労働時間と健康状態の関係については、長時間労働が健康を悪化させるという側面と健康が良くない人は短時間労働を選ぶという側面とがある。2011年の総務省統計局の社会生活基本調査では、週間就業時間と健康状態との関係を特別集計で明らかにしており、これをグラフで示した。

 雇用者(雇われている者)のみの集計で見ると、男計と女計では「健康状態の良くない」(「あまり良くない」+「悪い」)の割合は、男が9.2%で女の7.3%を上回っている。

 8時間労働を週5日という働き方では週間就業時間は40時間となる。これに残業週9時間を追加した49時間より多い場合は長時間労働と見なすことができる。国際統計でも49時間を区切りとしている(長時間労働の比率の国際比較は図録3130参照)。

 長時間労働の影響は、男では、59時間以下では影響がないが、60時間以上では、「健康状態の良くない」雇用者比率が13.6%と大きく跳ね上がる。女では、「49〜59時間」から増加がはじまり、「60時間以上」では12.2%とかなりの高さとなる。この場合、健康状態の良くない者が敢えて長時間労働を選んでいるとは考えられないので、長時間労働の影響で健康状態が良くなくなっていると考えざるを得ない。

 このように、長時間労働は労働者の健康状態に明かな影響があるといえる。

 欧米と比較して長時間労働が多いのは、日本人が東アジア人共通の疲れにくい国民性をもつため、長時間労働が無意識のうちに一般化しやすいからではないかと考えられる(図録3277)。職場での過労死やメンタルヘルスの問題は、長時間労働そのものではなく、こうした働き方に対する一部の労働者の不適応が見過ごされがちなので発生する問題と捉えた方が適切である。従って、図のデータを見て、60時間未満であれば、長時間労働は健康上問題なしと考えるのは、やはり、危険なことだといえよう(実際、この図録に関し、健康上問題なしと考えられて60時間未満の長時間労働が当然視されることへの懸念をつぶやくツイッターを見かけた)。

 次に、健康状態の良くない者は、短時間労働を選ぶかという点については、男の雇用者については、女性雇用者と比較して人数的には余り多くはないが34時間未満では、健康状態が良くないとする比率が10%以上と高くなっており、この場合、短時間労働だから健康が良くなくなることは考えられない以上、やはり、高齢などの要因で健康状態の良くない者は短時間労働を選ぶという影響があると考えられる。

 一方、女性雇用者については、パートターマーなど短時間労働に従事する者は多いが、この層で健康状態が良くない者は多くはなく、健康状態が悪いから短時間労働を選んでいる人は少ないといえよう。

(2013年6月19日収録、8月9日コメント追加)


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