衛生関係を所管している厚生労働省の統計による従業理容師・美容師数の推移をグラフにした。理容師と美容師の違いについては末尾コラム参照。

 理容師(床屋さん、理髪師)は、1949年の11万人から増加していたが、1971年のピーク26.7万人から減少に転じ、2013年には23.4万人まで減ってきている。これに対して、美容師は、1949年の4.5万人から増加を続け、1979年には理容師と逆転し、2013年には、48.8万人と1949年の10倍以上となっている。まことに対照的な推移である。

 こうした美容師の増加は、日本人女性のおしゃれ度が極めて高まったためと、まず、単純にとらえることができる。女性を中心に茶髪が普及し、何でこんなことのために美容師を儲けさせなければならないのだという気持ちから当初作成した図録であるが、事態は、思っていたより根が深く、こうした動きは、他の図録とも考え合わせると、国民志向の大きな流れの中の一つのあらわれととらえられることが分かった。すなわち、単に、日本の女性が全体として美しくなったというばかりでなく、女性を中心とした日本人の身体ケアへの大きな傾斜に沿って美容師が増加しているのである(図録23202325参照)。

 美容師は1980年代後半のバブル経済の時期に増加が著しかったが、その後、バブル崩壊後、横ばいに転じた。しかし、2000年以降、再度、拡大が目立つようになっている。これは1999年のテレビ番組をきっかけとしたカリスマ美容師ブームにより美容師を志す若者が増えた影響もあるが、一般的には、若者や歌手など一部の先鋭的なファッションが一般女性に普及する波をあらわしていると考えられる。近年の美容師の増加は茶髪の普及や男性散髪の美容院傾斜による影響であろう。

○ホームページ
・電通広告景気年表(http://www.dentsu.co.jp/books/ad_nenpyo/index.html
・【週刊ファッション情報】ファッション史(http://www.fashion-j.com/H/1990.html
・三愛水着の歴史50年(http://www.san-ai.com/rakuen/50th/index.html
・繊研新聞ファッション年表(http://www.senken.co.jp/arc/fchrono/

○新聞記事
・毎日新聞「女性誌の変遷と主な出来事(年表)」2008年5月7日(夕)(図録3968参照)
・毎日新聞「ブラの100年(上)」2014年2月14日
・毎日新聞「写真特集:狂騒のバブル時代」2015年3月26日


などからアットランダムに戦後、特に1970年代後半以降の流行を抜き出してみると、

ファッション・流行年表
1962年頃 シームレスストッキング・ブーム
1960年代後半 ミニスカート・ブーム(1967年ツイッギー来日)
1968年 パンティストッキング(パンスト)登場
1970年 日本で初のウーマンリブ集会、雑誌「アンアン」(翌年「ノンノ」)創刊
1975年 ポパイ創刊(カタログ文化)
1978年 サタデーナイト・フィーバー大ヒット(ディスコファッション台頭)、フロントホックブラ流行
1979年 サーファーカット人気
1980年 JJファッション(レイヤードカット)
1981年 クリスタル族(ブランド志向)、この頃、下着のカラー化
1982年 日焼けサロンブーム、東京コレクション(DC人気)、おいしい生活(西武)、mono magazine 創刊
1983年 この頃、ストラップレス・ブラ流行
1984年 ボディコンシャスライン浮上
1986年 ハイレグ水着登場、男女雇用均等法施行
1987年 ワンレンボディコンがブーム(バブル期ならではの女性行動とされるのは、服は肩パッド入りの原色ワンピース、髪型はワンレンまたはソバージュ、メイクは太い眉に濃い口紅、シルエットはボディコンシャス(ボディコン)、ブランド物のバッグをもち、ディスコ、高級レストランでディナー、海外旅行)
1988年 流行語「朝シャン」、雑誌「Hanako」創刊
1990年 イケイケ・ファッション人気、流行語「オヤジギャル」「アッシーくん」、女性に競馬ブーム、イタメシ、カラオケボックス激増
1991年 ジュリアナ東京オープン、水着一段とハイレグ化、ヘアヌードブーム
1992年 コギャル現象(渋谷など)、茶髪などカラーヘア人気
1993年 ガーデニングブーム、Jリーグ
1994年 流行語「コギャル」「茶髪」、ヤンママ急増(茶髪、派手ファッション、ベビーカー)、トリンプ「天使のブラ」発売(パッド入りブラで「胸の谷間」強調)
1995年 へそ出しルック、「ナマ足」流行、光沢素材流行
1996年 アムラー(「安室奈美恵」をまねたファッション) (茶髪、ロングヘア、細い眉ベージュ系の化粧、厚底の靴、ミニスカートかショートパンツ)、女子高校生プリクラ・ルーズソックス、また援助交際が社会問題化
1998年 アニマル柄が流行、ネイルアートブーム、キャミソール大ヒット(下着風ファッション)、携帯電話普及率50%超
1999年 厚底靴、ヤマンバ(山姥)、カリスマ店員、カリスマ美容師、癒し系、iモード
2000年 ユニクロ化現象(激安へ)、ミュール(かかとのひもがない"つっかけ"サンダル)、網タイツ、柄タイツ、カラータイツなどブーム
2001年 ローライズパンツ流行
2002年 プチ整形、イケメン、ヒートテック発売(ユニクロ)
2003年 ヌーブラ、アシンメトリー(非対称)スカート流行
2004年 セレブファッション流行、韓流ブーム
2005年 クールビズ
2006年 エロカッコイイ(エロカワイイ)、アラサー
2007年 レギンス(スパッツ)流行、2009年には足裏にひっかけをもつトレンカ・タイプ加わる
2008年 ファストファッション(ユニクロ、H&Mなど)、アラフォー
2009年 森ガール
2010年 山ガール、美魔女コンテスト

などとなる。

 また、参考として昭和電工のカーリング剤新商品紹介HPから次のようなポンチ絵も紹介する。



 現在の女性のファッションのもとになるものがこの間に出揃ったと言えよう。そして、その結果、刺激的な外観上のフェロモンをふりまいて(またかおりの要素も含め)、女性達がまちを闊歩する状況については、まことに隔世の感が否めない。どうしてこの頃ブス(不美人)を見掛けないのだろうかといぶかしく思っているのは私だけだろうか。

 関連して、地域別の美容師の数(人口当たりの密度)もグラフにした。

 これによると、都道府県の中では、東京都が美容師密度の最も高い地域であり、山形県、新潟県、山梨県、秋田県、鳥取県がこれに次いでいる。ただし、東京都と2位以下の差は小さい。東京を除くと日本海側の東北・北陸・山陰地方の美容師が多い。日本海側の女性の方がおしゃれなのであろうか?一方、埼玉、奈良、千葉、兵庫、滋賀といった大都市近郊の諸県で美容師密度は低くなっている。これは、県を越えて都心の美容院に出掛けて行くためであろう。

【コラム】理容師と美容師の違い

理容師と美容師との対比
理容師 美容師
法律上の位置づけ 頭髪の刈り込み、顔そり等の方法により容姿を整えること パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により容姿を美しくすること
人数 23万4044人 48万7636人
(両方取得) 約1万2000人 
店舗数 約12万8000店 約23万4000店




カット
シェービング △(化粧に付随する軽い顔そりは可能)
ヘアセット ×
メーク ×
(注)数値は2013年度、厚生労働省検討会の資料より抜粋
(資料)毎日新聞(2016年1月16日)

 ずいぶんと昔の個人的な経験であるが、美容院ではカミソリが使えないということになっていたため結婚衣装準備のため私が行き慣れていた地元の理髪店で私の結婚相手となる新婦の襟足を剃ってもらったことを思い出す。

 毎日新聞の「質問なるほドリ:理容師と美容師、どう違う?」(2016年1月16日)によれば、理容師と美容師の違いは表にように整理される。規制緩和の流れの中で理容師と美容師の領分は以下のように近づきつつあるといえる。

 1978年に旧厚生省(現在の厚生労働省)が出した通知で、男性の髪のカットは原則として理容師の仕事とされたので、長らく、美容師は男性の髪をカットできなかった。ところが、政府の規制改革会議が「ルールが実情に合っていない」と意見をまとめ、厚労省が2015年7月に37年ぶりにルールを見直したためできるようになった。理容師が女性にパーマをすることもできるようになった。しかし、今でも、理容師はヘアセットやメークが、美容師はかみそりを使った顔そりが原則できない。理容師と美容師が同じ店で働くこともできない。もっとも2016年度からは全ての従業員が両方の資格を持っている店では、理容師と美容師が一緒に働けることになった。

(2006年8月3日収録、12月21日更新、2007年11月30日更新、カリスマ美容師コメント追加、2008年12月9日更新、2010年5月26日ファッション年表更新、2011年11月15・16日更新、2012年10月1日年表追加、2013年12月25日更新、2014年2月4日ファッション・流行年表ブラ関連内容追加、2014年11月2日更新、2015年4月6日年表追加、2016年1月16日【コラム】追加)


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