男女差別や男女格差がいろいろな指標で算出され日本はそうした差別や格差の大きい国とされることが多い。給与格差(3350参照)、家事分担(図録2323参照)、管理職女性比率(図録3140予定)、国会議員女性比率(図録5238)などである。

 こうした外形標準ではなく、男女どちらが幸福か(図録9484参照)、あるいはこの図録で取り上げるような「生まれ変わるとしたら男がいいか女がいいか」といった意識構造で女性の状況を判断することもできる。

 参考図にあるように日本の女性は戦後、この点に関する意識が180度転換した。女性は女に生まれ変わりたいと思うようになったのである(図録2475参照)。まことに大きな意識変化であり、社会や家族における女性の地位に大変化が生じなければこうした意識変化も生じていないだろうと考えられる。

 さて、この図録の主題はこの点に関する国際比較である。データは継続調査「日本人の国民性調査」を行っている統計数理研究所の吉野諒三による「環太平洋価値観国際比較調査」(2005〜2008年)である(データはここ)。

 女性の意識を比較してみると、すでにいずれの国でも戦後直後の日本のように「男に生まれ変わりたい」とする女性は多数派ではない。しかし日本人と同様従来は儒教道徳の影響が強かった中国人や韓国人はなお女性の意識では「男に生まれ変わりたい」も多く、これが社会の発展度を示しているとするとほぼ日本の高度成長期末期にあたる。中国人の中では香港の中国人はとりわけ意識変化の進捗度が高い。

 米国は女性の「女に生まれ変わりたい」が84.5%と非常に多い(すでに図録2482において女子高校生の意識でこの点にふれたが成人でも同じ訳である)。日本はこれに次いで高い比率となっており、オーストラリアを上回っている。ヨーロッパ諸国が比較対象に含まれていないので確定的なことはいえないが、日本の女性の地位はこの点に関しては世界の中でも高い方だといえよう。

 経済発展や社会の発展度などは中国よりまだ遅れていると考えられるインドでは中国人・韓国人より女性の「女に生まれ変わりたい」の比率は高い。この値は必ずしも社会の発展度をあらわす訳ではなく、民族意識の特殊性を反映している側面もあるのではないかと感じさせる結果である。

 民族意識の特殊性は男性の結果を見ても感じられる。日本では戦後一貫して男性は「女に生まれ変わりたい」が5%前後とかなりの少数派となっている。ところが、どこでも男性がこうした意識であるわけではない。上海、韓国、北京では男性の15%前後は「女に生まれ変わりたい」と考えているのである。逆に男が男であることに何の疑問を感じない日本人の方が特殊ともいえよう(もっとも米国人もそうだが)。

 こうした興味深い意識調査結果が何故もっと重視されないかを考えてみよう。マルクスの「社会の支配的な思想は支配階級の思想である」という考え方にならったものであろうがボーヴォワール女史の有名なセリフ「女は、もとから女なのではなく、女になるのだ」があり、この考え方が一般に普及していることから女性の意識は、男あるいは社会に影響されて形成されるという観点が重視され、その結果、幸福度やここでふれた意識による指標は軽視されている。確かに思想(人前では否定できないような考え方)にはそういう側面が無視できないが、幸福感や女に生まれ変わりたいといった真情吐露に近い意識までがそうであるとは限らないのではなかろうか。

 比較対象となっているのは環太平洋の10カ国。図に順に、上海、台湾、韓国、北京、香港、インド、シンガポール、オーストラリア、日本、米国である。

(2013年1月2日収録)


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