日本における犯罪別の加害者と被害者の関係を図録2793で見た。殺人事件では、夫婦間や親類関係である場合が多く、面識なしの事件は少ないのであるが、海外ではどうなのであろうか。これをうかがい知ることのできる他殺に関するデータを掲げた。ここで他殺とは死因統計上の概念であり、殺人や傷害致死など他人の意図にもとづく死(戦死を除く)を指す。他殺(homicide)は、自分の意図にもとづく死である自殺(suicide)と対になる概念である。ただし死亡診断を行う医師の報告にもとづく死因統計では、加害者に関する情報は欠けているので、ここでのデータは各国の警察統計によるものと考えられる。

 男女別の他殺死亡者の構成比を欧州について見ると、男の場合は妻・親族・知り合いが61%と多いが、他人も31%を占めているのに対して、女の場合は、夫(元夫を含む)が43%と非常に多く、他人は13%と余り多くない。

 米国の場合は夫婦や夫婦同然の親しいパートナーによる他殺死亡者が男の場合は10%以下であるのに対して、女の場合は40%を超えているのが目立っている。

 つまり、欧米では、男の場合は、家庭だけでなく、職場や街路など家庭外で殺されることが多いのに対して、女の場合は、家庭の中でのいさかいから殺される場合が非常に多いのだといえる。

 他殺総数に占める割合ではなく実数で夫婦の違いを見てみよう。表には、欧州各国において、夫婦(事実上の夫婦を含む)の間の他殺のうち、犠牲者が夫の場合と妻の場合の数を対照させている。妻が犠牲になる割合は、国によって50%から100%と異なるが、平均して76.5%と4分の3を占めている。日本の場合は、他殺の死亡者数ではなく殺人事件の検挙件数(被害者が死亡しているとは限らない)のデータしか得られないが、妻が被害者になる割合は全体の約6割強と欧州よりは少なくなっている。

欧州各国の夫婦間他殺死亡者数(2010〜13年の最新データ)
  夫が被害者(人) 妻が被害者(人) 妻が被害者の割合(%) 年次
スイス 0 10 100.0 2012
スペイン 4 36 90.0 2013
イタリア 7 57 89.1 2012
フィンランド 3 16 84.2 2011
英国 17 88 83.8 2011
ドイツ 60 176 74.6 2012
カナダ 15 37 71.2 2010
リトアニア 11 18 62.1 2013
オーストリア 17 26 60.5 2012
ハンガリー 12 12 50.0 2011
以上10カ国計 146 476 76.5  
(参考)日本 62件 101件 62.0 2010〜13年平均
(注)合計10人以上の国のみ。妻の割合の高い順。日本の場合は他殺死亡者数ではなく検挙件数(図録2793参照)。
(資料)UNECE Statistical Database, compiled from national official sources(2015.2.19ダウンロード)、日本は警察庁「平成25年の犯罪情勢」

(2015年2月21日収録)


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