世界価値観調査は、世界数十カ国の大学・研究機関の研究グループが参加し、共通の調査票で各国国民の意識を調べ相互に比較している国際調査であり、1981年から、また1990年からは5年ごとの周回で行われている。各国毎に全国の18歳以上の男女1,000〜2,000サンプル程度の回収を基本とした個人単位の意識調査である。なお、ここで取り上げている2010年期は2010〜2014年の調査であるが、英国、フランスなどこれまでの常連国が含まれていない。これは、世界価値観調査と同じ調査票で実施されている欧州価値観調査が直近の2008〜09年に実施済だからと考えられる。そこで、今回は、欧州価値観調査2008〜09年の結果から6カ国を繰り入れてデータを掲げることとした(ただしイタリアは欧州価値観調査で同性愛の項目が設問にないため未掲載)。

 まず、世界55カ国の同性愛の許容度についてのグラフを掲げた。ここで許容度は、「間違っている(認めない)」から「正しい(認める)」まで1から10のいずれかを選んでもらった結果の平均値である。検索のため同性愛の同義語を並べておくと、英語ではホモセクシュアル(homosexual)。ホモという略語には侮蔑のニュアンスが含まれると感じている同性愛者も少なからず存在する。男性同性愛者をゲイ(Gay)、女性同性愛者をレズビアン(Lesbian)とも呼ぶことが多い。

 最も同性愛への許容度の高い国はアイスランドであり、スウェーデン、オランダがこれに続いている。最も許容度が低い国はアルメニアであり、許容度1.1、すなわちほとんど全員が1(全く間違っている)と回答している。(実際にオランダなどで同性間の性行為が多い点については、図録2263参照。)

 概して、許容度の高い順に、プロテスタント系ヨーロッパ→カソリック系ヨーロッパ→中南米・アジア→イスラム国となっているようである。米国は保守的キリスト教の影響やヒスパニック系人口のせいか、それほど許容度は高くない。

 実際の回答分布を見てみると、スウェーデンでは、「全く正しい」(10)と答えたものが62.7%と6割以上を占めており、「全く間違っている」(1)は7.9%である。日本は、「全く間違っている」(1)が21.5%と最も多いが、「全く正しい」(10)も14.4%おり、5番と答えたものも結構いる。米国は平均点では日本に近くなっているが回答分布を見ると「全く間違っている」(1)と「全く正しい」(10)がそれぞれ24.9%、22.2%と両方とも日本より多くなっており、国論が2分されている状況がうかがえる(図録8807参照)。韓国では、「全く間違っている」(1)が42.5%と4割以上おり、「全く正しい」(10)は2.4%と少数派である。

 次の図では、主要国について、1981年期からの推移を示した。いずれの国でも「全く間違っている」(1)が減少する傾向にある。それでも、まだまだ、「全く間違っている」(1)の割合の高い韓国やロシアとむしろ「全く正しい」(10)が多数派になっているスウェーデンとの間で差が大きいことも見て取れる。先進国全般で同性愛への許容度が高まっているとはいえ、部分的には、逆転現象も起きている。2005年期から2010年期にかけてフランスでは「全く間違っている」(1)が増え、「全く正しい」(10)が減っているし、ロシアでも「全く正しい」(10)が減っている。ロシアの動きについては図録9458を参照されたい。米国の動きは図録8807も参照されたい。

 日本において同性愛へ許容度が時系列的に増している点については、図録2782も参照のこと。また、同性愛が自然に反した行為だという根強い偏見に対しては、異性愛自体が生殖そのものを目的としておらず、ある意味では自然に反しているのであり、同性愛だけやり玉にあげるのは間違いだと言わなければならない。同性愛は異性愛が非生殖的であるからこそ異性愛に伴って生まれたのであり、こうした性格の同性愛が不自然とはいえないのは、飛ばないニワトリに羽根があるからといってそれが不自然とはいえないのと同じようなものである。この点については図録2263のコラム「人間はどうしてホモ・セクスアリスになったか」でふれた。

 最初の図の対象国は許容度の高い順からアイスランド、スウェーデン、オランダ、スペイン、オーストラリア、フィンランド、ウルグアイ、ニュージーランド、ドイツ、ベルギー、チリ、フランス、米国、英国、スロベニア、日本、台湾、フィリピン、メキシコ、キプロス、ペルー、ポーランド、シンガポール、コロンビア、韓国、エストニア、レバノン、エクアドル、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、マレーシア、ルーマニア、アルジェリア、カザフスタン、中国、キルギス、リビア、ナイジェリア、ジンバブエ、トリニダードトバゴ、イラク、トルコ、ウズベキスタン、パキスタン、パレスチナ、ルワンダ、イエメン、ガーナ、カタール、ヨルダン、モロッコ、アゼルバイジャン、チュニジア、アルメニアである。

(2007年6月29日収録、2012年12月19日倫理事項に関する日本の位置のコメント追加、2013年1月9・10日更新、3月17日詩の引用、2014年5月12日更新、同性愛以外の項目の許容度についてのデータ・コメントを新設の図録2787へ移管)


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