2016年度の診療報酬改定については、財務省と厚生労働省、医療関係者の間でせめぎあいが続いていたが、医師の人件費などにあたる「本体」部分を0.49%引き上げる一方、薬の価格などの「薬価」部分は1.33%引き下げ、全体では0.84%引き下げることを決められた。「全体のマイナス改定は08年度改定以来、8年ぶり。ただ、これとは別に、想定より売れた医薬品の価格引き下げも含めると実質マイナス1.03%となる。これは前回まで改定率に加えていた。前回14年度の改定は消費増税に伴う補填分を除けば実質0.1%増の厳しい結果だったが、今回は0.4ポイント近い増加で0.49%増に」(毎日新聞2015年12月22日)。こうしたマイナスを小さめに見せ、プラスが大きいと主張できる決着は、来夏の参院選で、集票力のある日医向けのサービスと全体の大きな減という実質的な財務省意向の実現の両立を図ったものと考えられる。

 薬価についてはジェネリック医薬品(後発薬)の普及で抑制する方向が明確になっており、このため、後発薬の価格を新薬の半分とすることが決まっていた。

「厚生労働省は安価な「ジェネリック」(後発医薬品)の価格引き下げの方針を固めた。現在は新たに発売される後発薬の価格は原則先発薬の6割だが、これを5割に引き下げる。2日の中央社会保険医療協議会に提案し、2016年度の診療報酬改定に反映させる。政府は医療費抑制のため価格の安い後発薬の使用促進を進めており、価格引き下げは促進策の一つ。(中略)後発薬の価格は前回14年度の改定でも先発薬の7割から6割に引き下げている。ただ、その後も実際の取引価格が低下していることから、厚労省は、さらなる引き下げも可能と判断した」(毎日新聞2015年12月1日)。「製薬業界は基本的に容認する姿勢だが「一律に引き下げるのは乱暴だ」として、値下げの影響が大きいものなど、薬の種類ごとに対応を分けるよう求めている。厚労省は月内に最終決定し、16年度の診療報酬改定に反映させる。後発薬は、新薬の特許が切れた後に安いコストで製造される。同じ新薬に多数の後発薬が一度に開発された場合は価格を4割とし、遺伝子組み換えなどの技術を応用したバイオ医薬品は、最初に発売する後発薬の価格を7割に据え置く」(東京新聞2015年12月3日)。

 この点に関連して、日本の医薬品費がOECD諸国の中で相対的に高いという点については図録1905参照、また後発薬の普及度が低い点については図録1907参照。

過去の改定時のコメント

(2014年度改定の際のコメント)

 政府は2013年12月20日、2014年度の診療報酬改定率について、全体で0.1%増とする方針を決めた。ただし、14年4月の消費増税に伴い、仕入れのコストが増える医療機関への補填分(計1.36%)を除いた実質ではマイナス1.26%となる。2年に1度の診療報酬改定でマイナスとなるのは、2008年度改定以来6年ぶり。実質プラスを求めてきた厚生労働省、日本医師会(日医)と、総額の削減を主張していた財務省の間を取った首相官邸が「名目プラス、実質マイナス」という痛み分けを演出した、とされる。

2014年の診療報酬の改定
  改定率 (うち仕入れコスト増
 の補填分)
実質改訂率
本体 +0.73% (0.63%) +0.10%
薬価 -0.63% (0.73%) -1.36%
全体 +0.10% (1.36%) -1.26%
(資料)毎日新聞2013.12.21

(2012年度改定の際のコメント)

 医療費の財源としては自己負担と保険料負担の他に政府による財政負担が含まれているため、来年度予算の編成過程の中で、診療報酬の2012年度改定額をこのほど政府が決定した。

 診療報酬は、2年ごとに改定される公的医療保険を診療を受けた場合の全国一律の公定価格であり、患者は医療機関の窓口や薬局で原則3割を負担し、残りは患者が加入する医療保険が病院などに支払う。厚生労働大臣の諮問機関である中医協(中央社会保険医療協議会)が手術毎の技術料の値段など、膨大な項目の細かい点数を決めるが(専門家でないと決められない部分)、大枠は政府・厚生労働省が事実上決めている。

 官房長官、財務相、厚労相の協議の結果、「全体では小数点以下3ケタの部分で0.004%増というギリギリのプラス改定とすることで合意した。介護報酬は、介護職員の待遇改善費を見込んで1.2%アップ。前回(09年度)の3.0%増に続き2回連続のプラスとなった。」(毎日新聞2012.12.22)プラス改定を求めた厚労省、民主党の顔を立てつつ、増額を嫌う財務省側にも配慮した政治決着として極めて異例な小数点以下3ケタでの調整となったという。

(2010年度改定の際のコメント)

 2010年度診療報酬改定は10年ぶりにプラス改定となることが決まった。プラス改定の結果、診療行為の総量の増加と掛け合わせた分だけ、財政負担ばかりでなく、国民の自己負担、保険料負担も増加する。

 総額の診療報酬改定率は、小泉政権(2001〜2006)下の医療制度改革と平行して、マイナスを続けてきた(図録2796参照)。その結果「医療崩壊」が進んだという見方が広がり、2009年の衆議院選挙でも与野党ともに診療報酬のプラス改定を約束していたため、今回、10年ぶりにマイナス改定から脱したといえる。なお、「医療崩壊」は、様々な面の医師負担の増大や患者の医療費負担の軽減などを通じた「患者満足度の向上」の中で進んでいた面がある点については図録1852参照。

 民主党は政策集で勤務医対策を中心に医療費の大幅増を明記していたため、当初、10%以上の改定を目指していたが、財務省はむしろ財政難や子ども手当などの財源不足から3%の引き下げを要求(「デフレ下において引き上げはあり得ない」藤井財務相)、政府内での交渉の結果、最低レベルの決着となった。

 総額の内訳としては、医師の技術料を中心とした本体部分は1.55%と2000年度改定以来の大幅な引き上げとなった。薬価部分の1.36%の引き下げが本体部分の引き上げに充当された格好である。

 さらに本体部分自体の内訳としては、医科1.74%、歯科2.09%、調剤0.52%増であり、医科の中では入院が3.03%増であるのに対し、外来は0.31%に止まった。「歯科の改定率は従来、医科と同水準だったが、次期改定では歯科に手厚く配分された。日本歯科医師連盟が自民党から民主党へ支持政党変更を視野に入れていることが影響したとみられる。」(産経新聞2009.12.24)

(2009年12月24日収録、2011年12月22日更新、2013年12月21日更新、2015年12月3日更新、12月21・22日更新)


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