ランキング表(37カ国中)
順位 家族 政府や地方自治体 非営利団体(慈善団体など) 家事サービスを提供している民間の事業者

1 フィリピン スウェーデン ドイツ フランス
2 中国 デンマーク オーストリア デンマーク
3 ベネズエラ アイスランド リトアニア 日本
4 アルゼンチン ノルウェー インド アイスランド
5 ポーランド フィンランド スイス カナダ

1 デンマーク フィリピン スウェーデン スロバキア
2 スウェーデン アルゼンチン フィリピン ベネズエラ
3 アイスランド 中国 ロシア ロシア
4 ノルウェー ポーランド デンマーク メキシコ
5 フィンランド ベネズエラ アルゼンチン トルコ
日本 20位 30位 19位 3位

 家事支援が必要な高齢者に対して誰がこれを行うべきかについて、同じ調査票を用いた国際共同調査であるISSP調査の結果を帯グラフとランキング表で示した。

 老人の家事支援を行う主体としては「家族」と「行政」(政府や地方自治体)のいずれかが中心となっているが、家族を中心とした前近代の社会制度を色濃く残している途上国では「家族」が中心、社会保障が充実した先進国では「行政」が中心となるという傾向が基本的なパターンとなっている。なお、「家族」の中で誰が老親の世話をするかについての東アジア諸国比較を図録1240で行っているので参照されたい。

 「家族」の比率が80%以上で高いのは、同比率の高い順に、フィリピン、中国、ベネズエラ、アルゼンチン、ポーランドといったアジア、ラテンアメリカ、東欧の諸国である。

 逆に「家族」の比率が30%未満と低く、「行政」が60%以上と高いのは、「家族」の比率の低い順に、デンマーク、スウェーデン、アイスランド、ノルウェー、フィンランドと、いずれも北欧の諸国である。

 日本の「家族」の比率は54.5%であり、37カ国のうちの20位と世界の中でほぼ中位的な位置にある。

 慈善団体など非営利団体が高齢者の家事支援を行うべきとする比率は最も高いドイツでも14.3%とそれほど多くはない。ドイツに続いているのはオーストリア、リトアニアなど中欧で多くなっている。主要国の中では米国の比率が7.3%、第6位とかなり高くなっており、ボランティアがさかんな国であることを示している(図録1102のコラム「ボランティアに熱心だったローラ・パーマー」参照)。

 逆に、福祉先進国といわれるスウェーデンでは福祉は行政の仕事と考える気風が強く非営利団体に老人介護を任せるべきだとする割合はむしろ世界最低である。スウェーデン在住の日本人のY氏によれば、スウェーデン人の考え方によれば、そもそも高い税金を支払って高福祉社会を築いているのは、政府の力で困った人をつくらないためであり、困っている人を慈善活動やボランティア活動で助けるのは本末転倒ということになるそうである。図録1102【コラム】でも紹介したように、Y氏によれば、「実際、以前こちらの友人と米国 に行った際に、身障者が物乞いしているのをみて、『これは政府の仕事だ』と憤っていました(もちろん寄付なんかしない)」。こうした考え方が老人の家事支援にも現れているといってよいだろう。デンマークなど他の北欧諸国もスウェーデンと同じ理由で非営利団体の割合は低いと考えられる(図録3002参照)。なお、政府の社会保障機能が弱いフィリピン、ロシアでも同様に非営利団体の割合が低くなっているが、それは北欧諸国の低さとは異なる理由によるものと考えられる。

 日本の特徴としては「民間事業者」の割合が、フランス、デンマークに次いで世界第3位の高さである点が最も目立っており、次に「行政」の割合が30位とかなり低い点にも気がつく。

 フランスにおける高齢者に対する家事援助は県税を中心とした財源による高齢者自助手当(APA、1997年に創設された介護給付制度を2002年に改正したもの)によって行われているが、「サービスは原則として認可を受けた事業者又はホームヘルパーから受ける必要があり、無認可のホームヘルパーを雇う場合は利用者負担が1割加算される。配偶者や同居家族等によるサービスは給付対象とならない」(厚生労働省2014)というものである。また、フランスでは雇用・産業政策として、高齢者向け介護サービスだけでなく子育て家庭の家事代行まで含めた訪問対人サービスが総合的に振興されており、その一貫として、税控除など租税や社会保険料の免減措置や低額消費税がこうしたサービスの購入に適用されている(藤森宮子2013)。フランスの「民間事業者サービス」の割合が21.1%と最も大きいのは、こうした背景によるものと考えられる。日本についても介護保険制度により同様の民間サービスが提供され、それが普及していることから同割合が高くなっているのだといえる。

 私は、エストレーラ誌の連載「統計から社会の実情を読み取る」の第42回「頼れるものは家族だけなのか」(2015年1月)で、社会の絆が全般的に弱まり同居夫婦だけが頼れる存在になってきている状況を指摘した後に、そうした閉塞状態を打破するためには、「日本の場合は、案外、有料サービスに心を吹き込む途が最短なのかも知れない」と記した。ここで見ている結果は、実際には、この方向をたどっている証左なのかも知れない(図録2428参照)。

 日本人の気持ちの中に行政依存を嫌うところがある点については、社会保障は政府の責任かをきいた国際調査の結果をかかげた図録2799参照。

【参考文献】
・厚生労働省(2014)「2014年海外情勢報告」
・藤森宮子(2013)「先進諸国における訪問介護サービスの変容と今後の課題─日本、フランス、ドイツ、オランダを中心に─」京都女子大学現代社会研究

(2015年9月18日収録、9月19日補訂)


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