クルマの通らない高速道路に象徴される国税と補助金(地方交付税を含む)という財政を通じた地域再配分政策の失敗の克服が課題となっている。バブル以後、1990年代に繰り返された公共事業重視の景気対策が成長率の相対的に低い地方圏を重視して行われた結果、ただでさえ有効性の低下していた景気刺激がなお一層非効率的となっていたことが明らかになっている。また地方自治体の自立を阻む地方財政制度も問題とされている。こうした地域間財政移転に関わる制度疲労の背景には、社会保障政策と国土政策・産業政策の境界未分離があると思われる。

 年金、医療保険、雇用保険など社会保障の給付と負担の関係については、世代間の公平性について多くの議論が行われているが、地域間移転についても近年高齢化が進むなかでウェイトが拡大している。

 上の図は、家計の社会保障の給付と負担の率(県民所得に占める割合)の推移を地方圏の代表として大分県、大都市の代表として愛知県について示したものである。負担率は徐々に上昇する傾向であるがその動きは地方圏と大都市圏とで差がない。他方、給付率は大都市圏ではほぼ横這いであるのに対して地方圏では負担率以上の上昇が起こっている。こうした動きの結果、大都市圏から地方圏への所得移転が拡大している。大分県の例では、今や県民所得の約10%は負担と給付の差から生じている。

 こうした状況は高齢化や人口減少が地方圏でより深刻なことから当然の事態であるが、同じことを無闇に国土政策や産業政策で実現しようとすることから問題が生じると言えよう。ある財政学者が言うように無駄な公共事業を行うぐらいなら、同じ金額を現金で個人に配った方がましなのである(土居丈朗「財政学から見た日本経済 」光文社新書、2002年)。

 なお、所得再配分調査により、地域ブロック間の所得再配分の状況を図録4669に掲げた。


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