「うつ状態」(注)で悩んでいる人の割合は国によってどの程度違うのだろうか。この点について、統計数理研究所という政府機関が行った国際比較調査の結果(サンプル数は各回・各国ほぼ1000〜2000)からグラフ化した(原資料のあるサイトはここ)。世界各国をより広くカバーした結果については図録2143参照。

(注)英語(米国):Depression (feeling down) 、中国語(台湾):憂鬱状態(鬱悶, 心理憂悶)

 統計数理研究所の調査は4回行われており、1回目は1980年代後半から90年代前半にかけて欧米・日本の7カ国で行われた調査であり、2回目は2000年代前半に東アジア諸国で行われた調査であり、3回目は2000年代後半に環太平洋諸国(インドを含む)、4回目は2010年代前半にアジア太平洋諸国で行われた調査である。

 日本の位置は、1回目では5.4%で7カ国中最少、2回目は1回目より割合は6.9%と多くなっているが7カ国中最少、2回目はさらに割合は12.5%と多くなっているが順位はシンガポールを除くと10カ国中最少となっている。4回目は11カ国・地域のうちベトナム、シンガポールに次いで少ない。日本人は「うつ状態」に陥っている人が他国と比べると低いといえよう。

 ここでの「うつ状態」は必ずしも「うつ病・躁うつ病」とは限らないが、図録2156ではWHOのデータで「うつ病・躁うつ病」により失われた健康ロス(DALY値)を掲げたが日本は世界でも非常に少ない水準であり、また図録2140でもWHO調査に基づいたうつ病に当たる「感情障害」の割合を示したが日本の値は低かった。これらとここで示した結果は日本人の「うつ」の割合が相対的に低いという点では同じ傾向をあらわしている。

 近年、日本人でも「うつ病・躁うつ病」に罹患する患者が増えており(図録2150)、状況は変わっている可能性があるが、少なくとも、もともと日本人が「うつ」になりやすい国民だとするのは間違いだといえる。日本人の自殺率が高い(図録2770)からといって「うつ状態」も多いとはいえないのである。

 1回目と3回目とで共通の国は米国と日本であるが、双方ともに、割合は3回目の方が高くなっている(4回目も共通だが日米ともに3回目より低下)。また2回目と3回目では多くの国が共通であるが、概して割合は上がっている。これらから、どうやら、「うつ状態」の増加は世界的傾向のようである。日本は2002〜04年に急速に割合が上昇したように見える(この時期、うつ病・躁うつ病の患者も大きく増えている−図録2150)。

 2000年代前半の2回目の調査結果では北京、香港が上位2位、2000年代後半の3回目の調査結果をみると、北京、香港、上海が上位3位となっており、中国人が「うつ」に陥る可能性は非常に高いといえよう。

 4回目は3回目と順位はほとんど同じであるが、各国とも、うつ状態比率は下がっている。2000年代後半より2010年代前半のほうが世界的にうつ状態は改善されているように見える。

 最後に、3回目の調査を例にとって、男女別の違いを見てみよう(下図参照)。世界的に女性の方が男性よりうつ状態に陥る可能性は高くなっていることが分かる(例外はインドのみ)。この調査では男女差が最も大きかったのは韓国であった。


 1回目の調査の対象国は、イタリア、英国、米国、フランス、オランダ、ドイツ、日本、2回目の調査の対象国は、北京、香港、韓国、上海、台湾、シンガポール、日本、3回目の調査対象国は、北京、香港、上海、米国、韓国、オーストラリア、インド、台湾、日本、シンガポールであった。4回目の調査対象国は、北京、香港、上海、米国、韓国、オーストラリア、台湾、インド、日本、ベトナム、シンガポールである。

参考 東アジア4カ国のうつの状況

 さらに東アジア4カ国の共同調査であるEASS調査の2010年のテーマは健康であり、ここでもうつ状態の割合が得られるので以下にグラフを掲げた。

 「いつも」+「ほとんどいつも」の割合でも、さらに「ときどき」を合計した割合でも、うつ状態の少ない国から、台湾→日本→韓国→中国の順番となっている。日本と台湾の順位が逆なのを除くとほぼ冒頭のデータと同じである。また、中国に関してもEASS調査は農村部を含む中国全土を対象にしており(香港は含まず)、中国人のうつ状態が東アジアで最も多いという事実は、北京や上海といった先進都市に限られた状況ではないことが分かる点が貴重である。


(2012年11月1日収録、11月3日東アジア価値観国際比較調査の結果、及び男女別の結果を追加、2013年1月15日EASS調査の結果を追加、2014年4月22日表題に(アジア・太平洋版)を追加、6月7日アジア・太平洋価値観国際比較調査の結果を追加、10月31日同国数追加)


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