物件No.46 「幽霊マンション」 千葉県
「高度経済成長の墓標」
「幽霊マンション」と言う名は所謂あだ名です。物件的にはどう見てもマンションというより団地にしか見えません。高度経済成長期の真っ只中の昭和30年代の後半から40年代に始まった首都圏への人口増加対策として多くの団地が建造されました。その多くがこの物件と同じ構造の鉄筋コンクリート4階建ての集合住宅型です。しかし、現在その建物も約40年間に近い歳月を経て建て直し等による廃墟化が進んでいるようです。
私の実家も昭和39年頃に建てられた団地なので何だか、複雑な心境での探索となりました。高度経済成長が原因でおこった人口増加、その対策のために作られた住居・・・。経済成長の止まった現在、廃墟と化したその巨大な建造物は、まるで高度経済成長の墓標のように見えました・・・。
全景正面 畑に囲まれた中に一棟だけ残っている団地風の建造物。 コンクリートの肌が曇り空と重なって暗い影を落とします。 |
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全景左側 窓や察しなどは全て取り払われ、高い柵に覆われています。 屋上の真ん中に立っている貯水タンクがデザイン的にいい感じです。 |
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中心部 なぜか天井に大きな穴が空いています。 ちなみに各階の天井にも全て穴が空けられていて、 1階から上を見上げると空が見えます。 取り壊しの準備に入ってから何らかの理由で放置されているようです。 |
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柵 手前のオレンジの有刺鉄線入りの柵 隣接して鉄パイプ製のグレーの柵 そしてとどめの奥にはかなり高い鉄板製の塀 厳重です!! |
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奥の塀 沢山の落書きが・・・。 ここが有名な心霊スポットなのを思い出すと共に 何故、ここまで厳重な囲いが施されている理由がわかりました。 |
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補修あと 新しいです。 落書きドキュソとの「イタチの追いかけっこ」状態が目に浮かびます。 |
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裏からの全景 蔦が廃墟を飲み込むように、全ての部屋の最上部のベランダまで 覆い尽くしています。 もし、この地球から人間が居なくなったら凄い速さで植物の 支配する惑星になってしまうのでしょうね・・・。 壁の側面に1という番号が確認できます。 ということはこの建物は1号棟で2号棟以降も存在したのでしょうか? |
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ベランダしたから 主を失った各部屋の手摺には蔦が生い茂っています。 かつて人間が居た形跡は垂れ下がった布団だけでした・・・。 |
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錆びた階段 1階のベランダは手摺が1部切れていて、そこには階段が有りました。 頑丈で有ったであろう鉄も、今では私の体重を支える事も出来ません。 |
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部屋1 破壊された部屋の中にかなり旧式の洗濯機が放置して有りました。 ここに住んでいた人がもしこの光景を見たら、きっと悲しい気持ちに なると思います・・・。 |
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部屋2 主を失った瞬間から、この空間は急速に朽ち果て行きます。 まるで、魂をなくした亡骸のように・・・。 床の汚さに比べ、壁の白さが印象的でした。 |
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部屋の床 畳や、床板はすでに無く床下の土が直接見えます。 畳の残骸すら存在しないので、やはり途中まで取り壊しが進んだの だと考えられます。 廃墟HAZARDに書いた、床を踏み抜いた物件は、実はここです(笑)。 |
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部屋の天井 この天井を撮影しようと思って、ファインダー越しに上を向いていて ズボッと・・・。あせりました(笑)。 本当は、真下から真上を撮影すると空まで見えるのですが、 危ないので断念しました。 コンクリートの破片も落ちてきそうです。 |
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台所 典型的な団地の台所です。 何故か、水周りの設備の保存状態は総じていい感じです。 私的には、台所のイメージはこれが正解で、現在のシステムキッチン 等は遠い存在です。 若き日の母の後姿をふと思い出しました・・・。 |
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便所 和式の水洗トイレです。 今は、古い団地でも洋式化の工事が進んでいて少なくなりました。 あと何年かしたら、きっと公共施設を除いて、和式トイレを見れるのは 廃墟ぐらいになってしまうかもしれません。 |
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風呂 狭い!!しかもコンクリー張りなので寒そうですね。 なのに何故か温かみを感じてしまいます・・・。 蛇口に残された短いホース・・・。 この存在が廃墟内での生活感の大きな意味を示します。 |
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ベランダからの風景 もしかしたら、ここから、先に逝ってしまった2号棟が見えたかも しれません。 しかし、今は広大な畑が広がっています。 |
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玄関 変色して錆び始めた鉄製のドア。 置くにはお隣さんのドアが見えます。 このドアを勢いよく開け階段を駆け下り友達の待つ公園に向かった 幼少の頃の自分に出会えた・・・。 そんな気がしました。 |
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1階入口 各階段の入口です。 鉄パイプで厳重に封鎖されていました。 掲示板は残っていましたが、そこにはもう何も有りませんでした。 |
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階段の踊場 夜になると薄暗く、またコンクリートの冷たい階段。 しかし、この重たい鉄の扉の中には暖かい家庭が待っています。 そんな、幻想を抱きながら、この鉄とコンクリートで出来た建造物の なかに立ち尽くします・・・。 そしてまた、冷たく淀んだ空気の中を一歩一歩ゆっくりと、 階段を踏みしめ現実へと下って行きます。 |
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街燈 それは、かつて意味をもち、そして建造物が住居から廃墟へと 変った時に、その意味を失いました。 この建造物が、幽霊マンションと呼ばれ続ける限り、その傍らで じっと立ち続けて行くのでしょう。 意味の有った時と同じ形を保ちながら・・・。 |
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全景右側 近代的な高層マンションが向こうに聳え立ちます。 2つの時代が1つの空間に同居しているような景色・・・。 木造建築が当たり前だった当時、この物件も「鉄筋コンクリート」の 最新型の真っ白な建物だったに違い有りません。 数十年後の未来、あの近代的なマンションが廃墟になった時、 この景色はどう変貌しているのでしょうか・・・。 1つ間違えなく言える事は、 私はその景色を見ることは無いと言う事だけです・・・。 |
(後記)今回の物件は、私自身の実家が、まさにこんな感じの団地だったので、かなり感情移入してしまいました。「軍艦島」も、もと住民だった方等が、それを売りにしてHP上でやたらと張り切っていますが、故郷が廃墟になるって言う意味では、はたしてこの物件と何処が違うのでしょうか?この団地で生まれ育った方から見れば、きっと廃墟になり、思い出の場所が「幽霊マンション」などと近隣の方から呼ばれている事を、けして喜んではいないと思います。決して軍艦島を否定している訳ではないのですが、「軍艦島オンリーファン」では無く「廃墟フリーク」の方には、こんな物件が、実は小さな「軍艦島」であることも、思い出してください。