若者が勤めた会社をすぐ辞めてしまう傾向を称して「七五三退社」と言われているが、それの根拠となっているデータを図録に示した。

 中卒で7割、高卒で5割、大卒で3割が、3年以内に勤めた企業を退社してしまうので七五三と呼ばれていたのであるが、確かにそうしたレベルとなっていた。最近全体的に比率が低下し、中卒と高卒については7割、5割とはいえないが、大卒については3割よりかなり高い35%程度から現在は約3割に達している。

 長期的には上昇傾向が認められていたが、短期的には景気などと連動して上下している。これは、景気が良ければ転職は容易であるが、悪ければ難しいためと考えられる。1990年代前半のバブル崩壊後の景気低迷期にも3年以内離職率は低下したし、リーマンショック(2008年9月)後の経済低迷の影響も2006年卒から影響が認められる。大卒と高卒については2010年卒から上昇に転じた。中卒も2011年卒が上昇した。

 短期的な離職率の上昇は、就職後の景気回復ではなく、卒業年次に就職が困難で不本意な就職をしたためという要因で説明される場合もある。

 2011年卒の「離職率が上がっていることについて厚労省は同年の大学の就職内定率が91%と就職状況が就職氷河期と言われた2000年代前半並みに厳しかったことを挙げ「不本意な就職をした若者らが転職に動いたために離職率が上がったのでは」と分析している。」(毎日新聞2014年11月8日)

 この3年以内離職率のデータは、種々の問題関心から引用される。

(1)まず、せっかく雇ってもすぐ辞めてしまう若者の行動パターンを示す際に使われる。会社の経営者が、下積みの経験をいやがる最近の若者の風潮を嘆き、社員の教育投資の効果に疑問をもったりする根拠として引用されることが多いようだ。

(2)せっかく就職した会社をこんなに早く辞めてしまうのは、若者の仕事の現実に対する理解不足によるものであり、ニート、フリーター問題など、これに伴う社会的な損失を食い止めるため、キャリア教育に力を入れる必要がある、とする際に引用される。

(3)若者が就職したい会社を選ぶときに、その会社の3年以内離職率を気にする場合がある。定着率のよい会社は、それなりに若者を引きつけておくだけの魅力があるだろうと言う判断であろう。その際に、全国平均としてこのデータが引用されるわけである。

        この点に関して2012年の公表(2009年3月卒データ)から産業別、企業規模別の値が発表されるようになった。2010年3月卒データによると大卒平均31.0%のところ、宿泊業、飲食サービス業が51.0%と最も高く、次に教育・学習支援業が48.9%と高くなっており、電気・ガス・熱供給・水道業が8.8%で最低だった。規模別では、5人未満が61.1%と高いが、1000人以上でも21.7%と低くはない。 → 厚生労働省の該当サイト

(4)さらに、最近では、経営者が夢を語って若者を釣り、入社後は過酷な労働条件で切り捨てるいわゆる「ブラック企業」(ITや小売りチェーン、外食産業などに多いとも)の存在とともに引用されることも多くなっている。ブラック企業は早期退職が続出することを見越して若者を大量採用するのが特徴で、離職率は有力な判断材料の一つだからである。リーマンショック後は「ブラック企業」ほどではなくとも新入社員を不当に退職に追い込む「グレー企業」も増えているともいう。各方面からの要請に対応して、厚生労働省は、2015年度からハローワークに、大卒、大学院卒らに向けた求人票に過去3年間の採用者数と離職者数の記入欄を設け、企業に離職率の公表を求めることとした(読売新聞2013年12月2日)。

(2009年12月11日収録、2012年5月27日更新、11月1日更新、2013年10月29日更新、12月6日改訂、2014年11月8日更新)

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