自殺者数が3万人レベルであることは知られているが、それでは、他殺による死亡者数は何人位なのであろうか。報道では親族殺人や見境のない殺人が多くなっている印象があるが、他殺による死亡は増加しているのであろうか。

 厚生労働省の人口動態統計によると、他殺による死亡者数は2013年に341人と1日1人をついに下回り、2003年の705人の半分以下となっている。また他殺者数は自殺者数の70分の1のレベルとなっている。それでも1日に約1人が殺されているというのは重い事実である。2014年は他殺者数が対前年で増となったが、2015年は再び313人に減少し過去最少を更新した。

 殺人事件は親族等や面識のある人間同士で起こるケースがほとんどである(図録2793参照)。従って、他殺が半減しているということは、そうした親しい者同士の関係が平和になってきているということであり、社会の改善傾向を示すものといえる。

 なお、殺人事件は他殺数より多い。警察庁の「平成22年の犯罪情勢」によると2010年に殺人事件は認知件数で1,067件、検挙件数で1,029件起こっている。しかし殺人事件の被害者のうち重軽傷者を除いて死者のみでは465人となっており、殺人事件の被害者が総て死亡に至るわけではないことが分かる。下図に人口動態統計の他殺数と警察統計の殺人事件被害(死亡)者数の動きを比較した。微妙にずれているが、ほぼ平行して推移していることが分かる。ただし1965〜90年にだんだんと乖離幅が縮小してきている理由は分からない(理論的には両者の差分をなす傷害致死の犠牲者の動きを見てみても特段に減っているわけではない)。


 戦後を通じた長期の動向を見ると、他殺数は、自殺数とは対照的に減少傾向が目立っている。1950年の2,119人から8割以上の減少である。

 戦後1960年代前半までは、ほぼ、失業率の動きと平行して増減しており、景気の動きと連動していた。しかし、1973年のオイルショックの後の不況時には他殺数はほとんど増加することがなく、その後も、景気との連動は基本的に認められなくなった。1980年代後半から1997年にかけてのバブル景気とバブル崩壊の時期には若干失業率の変動との連動が、若干認められたが、その後は、失業率の上昇とは無関係に他殺数は減り続けている。

 日本の他殺率が世界の中でも最も低い水準である点については図録2775参照。

 人口10万人当たりの他殺率の19世紀からの長期推移を主要国と比較したデータを以下に掲げる。日本の他殺の水準をこれほど明確にあらわしているグラフもないだろう(図録2776aに掲げたものと同じ)。日本における他殺率水準は戦後ばかりでなく、戦前から戦後にかけても低下傾向をたどったことが分かる。戦前は戦後直後にもまして物騒な国だったのだ。他国との比較では、戦前から戦後直後の段階では、ほぼ、イタリアと同程度の水準であり、英国やドイツなど西欧主要国と比べれば他殺率が高い、殺人の多い国であった。戦後の日本は、上掲の通り、他殺数が激減し、他殺率もイタリアを大きく下回り、ドイツや英国をも下回った結果、世界の中でも最も殺人の少ない安全な国となっている。


(2007年4月13日収録、2008年3月25日・6月4日更新、2009年9月28日更新、2010年6月4日更新、2011年9月1日更新、2012年3月16日警察庁犯罪情勢データ更新、6月6日更新、2013年6月25日更新、9月21日確報による更新、10月8日長期推移を加える、10月10日警察統計長期化、2014年6月14日更新、10月16日主要国の他殺率長期推移グラフを追加、2015年2月10日2013年確報、6月5日更新、2016年5月24日更新)


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