家族が一番大切だとする考え方が非常に強くなってきているが、これは、職場や親せき、そして地域(隣近所)とのつきあいが部分的、形式的となり、希薄化してきているのと逆比例している。核家族化と商品経済の全般的普及の中、マイホーム主義が強まるにつれて社会の絆が薄れていく状況が見てとれる。

 この図録は、当初、内閣府の平成19年国民生活白書に取材したものであったが、2008年値からは原資料から作成した。日本人の国民性調査はここを参照。

 図録1307では高齢者の人間関係の国際比較で、「日本の高齢者の場合、同居している夫婦、家族を越える人間関係が他国に比べ希薄である点が大きな特徴となっている。」とし、図録9502ではOECD諸国との比較で日本の場合社会的なつきあいが希薄である点を指摘したが、この図を見る限り、そうした状況はこの数十年かけて進行した事態であると理解されよう。

 同居家族にもっぱら期待がかかりすぎると期待はずれに終わったときのショックを緩和する機会が失われてしまうという危険があるように思われる。大切な人間関係自体がもっと多元的であってよいように考えられる。

 ここでこうした社会状況を個人意識の窓から覗いた文章を以下に掲げる。筆者の金原ひとみは、2004年「蛇にピアス」で第130回芥川賞を受賞した作家である。

「・・・身近な国であるにもかかわらず、仕事で招かれる事の多い欧米と比べ、隣国の韓国すら訪れたことがない。それは、隣人たちの顔もほとんど知らないままマンション暮らしをしている私の状況とも近い。そういう断絶に反して、私には男に強く依存する傾向がある。 夫や子どもという、触れられる所にいる人と、映画や小説やファッションなどのフィクションで、私の現実は作られている。こういう、ごく身近なものと遠いものだけが現実となるような状況を実感しているのは、私だけではないはずだ。2001年、新大久保駅で、酔っぱらいの転落事故があった。救助のため線路におりたのは、日本人カメラマンと韓国人留学生だった。落ちたのが自分の子どもでもない限り、私には出来ない事だと思った。しかし、こうして他人の危機に手を差し伸べられる人の存在を知ると、その存在が、どこかで心の支えになっているのを、不意に感じる瞬間がある。」(金原ひとみ「隣人」東京新聞「本音のコラム」2010年2月11日)

(2008年7月16日収録、2010年2月12日金原コラム引用、3月15日更新、2014年5月21日NHK調査結果更新、11月11日日本人の国民性調査更新)


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