2014年の1月にフランスのオランド大統領(59)が女優(41)との密会を週刊誌に報道され、事実婚のパートナー(48)が入院する騒ぎになった。大統領は、社会党の元大統領候補(女性)(60)との関係を2007年に解消し、元政治記者だった現パートナーに乗り換えている。恋多き大統領の支持率は既に20%と低迷しており、野党からは「スキャンダルでもこれ以上落ちようがない」と皮肉られているとのこと(毎日新聞2014.1.15)。

 大統領は私的なこととして記者会見でのコメントを拒んでいるが、Pew Reserch Center のWeb記事によると「フランスの世論調査(1月10〜11日)は77%が個人的なことであり、たまたま大統領が関係者なだけとし、23%が公的関心事としている。」フランス人はある意味大統領を支持しているのである。「浮気で非難されたい政治家はいないが、フランスのリーダーであるオランド氏はほとんどの国の政治家より有利な立場にある。夫婦間の不祥事に世界一関心のないのがフランス人だからだ。」(2014.1.14, by Richard Wike)

 ここでは、この記事で証拠として掲げられた国際世論調査の結果を図示した。

 確かに、不倫・浮気(既婚者の情事)を道徳的に許されないとするフランス人は47%と世界で唯一5割を切っている点で目立っている。道徳の問題ではないとするが40%、また、何と道徳的に許されるとする者が12%もいるのである。同記事によると、「許されない」の男女別割合は男性が45%、女性が50%であり、「基本的にはジェンダー・ギャップはない」とされている。

 世界各国の「許されない」の割合を見ると、フランスのほか、ドイツ、イタリア、スペインなど西欧で低く、トルコ、エジプト、インドネシアなどイスラム圏で高いのが目立っている(同割合の最も高い9カ国はすべてイスラム国)。

 米国は、上から25位と、西欧と異なり、浮気の許容度は低い。

 日本は意外にも許容度が対象国39カ国の中で9位と比較的寛容である。道徳的に許されるの割合では、チェコが17%と最も高いが、2番目に高いのは、チリの13%、そして3位はフランスと並び日本、ベネズエラの12%である。東アジアの儒教圏の中では、韓国が24位と最も許容度が低く、中国は15位と中間的である。

 なお、フランスは、浮気には寛容だとしても、案外、浮気は少なく、奔放な恋愛の国でもない点については、図録2263、図録2302参照。また、フランスは、結局のところ、男が女より幸せに暮らしている点で世界一であることについては図録2473参照。

 対象40カ国は許容度の高い順に、フランス、ドイツ、インド、イタリア、スペイン、南アフリカ、チェコ、チリ、セネガル、日本、ロシア、ポーランド、アルゼンチン、イスラエル、メキシコ、中国、英国、カナダ、ベネズエラ、ナイジェリア、オーストラリア、ギリシャ、ウガンダ、ケニア、韓国、ブラジル、米国、ボリビア、ガーナ、エルサルバドル、フィリピン、チュニジア、マレーシア、パキスタン、レバノン、インドネシア、エジプト、ヨルダン、トルコ、パレスチナである。

【コラム】政治家の愛人問題を報道するか

 一般国民のおける男女間の不倫の許容度の問題とは別に、政治家の愛人問題を報道するかについては国や時代によって様々である。政治家の政治的な能力と男女関係は無関係と考えるか、こうした分野であっても政治家の道徳心がリーダーとしての素質に関わると考えるかは立場によって異なる微妙な問題だからである。

 2005年に当時の大統領だったサルコジのセシリア夫人が突如ニューヨークに愛人と駆け落ちした時もフランスのメディアはこれは黙殺した。クリントン元米国大統領の性スキャンダルの時も世界中が大バッシングするなかフランス人だけはクリントンに同情した。このように政治家の私生活に立ち入らないことを伝統とするフランスのメディアで、今回の報道は異例であり、専門家からは「伝統の終わり」との声も出ているそうである(産経新聞2014.1.14)。

 日本では政治家の愛人問題についてのマスコミの態度は、かつては寛容、不介入の立場だったが、今では、不寛容、積極報道の立場に変わっている。自民党の実力者大野伴睦に13人の愛人(死ぬまで面倒を見ていたので元愛人ではない)がいたことをはじめ、従来、政界の女性関係の裏事情を書かなかったマスコミが、むしろ、積極的に女性問題を報じるようになった転換点は、「宇野宗佑首相失脚事件」(1989年8月)だったらしい。元毎日新聞記者の政治ジャーナリスト岩見隆夫が「近聞遠見」という連載記事の中で次のように回顧している(毎日新聞2013.12.7)。

「事件の起きる前、毎日新聞の平岡敏男社長は「一流紙はヘソから下のことは書くな」と厳命を下していた。新聞の品位であり、秩序維持への体制的対応だったかもしれない。私は平岡のもとで秘書室長を務めたからよく知っている。ところが、ある日、スター記者の一人が間接情報をもとに、女性問題をどうしても書くと言ってきかない。社長は直ちに辞表の提出を求め、受理された。それに触発されたのかどうか、宇野事件が突発する。

 こともあろうに、「サンデー毎日」に現職首相・宇野と懇ろな神楽坂芸者が告発したのだから、前代未聞の大衝撃だった。仲介した毎日記者によると、「寝物語では、金丸信(当時のキングメーカー)のことをあんなにボロクソ言っていたのに、いざ、自分(宇野)が担がれそうになると、手のひらを返したように褒めそやす。そんな人を総理にしてもいいの」というのが、訴える気になったきっかけ、と言ったという。怪しいものだ、と私は思っていたが、案の定、金の不満が出てきた。「サンデー」の鳥越俊太郎編集長が編集首脳会議に呼ばれ、もちろん中止を求められたが、「すでに輪転機が回っている」と抗弁した。大きな転機だった。鳥越はまもなく社を去り、政界には女性ビクビク症候群が蔓延し、女性告発ばやりという奇妙な風潮が加速したのだ。」

 日本人の不倫への許容度は、本文で触れた通り、そう低くはないのであるが、それが意外に感じられるのは、政治家をはじめとするリーダー層の女性問題をいちいち報じるようになったマスコミの姿勢によって日本人が不倫に不寛容な国民だと自分を錯覚しているせいにすぎないのかもしれない。

 なお、岩見隆夫は政治記者時代に新機軸として硬派記事から軟派記事への転換を打ち出したそうである。「2000年、文芸春秋が企画した、生前の著者自身による「私の死亡記事」の中で、当時64歳の岩見さんは、自分についてこう書いている。「『ゴシップこそ新聞の原点』が口癖で、軟派的な政治記事を編み出すのに腐心した……」新聞社では政治・経済を硬派、事件や街ダネなどを軟派と呼ぶ。社会部から31歳で政治部に移った岩見さんは、無味乾燥な政治記事に新風を吹き込むことに情熱を注いだ。」(毎日新聞2014.1.19追悼記事)だとすれば、上で岩見は節度がないと批判的に記しているが、「ヘソの下」記事の氾濫は、自らが主導した軟派転換の行き着く先だったと見れないこともなかろう。

(2014年1月17日収録、1月19日岩見隆夫追悼記事追加、4月24日インド追加)


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