日本人の食塩(塩分)摂取量の推移を見ると、1950年代後半以降、長期的に低下傾向にある。2013年には一人一日当たり9.8gとはじめて10gを切った。1974年以前は塩分を多く含む食品の消費動向から推計した値であるが(注)、1950年代前半はしょうゆ、漬物、塩干魚の消費が増えていたため食塩摂取量は増えていたと思われる。

 男女年齢別の食塩摂取量は男の方が多く、また旧来型の食生活を保持している中高年の方が多い傾向にある。

 日本人の年齢構成は高齢化しているので、年齢構成要因からは食塩摂取量は増加していてもおかしくないが実際は全体として減っているので、年齢別に見れば全体傾向にもまして食塩摂取量は減少していると考えられる。

 なお、塩分摂取量が減っているのは食事量自体が減っているためで、食事に含まれる塩分は減っていないという意見も見られる。そこで、参考のためカロリー当りの塩分摂取量を計算して下図に示した。バブル影響期を除いて食事に含まれる塩分はやはり減っているようだ。


(注)1974年以前の食塩摂取量の推計の方法

 食品別のナトリウム摂取量が分かる最も古い1980年の国民栄養調査結果から食塩摂取量の多いみそ、醤油、漬物、塩干魚、小麦類のグラム当たりのナトリウムを算出する(下表参照)。なるべく古いデータを用いたのは最近は食品の低塩分化が進んでいるからである。小麦類を入れたのは小麦製品のパンやうどんに含まれる塩分はかなり多いからである。次に、みそ、漬物、小麦製品については国民栄養調査、醤油、塩干魚については食料需給表を用いて求めた1日1人あたり摂取量・供給量の毎年の動向に沿ってこれらの食品から摂取するナトリウム量の合計の1950〜1975年の時系列変化を算出する。これを1975年の食塩摂取量に接続してそれ以前の食塩摂取量を推計する。

塩分の多い食品(1980年)
  1人1日当たり
摂取量(g)
ナトリウム(mg) 1g当たり
ナトリウム(mg)
みそ 17.3 846.2 48.9
醤油 22.5 1,326.1 58.9
漬物 31.0 639.5 20.6
塩干魚 30.3 330.8 10.9
小麦類 91.8 351.2 3.8
その他食品 1,159.0 1,615.2 1.4
(注)塩干魚には塩蔵、生干し、乾物、佃煮、練り製品、魚肉ハム・ソーセージを含む。
(資料)国民栄養調査
塩分と血圧

 バブル経済の時期をはさんで1980年代後半から1990年代前半にかけて食塩摂取量の増加が一時期見られた。同時期に日本人の血圧はやはり一時的に上昇した(図録2175参照、なお以下には年齢調整平均血圧の推移の図のみ再掲)。食塩摂取量の増加が血圧の上昇をもたらしたと考えられる。バブル期のテンションの高さや贅沢志向が食生活にもあらわれ、これが血圧の上昇にも結びついていたのだとしたら、まさしくバブル狂想曲と呼ぶべき時代だったことが裏づけられよう(バブル期については図録2670参照)。


地域別の塩分摂取量

 地域別の食塩摂取量を下図に掲げた。かつて(1980年)は、東北・北関東は漬物などしょっぱいものが好きな地域であり食塩摂取量も全国より2割以上多かった。九州も関東に近く、逆にもっとも食塩摂取量が少ないのは近畿地方であった。ところが、この30年間に全体的に食塩摂取量が減少するとともにこうした地域差は大きく縮小した。最も食塩摂取量の多い東北でも10.9gと全国の11%超過であり、また南九州はかつてと異なり全国平均以下となっている。なお、都道府県別の食塩摂取量については図録7309参照。

 日本人の食塩摂取量の変化について栄養生理学の鳥居邦夫(2013)「太る脳、痩せる脳 」は次のように述べている。

「私たちの祖先は、長年のコメ(白米では6パーセントのタンパク質を含む)を中心とした低タンパク質の食事をしてきました。こうした環境のなかでは、食塩を摂るのは、大量のおコメを食べる工夫であり、エネルギーとして炭水化物を消費してさらに穀物から摂取した少ないタンパク質を体内で凝縮することによって、激しい労働に耐えて生き残ってきたのです。ですから厳しい労働から解放されると同時に、栄養環境、生活環境が改善されれば、しょっぱいものを食べたいという欲求が下がってくるのも容易に想像ができます。」(p.74〜75)

 なお、この点については図録0218も参照されたい。

(2012年6月5日収録、6月6日1974年以前推計値付加、6月7日推計方法、7月9日更新、2013年5月27日更新、9月30日鳥居引用追加、2014年6月23日更新、10月10日コメント改訂、2015年12月9日更新、2016年12月13日更新、「塩分の多い食事かどうか」追加)


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