学校の先生は世間知らずだとよくいわれる。そこで、この点を確かめるため、OECD国際教員指導環境調査(TALIS)の結果から、中学校教師の教師以外の職業経験年数をグラフにした(教師以外の経験年数には、教育委員会での仕事など教師以外の教育職の年数も含まれるので、参考までに教育職全体以外の経験年数も示した)。

 OECD国際教員指導環境調査(TALIS:Teaching and Learning International Survey)は、学校の学習環境と教員の勤務環境に焦点を当てた国際調査である。2008年に第1回調査が実施され(参加24か国・地域、日本は不参加)、2009年6月に結果が公表された。2013年に実施された第2回調査には日本を含む34か国・地域が参加しており、文部科学省との連携のもとに、国立教育政策所が国内における調査の実施を担当しており、日本語版の報告書もここで作成されている。

 この図を見ると、日本の教師の教師以外の職業経験年数は、平均して1.5年と、この項目の調査対象となった32か国・地域の中で最短となっており、世間知らずといわれても仕様がない状況である。平均値は6.5年、最大はセルビアの14.3年となっており、日本と比較すると、かなり長い。

 日本の場合、教育界が産業界と同様新卒採用中心であるからという側面と教師が聖職としての性格をもっていて他分野に馴染まないという側面の両面があると考えられる。

 後者の側面に関連して、教師以外の経験年数と教師の教職観との相関図を参考までに以下に掲げた。「教職は社会的に高く評価されていると思う」という教職観を教師が持っている国ほど、教師に聖職としての性格が強いと思われる。相関度はそう高くはないが、儒教の影響が残っている韓国や華僑の影響の強いマレーシア、シンガポールでは、教職への評価が高く、それと同時に、教師以外の経験年数が少なくなっている。現代では、日本人の教職観は、ずいぶんとこうした高い評価からは低下してきているが、かつては韓国などと同様であったと推測できる。おそらく、その頃からの習慣や相対的に高い給与水準(図録3874)の影響により、日本の場合、教育界以外との交流が低調のままであり、そのため教師以外の経験年数が少ないのであろう。

 なお、フランス、イタリア、スウェーデンといったヨーロッパの主要国では、教職への評価がこんなにもかというほど低い(少なくとも教師はそう思っている)のに驚く。その点、イングランド(英国)やオランダはまだましである。

 いずれにせよ、めまぐるしく世情が移り変わる現代においては、教育内容が時代遅れになる危険が大きくなっている。教育上の観点から言っても、新卒以外の採用を増やしたり、教育界以外との人事交流を拡大し、もう少し広く世間の風に当った先生が増えても良いように思える。


 当図録で取り上げた32カ国・地域は、図の順番に、日本、韓国、マレーシア、アブダビ(UAE)、フランドル(ベルギー)、チェコ、シンガポール、スロバキア、フランス、ポーランド、イタリア、フィンランド、ポルトガル、クロアチア、スペイン、ノルウェー、デンマーク、イスラエル、イングランド(英国)、ラトビア、ルーマニア、オーストラリア、エストニア、スウェーデン、オランダ、ブルガリア、アルバータ(カナダ)、ブラジル、チリ、メキシコ、アイスランド、セルビアである。

(2014年11月4日収録)


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