犯罪の種類によって犯人と被害者との関係がどのように違っているかを図録化した。

 データは犯罪不成立、訴訟・処罰に至らないような事件を除いた検挙件数について、被害者と被疑者との関係別に構成比をみたものである。

 殺人と傷害は、親族及びその他の面識のある者に対する犯罪である比率が高い。特に殺人は5割以上が親族に対して犯されている。殺人が親族間で多くなるのは歴史的趨勢であり、これをヴェルッコの法則というらしい(ページ末コラム参照)。

 一方、財産犯及び性犯罪は、面識のない者に対して犯される場合が多い。ただし、財産犯のうち恐喝、性犯罪のうち強姦については、面識のある者に対して行われる比率が高い。

 下は、殺人事件の被害者のさらに細かい内訳を示すグラフ、および殺人事件の2割弱は、親族の中でも配偶者によるものであることを示したグラフである。親族の中では配偶者(内縁を含む)が最も多く、父母と子がこれに続いている。また、一般の殺人事件が大きく減る中で配偶者間の殺人事件はそれほど減っておらず、配偶者間の殺人事件の割合は上昇傾向にあることが分る。配偶者による殺人の中では夫が加害者の場合の方が多いが、妻が加害者の割合も年によって異なるが35〜40%程度と少なくはない。

 欧米の他殺における被害者と加害者との関係については図録2793cを参照。




【コラム】ヴェルッコの法則

 殺人事件が割合的に親族間で多くなったのは歴史的には近年のことらしい。これをヴェルッコの法則という。以下に、この点についてのスティーブン・ピンカーの解説を聞こう(「暴力の人類史」青土社(原著2011年)上、p.134〜136)

 (全体的な減少とならぶヨーロッパの殺人発生率についての)もう一つの歴史的変化は、殺人のなかでも自分と縁戚関係にない者を殺害するケースの方が、子どもや親、配偶者、きょうだいを殺害するケースよりもはるかに急激に減少したことだ。これは殺人の統計において一般的に見られるパターンで、ヴェルッコの法則とも呼ばれる。男性同士の暴力事件の発生率は、女性や親族を含む近縁間の暴力事件の発生率に比べて、時期や場所による変化が大きいというのだ。マーティン・デイリーとマーゴ・ウィルソンはこのことについて、こう説明する。家族のあいだには深く根差した利害の葛藤(それは血縁同士に見られる遺伝的重複のパターンに内在する)があり、家族同士がお互いに腹を立てる割合は時期や場所にかかわらず一定している。これに対して、男性の知人同士のマッチョな暴力を激化させるのは支配権争いで、それは環境による影響を受けやすいというのである。

(2008年1月28日収録、2015年2月13日更新、被害者の内訳と配偶者間の殺人事件グラフ追加、2016年8月10日コラム)


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