GNP、GDPは国の経済規模を測る指標として、また経済発展を測る指標として定着しているが、経済万能主義は誤りだとして、それに代わる発展の指標がかねてより追い求められている。

 代表的なのは人間開発指数(HDI−Human Development Index)であり、厚生(ウェルフェア)の考え方としてインカム(所得)・アプローチからケイパビリティ(潜在能力)・アプローチへの転換を打ち出したノーベル賞経済学者アマルティア・センの影響下、比較的計測しやすい指標として国連開発計画(UNDP)が毎年計測し、毎年の「人間開発報告書」の中で公表している。

 ここでは、1980年からほぼ5年おきの人間開発指数の推移を上位30カ国についてグラフにした。また第2の図に下位30カ国の現状と推移を図示した。(世界の地域別推移は図録1125参照)

 人間開発指数(HDI)は、「所得」と「平均寿命」と「教育」という3つの指標の合成指数である(注)。所得水準は、個人が享受できる財・サービスの可能性をあらわし、平均寿命は、財・サービスを享受できる期間の平均をあらわし、教育は、財・サービスを享受する能力をあらわしており、3つが揃ってはじめて厚生が成り立つという考え方に立っている。

 ごく大雑把にこの考え方を要約すると、毎年の所得、すなわち1人当たりのGDPが同じでも、平均寿命が40歳の国と80歳の国とでは、国民ひとりひとりは、後者の方が2倍の期間同じ厚生を受け続ける勘定となり、厚生総量が大きいと考える。また、1人当たりのGDPが同じでも、教育度が高いためコンピュータを使える国民は、使えない国民と比べて、コンピューター10万円とバナナ10万円との間で選択が可能であり、バナナを食べるしかない国民より厚生が大きいと考えるのである。

 2013年の人間開発指数の上位30カ国を高い順に掲げると、ノルウェー、オーストラリア、スイス、オランダ、米国、ドイツ、ニュージーランド、カナダ、シンガポール、デンマーク、アイルランド、スウェーデン、アイスランド、英国、香港、韓国、日本、リヒテンシュタイン、イスラエル、フランス、オーストリア、ベルギー、ルクセンブルク、フィンランド、スロベニア、イタリア、スペイン、チェコ、ギリシャ、ブルネイである。

 上位国は、欧米諸国やオセアニア諸国で占められているが、アジアでは、シンガポールが9位ともっとも高く、これに香港、韓国が続き、日本は17位とそう高い地位を占めていない。

 1980年からの推移では、指数自体は、どの国もおしなべて上昇を継続している点が見てとれる。

 順位の変化については、日本は地位を低下させている。1980年代には、経済が好調で、日本型経営システムなど昇る日の日本が注目され、順位も上昇していたが、バブル崩壊後の1990年代以降、他の躍進国に抜かれて順位を下げたのである。

 1980年以降順位を上げた国として目立っているのは、東西が統一したドイツやアイルランド。そして、NICs(新興工業諸国)として注目された香港、シンガポール、韓国などのアジア諸国である。

 逆に、順位を下げた点で目立っているのは、日本のほか、スウェーデン、ベルギー、米国などである。

 次ぎに、下位30カ国を低い順に掲げると、ニジェール、コンゴ民主共和国、中央アフリカ、チャド、シエラレオネ、エリトリア、ブルキナファソ、ブルンジ、ギニア、モザンビーク、ギニアビサウ、マリ、リベリア、マラウイ、エチオピア、ガンビア、コートジボワール、ジブチ、アフガニスタン、ハイチ、トーゴ、スーダン、ベニン、ウガンダ、セネガル、レソト、モーリタニア、タンザニア、コモロ、ソロモン諸島である。

 ほとんどがサハラ以南アフリカ諸国である点が目立っている。これらの下位国では、指数自体を上昇させている国が多いとは言え、指数自体が余り上っていない国もあるのが、上位国とは異なる特徴である。

 なお、人間開発指数は、1人当たりGDP指標の欠点を補う指標であるとはいえ、幸福度とは必ずしも一致していない点については、図録9480x参照。

(注)具体的には、各指標の最高達成目標値に何割まで実際に達しているかの0〜1の指数を計算し、3指標の指数の幾何平均値をもって人間開発指数とする。「教育」は現在の成人の平均就学年数と就学前児童の就学年数期待値の平均。「所得」は、購買力平価(PPP US$)ベースの1人当り国民総所得の対数を使用している。なお、以前の人間開発指数の計算では、「教育」は、成人識字率を2/3加重、初・中・高等教育総就学率を1/3加重で計算した指数を使用していた。また、「所得」は「1人当たりGDP」を、購買力平価(PPP US$)ベースのGDPの対数で計算していた。平均は算術平均だった。

(2006年11月14日収録、2014年8月6日更新)


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