1973年のオイルショックまでのいわゆる高度経済成長期には、生活が「向上している」ひとが「低下している」ひとを大きく上回っていた。

 安定成長期には、一転、「向上」と「低下」は逆転した。しかし、バブル景気の時期には両者が近づいた。

 1990年代の長期経済低迷(低成長期)には、10%台であった生活「低下」の人が2001年、2003年には3割台にまで増加した。

 2004年以降は景気回復を反映して「低下」は減少している。格差社会が深刻化している点が指摘されることが多いが、安定成長期であった1970年代〜80年代と比較して、「向上している」の比率はなお低いとはいえ、「低下している」の比率は2006年ではそう高い水準とは言えなくなっている。

 その後、2007年〜09年には「低下」が上昇に転じ、景気後退を国民意識の上で示すものとなっている。ただ、不況が深まっているといわれているのに、リーマンショック(08年9月)以前の2008年結果より09年結果の方が「低下」の比率が低いのは少し意外である。マスコミ論調とは異なるが、衆議院総選挙の年に当たり、結果として、一部の層を除いてセーフティネットが機能したためとも考えられる。

 これ以降、「低下」の減少が続き、基本的には経済がよくなっていることを示している。2011年の東日本大震災の影響はこの意識調査の時系列推移を見る限り感じられない。2013年には「低下」がさらに少なくなっているが、12年末で安倍政権が成立したことを受けた結果であり、アベノミクスの影響と見られる。2014年に「低下」が増えているのは、消費税の5%から8%への増税の影響と見られている。

 経済成長率がどれだけ国民の意識変化とリンクしているかよく分かる調査結果である(図録4400参照)。

 図には参考までに同じ調査の別の設問から生活満足度の推移を示した。これを見ると生活の向上感の「同じようなもの」とほぼパラレルに推移していることが分かる。生活の向上感の「同じようなもの」は、ほぼ「低下している訳ではない」、すなわち「やや上昇している」と感じていることを控えめに表現しているのだととらえることができる。また、現状の満足度が、昨年からの変化に大きく影響されていることがうかがえる。

(2006年10月調査結果が公表された2007年1月のコメント)
 なお、定点観測という性格もある社会実情データ図録では、毎年行われている「国民生活に関する世論調査」からこの質問への答を定期的にフォローしているが、格差社会をテーマにしているマスコミでは、むしろ、生活が苦しくなっている結果を掲載したいと考える。そこで同じ世論調査結果から各社(毎日、読売、中日、日経、産経等)が取り上げたのは、別の問に対する回答であり、「日ごろの生活で悩みや不安を感じている人が調査開始(58年)以来で過去最高の67.6%に上った。悩みや不安の内容では「老後の生活設計」が54%と最多で、特に50代では約7割と高く、定年を控えた団塊世代などの老後不安を浮き彫りにした。」(毎日)とされる。確かに、高齢化に伴いこうした結果となっていることは注目すべきだろう。同時に景気回復の国民生活への好影響も同時に取り上げるのがフェアだと思うが、政府広報のような記事は載せられないということなのだと思われる。

(2005年5月18日・2006年11月7日・2007年1月15日・2008年8月14日・8月18日更新、2009年10月28日更新、2011年1月4日更新、8月5日流用グラフからオリジナル・グラフに変更、2011年12月26日更新、2014年8月13日更新、8月25日更新、2015年8月24日更新、2016年8月30日更新)


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