個人にとって働く目的とは何だろう。この点を内閣府の世論調査と日本生産性本部の新入社員調査で調べた結果を掲げた。

 まず、20歳以上の国民全体を対象とした内閣府の世論調査の結果を見てみよう。

 2001年以降の毎年の変化は余りなく、何といっても「お金を得るために働く」が約5割を占めている。

 第2位は「生きがいをみつけるために働く」が約2割で安定している。データは掲げていないが、この回答は高齢者ほど高い値を示す。高齢者割合が高まっているのに、この回答の割合が増えていかないのは、高齢者以外で、この回答が減り、次の「社会の一員として、務めを果たすために働く」が増えていて両者が相殺しているからである。

 第3位は「社会の一員として、務めを果たすために働く」であり、2001年の10.0%から2013年の16.1%へと拡大傾向にある。4つの選択肢のうち明確な傾向が認められるのは、この回答の拡大傾向のみである。社会貢献意識が高まっている証拠と考えることも出来る(図録2990参照)。しかし2014年以降はまた低下している。

 第4位は「自分の才能や能力を発揮するために働く」であり、この間、ほぼ約1割で安定している。

 次に、働きはじめたばかりの新入社員の意識変化を見てみよう。こちらは、上の世論調査が2001年以降のすいいであるのに対して、1971年からの長期時系列が得られる点に優位性がある。

 最初に目に付くのは以下である。

(1)「社会のために役に立ちたい」という社会貢献意識に立脚した働き方の意識が2000年以降に上昇傾向に転じ、かなり値が高まった。東日本大震災があった2011年とその翌年は15%のピークとなったが。2013年以降再度低下傾向となった。

 これは内閣府世論調査の結果で「社会の一員として、務めを果たすために働く」が拡大傾向にあるのと同じ方向の意識変化といえる。

 1982年にコピーライターの糸井重里が考案、翌年まで用いられた西武百貨店のキャッチコピーとして「おいしい生活」が有名である。まさにバブル時代を先取りした言葉といえよう。ここで見ている新入社員の「働く目的」でも、1980年代後半から1990年代前半にかけて「楽しい生活をしたい」が「自分の能力をためす生き方をしたい」を減らして一時期5%ポイントほど増えたが、これはバブル経済が及ぼした意識変化といえよう(同じようにバブルの影響で一時期「肉食化」が進んだ様子は図録2466参照)。

 さて、バブル時代の影響によるこうした一時的変化を除いて長期傾向をたどってみると(1)のほかに以下の2点が目立っているといえる。

(2)2000年以降、「経済的に豊かな生活を送りたい」は横ばいか低下傾向となり、代わって「楽しい生活をしたい」が大きく拡大した。

(3)長期的に縮小していた「自分の能力をためす生き方をしたい」が2000年以降、さらにその減少テンポを速めた。

 これは、冒険的な生き方から現在を無理せず楽しむ生き方へと若者の考え方が大きく変化していることを示していると考えられる。バブルの頃の「楽しい生活」は他人の目を盗んで楽しむといった享楽主義的な考えの側面があったと思われるが最近の「楽しい生活」にはそんなニュアンスはなかろう。なお、時期的に、上の(1)や別図録の「草食化」(図録2466)、「安定雇用志向」(図録3184)もやはり2000年頃を境に顕著となっており、全体として軌を一にした若者の意識変化が起きているといえる。

(2015年6月12日収録、8月24日更新、8月25日新入社員更新、2016年7月8日新入社員更新、8月30日更新、9月27日更新)


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