国際共同調査であるISSP調査では、自分と同居している配偶者とのいずれの所得の方が多いかをきいている。これを男女別に集計し、女性の場合は自分を妻、配偶者を夫とし、男性の場合はその逆として計算すると夫婦のいずれの所得の方が多いかが分かる。図はこれを「夫の所得の方が多い」という回答率の多い国の順に並べた帯グラフである。なお、こうした調査の場合はいずれもそうであるが、法律上の婚姻関係が成立しているかどうかではなく事実上の夫婦関係にあるかで判断している点には留意が必要である。

 日本は、調査対象となった41カ国の中で「夫の所得の方が多い」の割合が88.3%と最も高かった点で目立っている。同割合が高かった6位までの国を挙げると、

1.日本 88.3%
2.トルコ 86.8%
3.オーストリア 75.1%
4.英国 73.6%
5.ドイツ 72.6%
6.オランダ 72.5%

となっている。7〜8位はチリ、フィリピンとなっており、同割合の高さと先進国、途上国の区分との相関はなさそうである。

 ただし、「夫の所得の方が多い」のうちの「妻無収入」の割合を同時に見てみると先進国と途上国では違いがある。すなわち、例えば、途上国のトルコやフィリピンでは妻無収入が多いため結果として夫の所得の方が多くなっているのに対し、先進国のオーストリアや英国では妻無収入の夫婦は余りないが働いている妻の所得が相対的に少ないため(労働時間が少ないか賃金水準が低いかによると考えられる)夫の所得の方が多くなっているのである。

 日本の場合は、妻無収入が25.3%とやや多く、途上国と先進国の中間の水準となっているのが特色である。すなわち日本の夫婦の特徴は、妻は働かないという途上国的な性格とフレキシブルな家族生活を確保するためパートタイム労働など妻が働き方を工夫する先進国的な性格とが合わさっている点にあるのではなかろうか。

 ロシア、チェコ、中国など社会主義国だったことのある国(あるいは現在もそうである国)では「夫の所得の方が多い」の割合が高い国はない。やはり国是として就業面での男女平等を実現しようとしてきた政策の影響は大きいといえる。この場合、妻無収入の割合は概して低い。

 「夫の所得の方が多い」の割合が最も低かったのはポルトガルの53.9%であり、リトアニアの54.9%であり、これにリトアニア、デンマークが続いていた。低い国としては旧社会主義国のほかに北欧諸国が目立つが同じ北欧諸国でもスウェーデンの割合はそう低くなく、ノルウェーはむしろ高い部類に属するので、北欧で特に所得面の男女平等が実現しているとも言い切れない。

 データを俯瞰すると、各国はすべて「夫の所得の方が多い」の割合が5割を上回っており、そうした意味で世界的に男性社会となっていることは疑い得ない。

 「同等」の割合が最も多いのはポルトガルの35.0%であり、リトアニアの32.0%、チェコの31.7%がこれに続いている。

  「妻の所得の方が多い」という回答の割合が最も高いのは、インドの27.7%であり、これに米国の24.9%が続いている。米国では妻の方が稼ぎがよい夫婦が4分の1を上回っているという点は米国社会を理解するうえで重要だろう。他方、日本の同割合は5.2%で世界最低である。日本は「同等」の割合も6.5%とメキシコを除くと世界最低である。

 ここで取り上げた夫婦の所得差と夫婦の家事分担の関係については図録2323参照。

 図に掲げた41カ国を「夫の所得の方が多い」割合の順に並べると日本、トルコ、オーストリア、英国、ドイツ、オランダ、チリ、フィリピン、スペイン、韓国、アイスランド、ノルウェー、スロバキア、米国、ハンガリー、カナダ、アルゼンチン、スウェーデン、メキシコ、ベルギー、台湾、ポーランド、南アフリカ、ブルガリア、インド、スイス、イスラエル、フランス、クロアチア、ロシア、中国、チェコ、ベネズエラ、アイルランド、ラトビア、オーストラリア、フィンランド、スロベニア、デンマーク、リトアニア、ポルトガルである。

(2015年10月2日収録、10月3日妻無収入データ追加、2017年2月26日ベルギー、ハンガリー、オランダ、ポルトガルの4カ国追加)


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