○概況

 管理職の女性比率が「女性の活躍」の代表的指標として取り上げられることが多くなっている。ここでは日本の管理職の人的割合と女性比率の推移について見てみよう。

 国勢調査の職業別集計によると、管理職の割合は、1980年のピークには4.7%であったが、30年後の2010年には2.4%にまで下がっている。その後、2015年にはやや持ち直して2.7%となっている。管理職のうちの女性比率は戦後まもなくには3%未満だったが、2015年には15.9%まで一貫して上昇している。

 ここで管理職とは、職業分類の管理的職業従事者を指している。管理的職業従事者の定義は、日本標準職業分類によれば、「事業経営方針の決定・経営方針に基づく執行計画の樹立・作業の監督・統制など、経営体の全般又は課(課相当を含む)以上の内部組織の経営・管理に従事するものをいう。国・地方公共団体の各機関の公選された公務員も含まれる。」となっている。国会や自治体議会の議員を除けば、会社やその他の団体の役員や課長以上ということであり、だいたい、一般的な通念と同じと考えられる。

 なお、ここでは、管理職割合を雇用者に占める割合ではなく自営業者を含む就業者全体に占める割合で取っている。参考までに雇用者(役員を含む)における管理職割合を算出すると2010年に2.7%であった。

○管理職割合の推移

 戦後日本の高度成長の中で、1次産業のシェアが縮小し、企業の経済活動がさかんになるにつれて、管理職の活躍分野は拡がっていった。特に、1960年代の躍進は目覚ましく、職業中分類で見ても1960年代後半には最も増加率が大きい職業区分だった(図録3500)。図の管理職割合の推移を見ても、1960年代は特に上昇幅が大きかった時代となっている。その後、1970年代も上昇を続け、1980年には4.7%のピークをしるした。

 ところが、1980年代以降は、管理職割合は、長期的な低下傾向を示すようになった。2005年にはピーク時の約半分である2.4%にまで低下しているのである。こうした長期傾向には以下のような要因が働いたと考えられる。

a.ハイテク化、コンピューター化、IT化、ネット化などの管理技術の向上によって管理が合理化・効率化し、管理職の必要人数が縮小

b.管理職が専門分化するピラミッド型の大企業組織の時代から職業が多様化し専門職が横につながる自律分散的な社会システムへの移行

 1980年以降の動きを見ると、時期的には、1980〜85年と1995〜2005年に2つの時期に特に管理職割合が大きく低下した。前者は「ハイテク・ブームの時代」、後者は「リストラの時代」に当たっており、それぞれ、前者はa、後者はbの側面が強かったのではないかと推測できる。

 リストラの時代には、折からの「失われた10年」と呼ばれた長期経済低迷の中で、会社に長く勤めれば、管理職に自動的に昇進し、給与水準も大きく上昇するというパターンの見直しが図られ(賃金カーブのフラット化については図録3340参照)、必要性の高くない管理職も大きく減らされたのであろう。2015年に管理職比率が再びやや上昇したのはリストラからの反動とも見られる。

 リストラの時代に大きく管理職割合が低下する直前の1995年と最近2015年の年齢別の管理職割合の図を同時に掲げた。男性について、1995年には、年齢とともに管理職の割合は高まり、50代後半には11.8%と1割を越えていた。ところが、2015年には50代後半でも6.8%と半分近くに低下している。

 2015年の管理職割合の対1995年倍率を男性の年齢別に算出して見ると、特に中高年中心に管理職割合が下がったのではなく、若い世代も下がっており、リストラは絶対数ではもともと多い団塊の世代が対象として大きかったであろうが、割合的には、年齢層に関わりなく進められたのではないかと思われる。

○管理職の女性比率の推移

 次に、女性管理職の躍進の状況について見てみよう。

 まず、女性就業者に占める管理職割合であるが、1950年には0.1%とほとんどいなかったのであるが、その後、めざましく上昇し、1995年に1%にまで達している。同じ年に男性は6.2%だったので、女性が管理職につく確率は男性の6分の1だった訳である。管理職の女性比率も9.8%とほぼ1割に達している。

 その後、管理職割合の低下の一般傾向の中で女性の管理職割合もやや低下した。しかし、男性ほどの低下ではなかったので、管理職の女性比率は上昇を続け、2015年には15.9%という過去最大の値となっている。

 つまり、女性の管理職が増えているかという点については、女性就業者の1%というピークよりは高くなっていないので、多くなっていないともいえるし、管理職の中での女性比率はなお継続して上昇しているので、多くなっているともいえる。

 年齢別の管理職割合の図を見れば、男性よりは女性の方が管理職割合の低下が各年代で小さいことが分かるであろう。もちろん、それでも男女のギャップはなお大きいことも分かる。

 次に、管理職に占める女性比率を年齢別に見ると、各年代で女性比率が高くなっていることが分かる。

 年齢パターンでは、1995年には、50代後半まで年齢の高い管理職ほど女性比率の方が低くなるという「ガラスの天井」パターンが顕著だった。すなわち、課長から部長、事業部長、役員など高い年齢でつく管理職については、なお、女性が直面する昇進の壁(いわゆるガラスの天井)は打ち破りがたいことを示していたと考えられる。2010年でも同様のパターンがなお継続されていたようだ。しかし、2015年には、ほぼフラットに変化しており、ガラスの天井はやや破られている可能性を示している。

 なお、60代以上の上昇については、定年後の年齢となり雇用者は減るので、自営業に近い会社の女性役員が死別した夫との対比で多くなる影響ではないかと思われる。

【コラム】広がる女性登用開示

 大手企業の間で、女性の登用実績を公表する動きが広がってきたことを毎日新聞は報じている(2014年3月4日)。登用実績の指標としては、本文でふれた管理職の女性比率が多く使われている。以下、この記事について、紹介しよう。

 東京証券取引所によると、役員や管理職に占める女性の比率をこの1年間で開示した一部上場企業は約370社と、1年前(約180社)の2倍に増えた。

なでしこ銘柄一覧
2012年度 2013年度
17社 26社
マルハニチロホールディングス、積水ハウス、アサヒグループホールディングス、東レ、花王、住友ゴム工業、旭硝子、大同特殊鋼、住友金属鉱山、ダイキン工業、日産自動車、ニコン、東京急行電鉄、KDDI、豊田通商、ファーストリテイリング、三井住友フィナンシャルグループ 国際石油開発帝石、カルビー、東レ、武田薬品工業、ブリヂストン、旭硝子、JFEホールディングス(HD)、住友金属鉱山、LIXILグループ、IHI、日立製作所、日産自動車、ニコン、トッパン・フォームズ、大阪ガス、東京急行電鉄、日本郵船、ANA HD、KDDI、三菱商事、ローソン、三菱UFJフィナンシャル・グループ、野村HD、東京海上HD、オリックス、ツクイ
(資料)経済産業省、産経新聞

 また、東証と経済産業省は、2013年、女性の登用に積極的な企業を「なでしこ銘柄」と認め、東レ、花王など17社を選んだ。2回目となる2014年には、日産自動車、大阪ガスなど26社を選定した。

 東証によると、選に漏れた企業から「どうしたら選ばれるのか」などの質問が寄せられた。選考では女性の役員・管理職の比率を重視し、男性社員の育児休業取得率などを基準に業種ごとに1社ずつを選んでいる。

 なでしこ銘柄の対象は、東証一部上場企業であり、株主のお金がどれほどの利益を生み出しているかを示す「株主資本利益率」(ROE)が業種平均以上であることも要件となっている。「女性が働きやすい企業の方が社員の生産性が高い」との指摘もあり、魅力的な投資対象として紹介し、他の企業にも女性の活用を促す狙いがある。

 日本では、企業の役員など指導的立場にある女性の比率が約1割と、欧米諸国の3〜4割に比べ低い水準にとどまる。そこで政府(安倍政権)は「女性の活躍」を成長戦略の中核と位置付け、2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%に引き上げる目標を掲げている(図録3140参照)。

 そのため、これまでに見た企業の動きを政府は加速させようとしている。「女性の活躍」政策の一環として、企業に女性登用の数値目標を義務付ける法案を2014年秋の臨時国会に提出することになっているのである。この法案は、政府が数値目標を「管理職女性比率30%」というように一律に設定せず、各企業がそれぞれ具体的な目標を決め、公表することとしている(毎日新聞2014.10.10)。

企業における女性活用の主な取り組み
企業名 女性管理職比率(%) 管理職定義 主な取り組み
東レ 7.4 係長級以上 ・子が小学校3年生まで月6日を上限に在宅勤務
・出産や配偶者の転勤に伴い退職した社員を再雇用
日産自動車 6.8 課長級以上 ・国内3事業所内に託児所を開設
・不妊治療などに年12日のファミリーサポート休暇
アサヒグループホールディング 5.6 課長級以上 ・女性の先輩社員から後輩へキャリア研修
・出産や配偶者の転勤に伴い退職した社員を再雇用
花王 9.6 課長級以上 ・子育て中の社員向けに定期的な交流会
・男性社員向けに育児と仕事両立セミナー
三井住友銀行 9.7 1人以上の部下のいる社員 ・妊娠中、育休中、復帰後に研修や講座
・管理職向けに子育て支援ガイドなど作成
(注)花王は2012年末、三井住友銀は13年3月末、それ以外は13年4月
(資料)毎日新聞2014年3月4日

(2014年10月10日収録、2016年11月10日更新)


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