「時の止まった空間」にセンスのかけらも無い
下等な落書きが少なからず出迎えてくれます。
この落書きの質が、同じ海辺の県なのに、神奈川と千葉のセンスが何故違うのかを語ってくれます。
私は千葉人です(笑)
部屋1

コンクリート剥き出しの高い天井からシンプルな蛍光灯が下がっています。
差し込む日光が、無機質なはずのこの空間に温かみを感じさせてくれます。
ドアや窓のデザインが、シンプルなのに素敵です・・・。
部屋2

赤いカーテンが、長い年月の耐え、静かに下がっています。
現在だったら、大きな窓1つのところに、3つの窓のデザインが良いですね。
廊下

天井の梁?突き当たりの曲線を帯びたデザインの出入口・・・。
他の物件だと不気味に感じる廊下ですら、美しさが勝ります。
行った事は無いのですが、外国の修道院みたいです。
ドア

古い外国の映画にでも出てきそうなドアです。
摩耶観もそうでしたが、冷たいはずのコンクリートの空間が何故か暖かく感じます。
長い年月、人々を見守ってきた、歴史のある建造物だけが持つ特別なオーラのようなものを感じます・・・。


この何の装飾もない部屋に、まるで教会のステンドグラスのような窓が!!
最近の建造物のインチキ窓と違い、本当に素敵です。
窓2

木枠の観音開きの窓です。
ガラスは全て破壊されたのか、存在しません。
この窓が、光を取り込む意味を無くしてどれくらいの歳月が経っているのでしょう?
流し台1

比較的小さな流し台です。
ほとんどの物がなくなっている、この物件の中で、数少ない生活感の残る物です。
右側には、ドアの無くなったトッテだけが寂しく残っています。
流し台2

比較的大きな流し台です。
何故か、水周りのものだけが残っています。
階段(木製)

しっかりとした、木製の階段です。
風雨にさらされない場所に有ったためか、未だにきちんと残っています。
白い塗装が、この建物の内部空間にはまっています。
階段(コンクリート製)

手摺部分まで、コンクリート100%!!
上部に角が無く、全て丸みを帯びています。
この辺のデザインが温かみを感じさせてくれるのでしょうか?
踊り場のドア

片方しか残っていない、鉄製のドア・・・。
外には、午後の柔らかな光と正面に聳え立つ木の緑が見えます。
バルコニー部分きっちりとも円形のデザインが施されています。
トイレ

これまた、白く塗装された木製のドア・・・。
ガラスが、遠慮がちにほんの少しだけこびり付いています。
やはり、ここも水周りなだけあって、結構残っています。
チラシ

労使関係のチラシが貼ってあります。
昭和40年代頃まで、送信所の機械化による閉鎖に伴う、人員の削減、
とかで、かなり揉めていたそうです。
最終的には、ここの職員はどこかの送信所に転勤したようです。
まあ、電々公社時代の話ですね。
配電盤

巨大ヒューズのでかレバー式です。
送信所だっただけに、当時は最新型だったのでしょうね。
それでも、木枠の観音開き・・・。
落書き1

素っ裸の「高木ブー」のようです。
くだらない落書きの中で唯一、私的に気に入りました(笑)。
肝心なところが、白く塗りつぶされているため見えません・・・。
落書き2

真っ暗な1階の部屋の中に書かれていたのでチョット怖い感じです。
よそ見をしている隙に「ヒヒヒッ・・!!」とか聞こえたら泣きます。
屋上

屋上の出入口より空を望む。
廃墟内の空気から開放され、見る空・・・。
しかし、まだ現実とは隔離された空のような気がします。
屋上より望む

しかし、屋上の手摺は角までが全て半円形!!
コンクリート100%の空間に生い茂る植物・・・。
廃墟の美は植物無くしては語れません。

低い土の山を隔て、住宅地が広がっています。
この山の幅を表す単位に
メートルではなくの方が相応しいと感じます。
記念碑

かなり立派な記念碑が建っています。
理由は不明ですが、刻まれていたであろう、文章の部分が削り取られていて読めません。
金属プレートを削るなどとは、悪戯とは思えません。
推測なのですが、労使闘争の関係ではないかと思います・・・。
「こんな、奇麗事だけの文章書きやがって!!」ゴリゴリゴリ・・・。
って感じです。
注意の看板

9月某日より、2階の窓を鉄板で封鎖しますとの文章・・・。
中に物をおいている方はそれまでにもって帰って下さい的な事が書かれていました。
結構良心的ですね(笑)
今まで、長い年月の間、この状態で放置されていた「送信所」も2度と入ることが出来なくなります。
ここに訪れたのが、封鎖の1週間前ぐらいでした。
最後に内部に入ることが出来て残念ながらも少し良かった気がしました。