エンゲル係数が上昇しているという動きが注目されている(図録2355参照)。こうした動きは、主要国と比較してどのような特徴が浮かび上がるのだろう。エンゲル係数の上昇はわが国だけの傾向なのだろうか?

 わが国以外では家計調査は本格的・継続的に行われてはおらず、行われているとしても基準が同一だとは限らないので、諸外国の家計調査を使うわけには行かない。そこで、作成基準が統一されているGDP統計(SNA)の国内最終家計消費の内訳から算出したエンゲル係数で各国の動きを比較してみた。

 エンゲル係数の各国の相対レベルは、余り、変わっていない。かねてより、米国が特別低く、グルメ国とも考えられる日本、イタリア、フランスで高くなっている(グルメ国かどうかは図録0210、OECD諸国のエンゲル係数比較は図録0212、世界各国の食料費割合比較は図録2270をそれぞれ参照されたい)。スウェーデン、英国、ドイツは、両者の中間のレベルである。

 欧米主要国の動きを見る限り、米国を除いて、反転の時期は異なるが、日本と同様に、下がり続けていたエンゲル係数が最近上昇に転じている(ただし英国は直近で再度低下している)。

 日本で情報通信革命が通信費を上昇させた1995〜2005年の時期には、生活水準が上昇していなかったにもかかわらず、エンゲルの法則に反して、エンゲル係数が低下した(図録2355参照)。世界的に情報通信革命が進展していた同時期に、米国と英国を含めて、すべての国でエンゲル係数が下がり続けていた状況が認められる。

 すなわち、日本と同様に情報通信革命が大きく進行した時期にエンゲル係数が下方シフトし、それが落ち着いてエンゲル係数が上昇ケースも見られるようになったというのが、先進国共通の動きだと推測できよう(先進国の家計通信費の動きは図録6366参照)。

 なお、2009年には、日本、ドイツ、英国以外の国でエンゲル係数が短期的に跳ね上がっているが、これは、2008年の穀物価格の急上昇の影響と見られよう。日本がその時期にエンゲル係数に大きな変化が見られなかったのは円高傾向が相殺要因として働いていたからであろう。

 また、最近の日本の他国と異なるグラフの動きからは、2015〜16年の円安が日本のエンゲル係数を特異に上昇させている印象が得られる。報道によれば「総務省が14〜16年の上昇要因を分析したところ、上昇幅1.8ポイントのうち、円安進行などを受けた食料品の価格上昇が半分の0.9ポイント分を占めた」(毎日新聞2017.2.18)という。

(2017年2月21日収録)


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