1.全体結果

 「うつ状態」で悩んでいる人の割合は国によってどの程度違うのだろうか。この点について、ISSPが行った国際比較調査の結果(29カ国、各国のサンプル数は末尾に掲げた通り、1000〜2000前後)からグラフ化した。すでに当図録で紹介したアジア太平洋地域中心の統計数理研究所の調査結果については図録2142参照。

 この1カ月に「ときどき」以上にうつ状態(不幸感あるいは落ち込みの状態)となった者の割合が最も多い国は、トルコであり、これにチリ、スウェーデン、ポルトガル、オーストラリアが続いている。「よくあった」以上に限定すると、1位はやはりトルコであるが、2位以下は、ポルトガル、チリ、英国、韓国と続いていた。

 日本は、「ときどき」以上で29か国中18位、「よくあった」以上に限定すると21位であった。日本人は「うつ状態」に陥っている人が他国と比べると比較的少ないといえよう。日本の自殺率は確かに高いが(図録2770)、だからといって、「うつ」も多い訳ではない。すでにこの点は統計数理研究所の調査結果によって示したが、ここで示したISSPの健康に関する国際比較調査でもさらに裏付けられたといえる。

 ここでの「うつ状態」は必ずしも「うつ病・躁うつ病」とは限らないが、図録2156ではWHOのデータで「うつ病・躁うつ病」により失われた健康ロス(DALY値)を掲げたが日本は世界でも非常に少ない水準であり、また図録2140でもWHO調査に基づいたうつ病に当たる「感情障害」の割合を示したが日本の値は低かった。これらとここで示した結果は日本人の「うつ」の割合が相対的に低いという点では同じ傾向をあらわしている。

2.男女別の状況 〜女性に多い「うつ」〜

 次に、アジア太平洋地域中心の統計数理研究所の調査結果(図録2142)と同様に、ここでも、男女別の違いをに示した(下図参照)。すべての国で女性が男性を上回っている状況が見て取れる。自殺率はどの国でも男が女を上回っているが、うつ状態は逆である。子との関わりの強い女性は男性と比較して自滅的な方向に逃げない(逃げられない)分、逆に、うつ状態に陥りがちなのではなかろうか。実際、同性愛や離婚の許容度は女性の方が高いのに自殺は女性の方が許容度が低い(図録2782)。男性に比して特に女性の「うつ」が多かったのは、ポルトガルとブルガリアである。日本の男女差は、4.6%ポイントと下から4位であり、小さい方といわねばならない。


3.年齢別の状況 〜日本の若者に多い「うつ」〜

 最後に、年齢別の状況も見ておこう。日本の若年層(15〜29歳)の「うつ」割合は43.4%と高年層(65歳以上)の31.0%を12.4%ポイント上回っている。29か国中の順位でも、若年層は4位、高年層は20位と国際的にも若年層の「うつ」比率は高いことが分かる。世界の国は、ロシア、ブルガリア、ポルトガルのような「高齢者うつ型」の国とデンマーク、オーストラリア、ノルウェー、ドイツ、そして日本のような「若者うつ型」の国があり、国数的には、前者の方が多い。後者は国名から見てどちらかといえば先進国型といえよう。先進国では若者の負担により高齢者向けの社会保障が充実しているという要因も影響しているだろう(図録1215参照)。


 対象となった29カ国の国名と「わからない・無回答」を除くサンプル数をグラフの順位に沿って掲げると、トルコ(1,543)、チリ(1,551)、スウェーデン(1,146)、ポルトガル(1,016)、オーストラリア(1,915)、英国(910)、フィリピン(1,196)、リトアニア(1,144)、ドイツ(1,651)、ベルギー(2,954)、南アフリカ(2,960)、ロシア(1,469)、フランス(909)、ノルウェー(1,809)、ポーランド(1,101)、韓国(1,534)、台湾(2,195)、日本(1,273)、ブルガリア(990)、フィンランド(1,314)、米国(1,540)、イスラエル(1,200)、クロアチア(1,183)、スロバキア(1,122)、オランダ(1,431)、デンマーク(1,367)、チェコ(1,772)、スロベニア(1,075)、スイス(1,210)である。

(2014年4月22日収録、5月12日うつが女性で多い理由のコメント追加、6月17日年齢差データ・コメント追加)


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