うつ病に罹患しやすい職業は何なのであろうか。サンプルとなった病院に患者数をきく患者調査では厳密な傷病分類別の患者数は得られるが、性・年齢、住所以外の患者情報は調べられないのでこの点が分からない。同じ厚生労働省の調査であるが国民生活基礎調査では毎年の世帯票、所得票による調査に加えて、3年毎の大規模調査では貯蓄票、介護票とともに健康票による調査を行っており、国民の健康状態について調べられている。この健康票のなかには何の傷病で通院しているかを入院者を除く調査対象者に聞いている。そして「うつ病やその他のこころの病気」が症状の選択肢の一つに挙げられている。そこで、この設問の結果を対象者の職業とクロス集計すれば、冒頭の疑問にこたえることになる。当図録にはこの集計結果を掲げた。仕事をしていない者は職業がないが、それについても通学、家事、その他の区分で生活の状態をきいている。

 15歳以上の計では211.6万人、2.0%の通院率となっている。患者調査では入院を含めて、2014年に、うつ病・躁うつ病患者が111.6万人、統合失調症患者が77.3万人、神経症性障害・ストレス関連障害患者が72.4万人などとなっているので、ほぼ、同等の人数規模となっていることが分かる(各傷病の患者数は図録2105参照)。

 職業・状態別の結果では人数的にも、通院率でも、仕事なしの「その他」が67万人、3.9%と最多となっている。これは何もしていないからうつ病になるということではなく、うつ病なので何もできないという側面が強いと考えられる。

 次には、「家事」が52万人、2.6%と高水準である。これはうつ病。躁うつ病の患者数が中高年女性に多いことと整合的である(後段の図、および図録2150参照)。

 こうした前提を置いた上で、働いている者の職業別の患者数を見ると、実数では専門的・技術的職業従事者の20万人が最も多く、事務従事者、サービス職業従事者がこれに続いている。通院率では事務従事者の1.8%が最も高くなっており、運搬・清掃・包装等従事者、専門的・技術的職業従事者がこれに続いている。デスクワークが多いホワイトカラーでうつ病などこころの病が多いといえる。

 上に立つ立場の管理的職業従事者はストレスが多くこころの病が多いかというとそうでもない。もっともこころの病に罹ると管理職は継続できないから通院率が比較的低いのかも知れない。

 運搬・清掃・包装等従事者が多いのは、その職業だから多いというより、障害者が働く施設としての小規模作業所、共同作業所などの作業内容から想定されるようにこころの病の罹患者はそうした職業に就かざる得ないという側面が大きいと思われる。

 通院率が低い職業としては、輸送・機械運転従事者、建設・採掘従事者が1%未満となっているのが目立っている。こうした職業ではこころの病にかかりにくいのか、こころの病をもつ者はこうした職業を継続しがたいのか(ドライバーなどがそうであるように)は分からない。

 以下に、こころの病に関する男女年齢別の通院率データを掲げておいた。各年齢層で女性が男性を上回っている点が目立っている。通院率のピーク年齢は男性の場合40歳代前半、女性の場合30歳代後半となっている。なお、患者調査によるうつ病・躁うつ病の男女年齢別の患者数は図録2150を参照。


(2015年12月31日収録)


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