農業を議論する前提として、日本農業の基本的な数値である農産物の総売上(農業生産額、農業総産出額)と農業所得の値を押さえておこう。常識的な農業生産額という表現は、GNP統計上の純生産額(所得額)と紛らわしいので、産出額、あるいは粗生産額という用語が使われている。

 農業の産出額は農業者段階の農産物価格(いわゆる農家庭先価格)をベースにしている。農業所得(生産農業所得)は産出額から飼料代・肥料代や機械償却費などの物的経費を差し引き、補助金等を加えたものであり、農業者の人件費、地代、利子を含んでいる。

 2013年の農業総産出額は8.5兆円であり、1980年代後半の12兆円弱の水準からかなり低下している。

 2011年の総産出額8.2兆円というのはどの程度の規模かというと、2011年のGDPが471兆円であるので、その1.7%である。また医療費(2009年度)は36兆円であるので、その23%、4分の1である。

 なお、2004年度では「農水産物の国内生産が12兆円であるのに対し、飲食費としての最終消費額は80兆円の規模まで膨らんでいる」(平成19年度食料・農業・農村白書)。輸入農産物、及び食品工業、飲食店、卸小売業などの所得が加わるため国民が飲食に消費する金額は農業総産出額に比べずっと多いのである。

 なお、総産出額の部門別の内訳も大雑把に押さえておこう。かつて農業総産出額が約10兆円だった頃、米と園芸品目(野菜、果実、花き)と畜産がそれぞれ3兆円ずつと私は覚えていた。図を見ると大体そんな感じである。現在はだいたい米2兆円、畜産2.5兆円、園芸3兆円で合計8兆円という位に変化している(その他は大体0.5兆円)。最近は米が低迷、畜産、園芸がやや伸びつつある。

 総産出額は金額であるので、農産物の生産量と価格が影響する。生産量が同じでも価格が上昇すれば産出額は増加する。そこで、参考のために、農産物の生産量の推移を示す農業生産指数の推移を掲げておいた(近年は計算されなくなった模様)。2013年の米の低迷は米価の下落によるものである。

 産出額と生産指数の推移を比べると、1990年代前半までは、生産量は、毎年の増減はあるものの、ほぼ横ばいだったのに対して、産出額は増加した(少なくとも1980年代までは)のに対して、1990年代後半からは、生産量レベルが低下傾向となり、産出額はそれ以上に低下してきている。

 次ぎに、生産農業所得の推移を見ると、1970年代後半、1990年代前半には、5兆円に達する年もあったが、最近は、かなり減少し、2.9兆円(2013年)となっている。

 2.9兆円で何人が食べていけるかという点であるが、もし平均所得が500万円必要だとすると、58万人が食べていける勘定となる。実際の所は農業従事者が454万人、農業が主の者だけの農業就業者だと261万人いる(2010年、図録0530)。

 農業総産出額にしめる生産農業所得の割合が、所得率、すなわち農業者の手元に残る割合であるが、1975年当時は50%を越えていたのに対して、最近は4割を切っている(2013年には34.7%)。所得率には、農業生産に肥飼料や機械などの物的資材をどれだけ使うか、また農業資材と農産物の相対価格動向が影響を与える。一般に畜産はエサ代が非常にかかるので所得率が低い。

(2009年2月20日収録、2013年4月27日更新、2014年12月17日更新)


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