介護報酬とは、介護保険が適用される介護サービスを提供した事業所・施設にサービスの対価として介護保険から支払われる費用の公定価格である。費用負担は原則として1割は利用者が負担し、9割は保険者である市町村に請求され、40歳以上が支払う保険料と国と地方の税金による公費で賄う介護保険から支払われる。介護保険制度がはじまった2000年度の介護費は約3兆6000億円だったが、2014年度は10兆円に達している。減額されると介護事業者の収入は減るが、利用者負担や介護保険料は減額となる。すなわち1%の引き下げで1000億円の支出減となる(東京新聞2015年1月12日)。

 介護報酬の額は、原則3年に一度、年間の総額が改定され、その枠内で厚労省が介護サービスの内容や価格を決める。医療費や薬価に関する診療報酬が2年おきに改定されるのと対をなす(診療報酬の改定については図録1933)。ここでは、3年おきの介護報酬の改定率の推移をグラフにした。

 2009年度、12年度は、不足する介護従業者の処遇改善が大きな課題となり、改定率がプラスとなっていたが、それ以外の時期は、高齢化に伴って需要が急増した介護サービスを急いで充実させるため、やや高めに設定されていたと思われる介護報酬の抑制が基調となっている(下表参照)。

 2015年度改定についても、在宅支援サービスは充実へ増額されるが、利益を上げているとされる施設介護は減額の方向となり、1月11日の2015年度予算案の財務大臣と厚生労働大臣の閣僚折衝で、総額が9年ぶりの引き下げ(-2.27%)となった(東京新聞2015年1月12日)。

 改定率については、財政支出を抑えたい財務省が国民負担の軽減、社会保障の持続性の観点から大幅引き下げを主張し、介護サービスの充実と介護事業者の安定経営を目指す厚生労働省の間で綱引きが行われていた。財務省の財政制度等審議会(財政審)は介護事業者の利益率を中小企業並みにするため6%減を求め、財務省はこれに介護職員の待遇改善の財源確保を加味して、4%台の引き下げを主張。一方、当初プラス改定を求めていた厚労省は1%程度の下げ幅にとどめたい考えだったという(同1月5日)。

 2015年度は2000年に介護保険制度がスタートして以来の大きな見直しとなった(下表参照)。医療や年金の制度と同様、負担増、給付減が基本的な特徴となっている(図録2796参照)。

 厚生労働省は、2018年度改定に先立って、基礎資料となる介護保険サービス事業所の経営実態調査に関する以下のような結果を公表した。2016年度の利益率は3.3%と前回調査13年度の7.8%から大きく低下しているが、これは、「15年度に介護報酬が引き下げられたことに加え、人手不足で人件費が膨らんだことが主な要因」(東京新聞2017.10.27)とされる。サービス種類別では、利用者が多いサービスとしては、特別養護老人ホーム(特養)や介護付き有料老人ホームの利益率が大きく低下した反面、訪問介護(ホームヘルパーのサービス)や通所介護(デイサービス)の利益率は全体平均を上回る水準だったので、「財務省は「不必要なサービスを提供して利益を上げている可能性がある」などと指摘しており、報酬引き下げのターゲットになりそうだ」(同上)。

 2018年度改訂は+0.54となった(首相と財務大臣合意)。「厚生労働省の調査では、介護事業所の平均収益率は大幅に悪化している。安倍政権は「介護離職ゼロ」を目標に掲げており、事業所の経営安定化や人材確保のために報酬増が必要だと判断した」(東京新聞2017.12.16)。

 介護報酬の3年おきの改定は、2018年度においては、2年おきの診療報酬の改定と6年ぶりで同時となった。2025年に向けた最後の同時改定なので、医療と介護の切れ目のない連携や要介護者を増やさないような自立支援の強化を目指すものとなっている(毎日新聞2017.12.19、末尾の表参照)。診療報酬の改定率については図録1933参照。


介護報酬の改定率の推移
改定年度 改定率(%) 備考
2003年度 -2.3 「在宅重視・自立支援」を進めるため、訪問介護などの在宅サービスは平均0.1%の引き上げ、特別養護老人ホームなどの施設サービスは平均4%の引き下げ
2006年度 -0.5 2005年度改定を含めると-2.4%。介護の必要性が高い中重度者向けの在宅サービスの報酬を手厚くし、軽度者向けサービスの報酬を減らした
2009年度 3.0 介護従事者の人材確保・処遇改善へ向けた改定。在宅分1.7%、施設分1.3%
2012年度 1.2 介護職員処遇改善加算+2%を除くと-0.8%。在宅や重度の要介護者向けサービスに重点配分。例えば、自宅に帰る人を増やしたり、新しい高齢者を多く受け入れたりした老健ほど報酬を加算
2015年度 -2.27 2014年度に消費税対応で+0.63%改定。財務省は利益率の高い介護サービス(特養、通所介護など)の抑制が課題と主張した。待遇改善計画を建てた事業所に最大介護職員1人当り月約1.2万円の賃上げを可能とする加算を除くと実質約4%マイナス。
(資料)平成27年度介護報酬改定について(第17回経済財政諮問会議麻生議員提出資料、2014年10月21日)、東京新聞2015年1月5日、朝日新聞2015年1月12日・19日など

2015年度の介護制度の変更
一定収入のある人の介護サービス利用料負担が1割→2割へ
要支援1、2の人向けの訪問・通所介護が市町村の事業に
特養への新規入所は原則要介護3以上に限定
特養の相部屋料が全額自己負担に
施設入居者の食費や部屋代の補助を縮小
(資料)東京新聞「岐路にたつ医療、介護、年金」(2015年3月2日)

2018年度報酬改定の主な内容
診療報酬 介護報酬



紹介状のない大病院受診への上乗せ負担の対象病院拡大(大病院と診療所との役割分担1)
遠隔診療への加算(大病院と診療所との役割分担2)
医療機関との連携に取り組む介護事業所への加算(ケアマネージャーが退院時にケアプランを作成したり医療機関で会議に参加したりした場合の手厚い評価)
認知症の人に対する加算の対象事業拡大
特養が非常勤の配置医や協力病院と連携し24時間対応を行う場合、加算(施設でのみとり推進)



病院前で営業する「門前薬局」の報酬減額
軽症患者の多い急性期病床の診療報酬減額(軽症者をリハビリ病床に誘導し在宅療養につなげる)
集合住宅での訪問介護の報酬を見直し使いすぎを抑制
調理など「生活援助」の頻回利用を自治体がチェック。また「生活援助」の短期間研修制度を新設し担い手を拡大し、その分、報酬引き下げ
(資料)毎日新聞2017.12.19

2018年度の介護報酬配分方針のポイント
訪問介護事業所などで外部のリハビリテーション専門職と連携すると報酬増
特別養護老人ホーム(特養)などでおむつ外しに取り組むと加算
退院後のケアプラン作りで、医療機関と連携するケアマネジャーの報酬増
特養や訪問看護事業所でみとり対応に報酬増
訪問介護の「生活援助」で担い手を拡大し、報酬は減
福祉用具の貸出料に上限を設定
「見守りセンサー」を設置した特養で夜勤職員配置加算の基準を緩和
(資料)毎日新聞(2018年11月27日)

(2015年1月6日収録、1月12日更新、1月20日表加筆、3月5日2015年度の介護制度の変更の表追加、2017年10月31日経営実態調査結果、12月17日18年度改定率、12月19日改定内容、2018年1月27日2018年度の介護報酬配分方針のポイント)


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