1.最近の状況

 医師不足や偏在による医療危機、地域医療崩壊が叫ばれている。また2008年には後期高齢者医療制度が発足したが、国会論戦やマスコミ論調では、国民健康保険制度を含む医療制度全体の財政的な維持可能性を高める目的は議論の中心とならず、むしろ75歳以上を別扱いする名称への批判、将来の高齢者負担への不安、制度の周知不足などにより制度自体が大きな批判の対象となったことは記憶に新しい。

 こうした中で、意識調査の結果は、むしろ医療への満足度が回復、向上していることを示している。男女年齢別に見ても以下の通り、各層で満足度は向上している。なお、病院の患者満足度も近年上昇している(図録1852参照)。

 2007年7月の参議委員選挙では市場主義批判、格差批判の風潮の中で自民党が大敗し、参議院では野党が多数を占め、いわゆる「ねじれ国会」となった。こうした状況の中で政権与党は国民各層および中央・地方の格差是正、福祉医療改善へ向け、それまでの財政再建に重点をおいた小泉路線の修正を図ったが、後期高齢者医療制度の導入においても所得の低い高齢者層への負担の軽減を図り、実際は負担の軽くなった高齢者も多かった。

 弱者への配慮が大きな風潮となった点やこうした実際上の負担軽減などにより、医療への満足度は上昇したと考えられる。診療報酬について抑制基調であったことも、医療提供側としては医師不足というかたちで「医療崩壊」をもたらしたが、医療を受ける側では負担の軽減となってむしろ満足度を高める方向へ作用したのではないかと思われる。

 同様な意外な結果となっている最近の不平等感の改善については図録4670参照。

 なお、こうした重要な国民意識の時系列変化を追うことができる国民生活選好度調査が2008年度で終了することとされているのは残念なことである。

2.2005年調査結果までのコメント

 1984年10月に健康保険が本人定率1割負担となったが、医療への満足度が1980年代後半にかなり低下したのはこの影響と考えられる。

 1990年以降は、「適切な診療」については満足度はほぼ横ばい(あるいはやや低下傾向)であるが、「費用負担」については、1997年9月の健康保険本人負担2割化、2001年1月老人医療70歳以上定率1割負担(月額上限付き)、2002年10月同月額上限廃止、2003年4月の健康保険本人負担3割負担などの影響でかなり低下を続けている。

 2006年度医療制度改革により、2006年10月から現役並み所得を有する高齢者の患者負担引き上げ(2割→3割)と療養型病床の食費・居住費(ホテルコスト)負担といった自己負担の増加が実施された。また2008年4月からは、後期高齢者医療制度が発足し、70〜74歳患者負担引き上げ(1割→2割)が実施されるなど、様々な制度変更が行われる。これらにより、「費用負担」の面で満足度低下が予想されるとともに、「適切な診療」の意識にまで大きな影響を及ぼす可能性がある。次の2008年の調査結果はいかなる結果となるだろうか。

(2006年6月28日更新、11月8日コメント追加、2009年6月23日更新) 


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