日本では、うつ病・躁うつ病の患者が増加している(図録2150参照)。一般には、豊かで複雑な社会となりストレスが高まってきたので、こうした疾患も増加していると見なされている。それでは、世界各国で、うつ病・躁うつ病と豊かさとは相関があるのであろうか。

 WHOでは、うつ病・躁うつ病他の総ての病気や傷害によってどれだけ寿命・健康が失われているかを示すDALY値が推計されている(ここ)。これと各国の豊かさを示す1人当たりのGDP(PPP・購買力平価ベース)との相関図を描いた(DALYについては図録2050参照)。

 結果を見ると病気の絶対水準では豊かさと相関は特にないが、相対水準では豊かさと相関しているということを示す図が得られた。

 豊かな国かそうでないかによって、うつ病・躁うつ病による健康ロスの絶対水準(人口10万人当たりのロス年数)には差がない。うつ病・躁うつ病による健康被害が深刻な国としては、ブラジル、米国、インド、バングラデシュ、チリなどがあげられるが、豊かな国もあれば貧しい国もある。日本は豊かな国に属するが、この病気による健康ロスは最少の水準となっている。

 豊かな国でも米国やフィンランドのようにうつの多い国もあれば、日本やギリシャのようにうつの少ない国もある。逆に、貧しい国でも、バングラデシュやネパールのようにうつの多い国もあれば、ニジェールやコンゴ民主共和国のようにうつの少ない国もある。

 うつ病・躁うつ病がストレスと比例するとしても(器質的な要因が大きいという説もある)、考えてみれば、豊かさとストレスは必ずしも比例しないだろう。貧困に伴うストレス、例えば明日の食料が得られるかどうかというストレスがイヤな上司と付き合うストレスより軽微だとはいえないであろう。

 一方、全病気・傷害の寿命・健康ロスに占めるうつ病・躁うつ病の健康ロスの相対水準では、明らかに豊かさとの相関が認められる。すなわち、感染症や一般の病気については、経済が発展し、所得が向上するにつれて、病気の大きな要因である栄養不足が改善し、また上下水道など公衆衛生が発達し、医療へのアクセスも向上して、寿命・健康ロスが改善されて行くが、うつ病・躁うつ病については、経済発展に比例して改善されていかないため、病気・傷害全体に占めるウエイトは経済発展によってむしろ高まっていくのだと考えられる。

 なお、WHOが収集している健康関係のこうしたデータが、どこまで各国の実態を反映しているかについては検証の余地がないわけではないだろう。各国とも死因別死亡数に関するデータはある程度正確だと思われるが、死因として報告されない病気・傷害の程度(患者数、健康ロスの程度)がどこまで正確に把握されているかは疑問がないわけではない。

 うつ・躁うつ病だけでないメンタルヘルス障害全体の国際比較は図録2140参照。

(2009年3月25日収録)


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