国によって大きく異なる夫婦の役割意識

 「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という考え方は、日本の内閣府世論調査では、2009年まで縮小傾向にあり、反対の考え方より少なくなっていたが、2012年調査では、むしろ拡大に転じ、反対の考え方と再逆転し。これは東日本大震災の影響による一時的な動きだったのか、2014年には、再再度、反対が賛成を上回った(図録2410参照)。いずれにせよ、夫婦の役割意識については日本でも「ゆれ」が生じている。

 専業主婦が是か非かという点は、世界的にも考え方が分かれているため、国際共同意識調査のISSP調査でも取り上げられている。ここでは、この調査の結果をグラフにした。

 調査対象37カ国のうち、専業主婦賛成派の方が多い国は、13カ国であり、少ない国は、残りの24カ国である。世界的には、専業主婦反対派の国の方が多くなっていることが分かる。日本は、賛成超過の程度の順では20位であり、どちらかというと反対派の多い国となっている。

 賛成が多い国としては、フィリピン、ロシア、インド、中国といったアジアや東欧における非西欧的な国が多く、これらに続いて、韓国、台湾、日本など儒教国が登場する。儒教国は、従来は、もっと賛成派が多かったとみられるが、現在では、家族関係においても近代化が進み、反対派も多くなってきていると考えられる。内閣府世論調査によれば、1979年には、日本でも、賛成が72.5%と図のフィリピン並みの高さを示していたのである(図録2410参照)。

 一方、反対が賛成を大きく上回っている国としては、アイスランド、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンと北欧諸国が目立っている。カトリック諸国でもスペイン、フランスなどは、反対が多くなっている。なお、英米、ドイツなど、特に米国は中間的な位置にある。米国と日本はこの点については今や大差ない考え方となっているといってよい。

夫婦の役割意識が両極化する世界

 ISSP調査では2008年にも同じ設問で国際調査を行っている。下図には、両年次のデータを両方のデータがある国の変化とともに示した。非常に興味深いことに、夫婦の役割意識に関して、世界は両極化している。すなわち、専業主婦賛成派が多い国では、ますます、賛成超過の程度が高まり、反対派が多い国では、ますます、賛成超過の程度が低まる傾向にある。中間に位置する日本より賛成派が多い国で、賛成超過が減ったのは、トルコ、韓国のみであり、また、日本より賛成派が少ない国で、賛成超過が増えたのは、スロベニアとクロアチアのみである。日本では、少し揺らいでいるとはいえ、基本的には西欧の考え方に近づく傾向にあり、日本人は、それが世界的な潮流と信じているところがあるが、ここでの動きは、むしろ、世界的潮流はむしろ両極化であると考えざるを得ない。そして人口は非西欧の方の規模が圧倒しており、しかも増加率も高い。欧米的価値観はかつてのような絶大な影響力を失っているのではなかろうか。

 フランスの歴史人口学者・家族人類学者のエマニュエル・トッドはこう言っている。「人類学者からの助言を一つ付け加えます。自分たちの道徳観を地球全体に押し付けようとするアグレッシブな西洋人は、自分たちのほうがどうしようもなく少数派であり、量的に見れば父系制文化のほうが支配的だということを知ったほうがよろしい。私は個人的には、われわれの生活様式が気に入っているし、フランスで同性婚が認められたことをとても喜ばしいと思っています。しかしそうしたことを文明と外交の領域で主要なレファレンスにするのは、千年戦争をおっぱじめることであり、その戦争はわれわれにとって勝ち目のない戦争なのです」(「「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告」文春新書、p.114-5、インタビューは2014年6月)。


 図で取り上げている37カ国を賛成超過の大きい順に掲げると、フィリピン、ロシア、スロバキア、ラトビア、インド、チェコ、メキシコ、リトアニア、中国、トルコ、南アフリカ、ブルガリア、ポーランド、韓国、ベネズエラ、台湾、オーストリア、アルゼンチン、チリ、日本、スイス、米国、イスラエル、スロベニア、クロアチア、オーストラリア、英国、ドイツ、カナダ、アイルランド、フランス、スペイン、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、アイスランドである。

(2014年10月2日収録、12月29日更新、2015年8月8日トッド引用、変化図形式変更)


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