所得格差に関わる国際比較データはかなり多く発表されてきたが、ここでは、OECD Employment Outlook によるフルタイム労働者の賃金・給与格差に関するデータを図録化した。

 比較対象はOECD諸国のうちの22カ国、ノルウェー、スウェーデン、ベルギー、フィンランド、スイス、デンマーク、オランダ、フランス、ニュージーランド、日本、チェコ、ドイツ、オーストラリア、オーストリア、スペイン、英国、カナダ、アイルランド、ポーランド、ハンガリー、韓国、米国である(格差の低い順)。

 格差は、賃金・給与水準の低い方から同数10区分に分けたデータ(十分位データ)の9つの境界値の開きの程度で測っている。最も高い第9境界値を最も低い第1境界値で割った倍率が、日本の場合、3.06倍であり、OECD平均の3.30倍より低い中位程度の格差となっている。

 日本の賃金の年齢格差、男女格差、規模別格差の大きさが指摘されるが(年齢は図録3330、男女は図録3350、規模別は図録3348参照)、総じていえば、フルタイム労働者の格差は大きくないという結果なのは、ホワイトカラーとブルーカラーなど職種別格差が低いからであろうか。

 最も格差の大きいのは米国の4.85倍であり、韓国、ハンガリー、ポーランドが4倍以上で続いている。米国、韓国を除くと、旧社会主義圏の東欧で格差が大きくなっている点が注目される。

 逆に格差が最も低いのはノルウェーの2.11倍であり、スウェーデン、ベルギー、フィンランドがこれに続いている。北欧諸国で格差が低くなっている。米国の格差はノルウェーの格差の2.3倍である。

 10年前の格差水準との比較では、ほぼ総ての国で格差が拡大している。格差が小さくなっているのは、フランス、スペイン、アイルランドのみである。格差拡大は世界的傾向といえよう(オーストリアは10年前のデータなし)。

 格差拡大の幅が大きいのは、韓国、ハンガリー、ポーランドといった現在格差の大きい国である(米国はもとから格差大)。

 日本の場合は格差は3.01倍から3.06倍とむしろ幅が小さな部類に属する。日本の格差拡大は非正規労働者と正規労働者との間に生まれているのでフルタイム労働者だけのデータではこうした結果となっていると考えられる。またフルタイム労働者の年齢別格差はむしろ縮小しているので(図録3340参照)、別の側面の格差拡大が打ち消されているとも考えられる。

 このOECDの分析の特徴は、いかに高所得者が多いかという上方格差といかに低所得者が多いかという下方格差を算出している点である。中位の境界値と上位の境界値あるいは下位の境界値との倍率をそれぞれ上方格差、下方格差として捉えると図の通りである。

 下方格差に比べて上方格差が目立っている国としては、フランス、スペイン、ハンガリーなどをあげることが出来る。ドイツ、カナダはむしろ下方格差の方が相対的に大きい。日本の場合は、どちらかが目立っているという特徴はない。

 心情的な側面では格差拡大の意識が日本の場合大きいが(図録4670参照)、データ的には、このように格差についての明確な特徴が日本についてはないという結果である。これだけ日本に関して目を引く特徴に乏しい格差データであると、恐らく、マスコミや有識者はこのデータを報道したり、取り上げたりすることがないだろうと推測される。

 日本は以前より小さくなったとはいえ年齢別賃金の差が大きく(図録33303340)、男女別賃金の差も大きいので(図録3350)、フルタイム労働者の賃金格差はこの図の見掛け以上に小さいのではないかとも考えられる。一方、図録3344で見たようにフルタイム労働者とパートタイム労働者の賃金格差はOECDの中でも最も大きい。

 従って、日本の賃金格差の特徴は、フルタイムの正規労働者相互の格差の小ささとフルタイム労働者とパートタイムの非正規労働者との非常に大きい格差が同時に成り立っている点にあるといえよう。

(2009年10月7日収録、10月13日コメント追加)


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