物件No.22 「中村精神病院」 埼玉県

「破壊への道標」

 2001年7月の終わりに、土砂の重みで倒壊して、1月間近く国道を通行止めにしてニュースにも出た有名物件です。「Ruinパラダイス」でまちゅさんが、私の数倍詳しく調べています。是非、御覧下さい。
 皆さん、廃墟の空気ってわかりますか?物理的な「空気」では無く、五感で感じるその廃墟物件の独特な、雰囲気・・・。今まで、多く巡ってきた廃墟の中でも「金子邸」(公開中)に出会うまでは、ワースト1の嫌な空気の漂う物件でした。精神病院という予備知識をもっていたから、 そう感じたのか?とも思いましたが。後日、違う精神病院に潜入した時は、これほどまでに嫌な空気では有りませんでした・・・。
 特に気温が高いわけでも無いのに、汗がにじみ出て、一歩前に前進する事を体が拒みます。もはや廃墟を楽しむどころか、一刻も早く立ち去りたい気持ちと、廃墟Explorer管理者としてのプライドの戦いです。霊感云々はさておき「負の空気」が存在するのを、決定付けた物件でした。上記の理由から、現在はもう存在しませんので、予告では「N精神病院」となっていますが、正式名称も公開します。
 最後に、物件の情報をくださった「 廃墟日本紀行 廃墟の魔力」の田端代表に御礼申し上げます。.


隣接する学校から

見難いですが、この建物は外来の診療棟で、奥に入院患者用の棟が有ります。
私が、潜入出来たのは奥の入院棟だけでした。(まちゅさんは両方レポートしています)
こちらから、潜入しようと探索していたら、敷地内から犬が数匹走ってきて、けたたましく吠え掛かってきました。
謎の門

立派な日本家屋風の門・・・。
なぜ、ここにあり、なんの用途に使っていたのか全く不明です。
これも、わかりにくいのですが、すぐ後に病院を取り囲む、木製の高い塀が有るのがわかるでしょうか?
門の向きから考えても、病院の門であることは間違い無いのですが・・・。
側壁

先ほどとは正反対の位置です。
通常、廃墟を取り囲む塀は、鉄板製が多いのですが、ここの塀は、組み木を使った立派な塀です。
コスト的に絶対高そうなのに・・・。これも、不明。
総ての窓にがっちりと打ち付けられた鉄格子が、ここが精神病院で有った事を物語っています。
側壁上部より

何故か、国道の裏側に、建物を覆うように土が山のように積み上げられています。
潜入するには、この山を登るしか有りません。
山の中腹あたりから撮影した、塀の内側と、窓の鉄格子のアップです。
山頂

山頂部に到着しました。
高さは、4階建てのこの建物の屋上まで達しています。
遠くには稼動中のユンボと先ほどの犬が見えます。
ただ、積み上げただけの禿山なので、足元の土が崩れ落下して行きます。
山頂より望む

入院棟から臨む外来錬です。
腰を低く屈め、作業員と犬に発見されないように、屋上に取り付きます。
なんと、屋上出入口のドアの硝子部分が破壊されていました。
匍匐前進で、そこまで這って行き、潜入成功。
階段踊り場

階段の踊り場まで、鉄格子の扉が・・・。
塗り重ねられたペンキの扉、剥げはじめた壁・・・。
まるで刑務所のようです。
負の空気に、外の押し戻されそうになります。
階段下から

踊り場のドアと窓の相関図です。
精神病の方が、逃げ出したらまずい事は、頭ではわかっていても、この光景には驚かされます。
廊下

緑が、気分を落着かせる色と聞いたことはありますが、この色は何かが違うような・・・。
正常な私でさえ?クラクラしてきます。
廊下と階段の手前に、更に分厚いスライド式の扉が・・・。
部屋

外の明るい日差しが差し込んでいるにも関わらず、全く嫌な感じが薄れません。
鉄格子から見る外の世界・・・。
こんな景色なら見ないほうが良いかも知れません。
食器差入口

ここから、食事や必要なものを差し入れるのでしょうか??
まさに、刑務所も真っ青です。
患者さんがどんな扱いを受けていたかが想像されます。
水道

結構普通の水道です。
しかし、壁の色が悪趣味としか言いようが有りません。
トイレ

これまた、至って普通すぎです。
部屋があれだけ厳重なのに、なんで水道やトイレは普通なのでしょうか?
階段上から

厳重です。
精神病院が倒産したら、国などで買い取って「刑務所」に転用したら・・・。
と思うほど、厳重です。
治療室??

どういう治療にどうやって使用したのか??
全く想像できません。
かなり保存状態良好です。
田端さんがトップシークレットにしたのも頷けます。
連絡通路

隣の病棟への連絡通路です。
しかし、完全に閉鎖されていて、向こうに渡ることは出来ません。
ここで、大変な事に気が付きました!!
なんと、懐中電灯を持ってきませんでした!!
しかし、1度表に出たら、もう2度と入る気にならないと思います。
このまま、探索を続けます・・・。
冷蔵庫、布団etcかなりの「物」がそのまま残っています。
1階廊下

真っ暗な空間と負の空気・・・。
自分の精神が暗闇に溶け込んでしまいそうです。
この空間の中では、今までの経験や慣れなど何の役にも立ちません。
ただ、意地だけが私を支えます・・・。
診療室??

ここで医者と患者が診療を行っていたのでしょうか?
薬、書類、文具に至るまで、全てが残っています。
今回は、明かりがないので、闇雲にデジカメを向けてシャッターを押すだけです。
フラッシュの光が一瞬だけ、部屋の様子を映し出してくれます。
上には蜘蛛の巣が・・・。
診療室??2

しかし、フラッシュをたくたびに、何か見てはならない者が、浮かび上がるのではないかと、シャッターを押すたびにドキドキします。
ここからは「もう、いいんじゃないか?」と「もっと、見たい!!」の戦いです。
診療室??3

この部屋も保存状態が最高です。
こんなに暗いのは、外に板が打ってあるとか、シャッターが降りているのでは無く、完全に国道の反対側の1階部分が土に埋もれているからです。
漏れてくる光も無く完全な暗闇です・・・。
少年マガジン

「あいつとララバイ」ですね。
しかし、ララバイって今、改めて読むとかっこ悪いですね。
当時はかっこ良かった感じです(笑)。
この作者って「湾岸ミッドナイト」の人ですよね?
1階部屋

更に奥に入院部屋が有りました。
そういえば「精神病院」ってベットが無いですね。
やはり、普通の病院とちがって体の健康を害している訳ではないので、ずっと寝ている事は無いからでしょうか??
土の重みで、鉄格子は曲がり、硝子は砕け、土が部屋の中に押し寄せて来ています。
窓枠も歪んでいるのが、わかるでしょうか?
窓から望む

太い鉄格子の間から、診療練を望みます。
右にある建物がまるで監視塔のようです・・・。
赤い屋根の平屋は、何だったのでしょうか?
今となっては永遠の謎です。
目の前に広がる青い空・・・。
ここからでは、その空の下に出る事は許されません。
塀の内側

赤い屋根の位置を見てもらえばわかりますが、上の写真と同じ位置から1階下がった所からの撮影です。
塀の様子がよくわかると思います。
ただの板ではなく、四角い棒状の木を組んで作っています。
何故、これほど立派な造りなのか?これも永遠の謎です・・・。
全景

やっと恐怖の空間からの撤収です。
ちなみに、脱出するのにも犬と作業員がこっちを見ていない瞬間を狙ったため、小一時間かかりました。
この日から、約1年後、この建物や塀が、土の重みに耐えかねて、この国道に山ごと倒壊するなど考えてもいませんでした。
被害者などなかったのが、幸いでした。

(後書)
 しかし、精神病院の内部って不思議な世界ですよね。何故って、その空間を垣間見るには、職員になるか、自分が精神に異常をきたすかしかないじゃないですか・・・。多分、家族が面会とかに来ても、入院病棟の部屋に行く事は無いと思いますよ。だって、あの環境をみたら、きっとビックリして退院させたくなっちゃいますよ!!
 建物内の「負の空気」は倒壊後いったい何処にいってしまったのでしょう?新たなる器を求めて、空中を彷徨っているのかもしれません・・・。また何時かどこかの廃墟で出会ってしまうのでしょうか?出会いたくないですね(笑)。