OECDでは世界の15歳児童を対象に学力(学習到達度)に関して実際にテストを行う調査を3年ごとに行っている。この結果は、自国の学力レベルに関心を持つ各国国民の関心の的になっているので紹介することとする(なお、大人の学力テストというべき成人スキル調査の結果は図録3936参照、またPISAによる子供の学力と成人スキル調査による大人の知力との相関については図録3937参照)。

 図には2012年の点数とともに2000年から3年ごとの順位を記した。点数はOECD加盟国の平均点が500点になるように配点を調整し、得点を出している。参加国はだんだんと増え65カ国に及んでいる。

 日本の状況を分野ごと2000年から2012年について示す以下の通りである。

   2000年 2003年 2006年 2009年 2012年
点数 読解力 522点 498点 498点 520点 538点
数学的リテラシー 557点 534点 523点 529点 536点
科学的リテラシー 550点 548点 531点 539点 547点
順位 読解力 8位 14位 15位 8位 4位
数学的リテラシー 1位 6位 10位 9位 7位
科学的リテラシー 2位 2位 6位 5位 4位

 2006年調査に関しては読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーのすべてで順位が低下し、マスコミでも危機感をもって大きく報道された(図録3940w参照)。

 2009年調査では、日本の順位が回復し、教育界の努力が実ったともみなせるが、なお、学力格差が解消していない点が指摘された。また、新たに参加した上海、シンガポールを含め、アジア勢が上位を独占した点に注目が集まった。

 2012年調査では、日本の順位のV字回復が注目され、ゆとり教育の見直しの効果があらわれたとされた。新たに加わったベトナムを含め、アジアの儒教圏諸国の好成績が相変わらず目立っている。なお、OECD加盟34カ国中で、日本は、数学が2位、読解力と科学は1位とトップクラスであり、成人テストの結果と整合的だった(図録3936)。

 新聞各紙は、PISAの結果をゆとり教育の影響であるかの記事をこれまで書いて来ている。しかし、「ゆとり教育」が始まったのは、小学校、中学校で2002年度からなので、03年調査の15歳はわずか1年しか「ゆとり教育」の影響を受けていないので、06年調査の結果ならいざ知らず、03年調査の結果を「ゆとり教育」のせいにするのは言い過ぎであり、また、「脱ゆとり教育」が中学校で全面実施されたのは12年度からなので、12年調査の15歳の成績の上昇が「脱ゆとり教育」の影響ともいえないのではないか。

 こう指摘しているのは、池上彰氏である(朝日新聞2013年12月20日「池上彰の新聞ななめ読み」)。12年調査の成績上昇は、「むしろ、「ゆとり教育」導入と同時に始まった「総合的な学習の時間」の成果が出たという評価も可能になります。その点についての慎重な分析がないまま、「脱ゆとり教育」の成果だと論じてしまうのは、「自分たちの成果だ」と誇示したい文部科学省の発表に誘導されたものではないでしょうか。発表をうのみにせず、論理的に分析する。PISAが求める学力を、記者たちは持っているのでしょうか。」(同上)

 なお、池上氏は、同じ記事で、PISA参加国が増えているので、ランキングの回復は、事実上、ランキングの上昇と解釈すべきであり、「復調傾向」(読売新聞)というより「向上傾向」(朝日新聞)が正しいのではないかと論じているが、OECD平均を500点になるように調整している採点結果から見ると、3分野の平均では、2012年は543点と2000年の540点をなお下回っているので、やはり「復調」程度の表現の方が真実に近いのではないかと思われる。

 2012年調査の結果は、国際的には、アジアの上昇と北欧(特にフィンランド)の低迷が対照的となった点が指摘されている。また中国と対比した米国の悲惨な状況で「1957年のソ連のスプートニク打ち上げの時の様なショックによって新たな動機づけが生じることを期待する者までいる」という(The Economist December 7th 2013,"Finn-ished")。ベトナムが科学的リテラシーでいきなり8位となるなど、途上国の割にドイツ並みかそれ以上の高い得点を記しているのも注目された。高学力には「熱心な親たちも助けになっている。ベトナムの親たちの半分は子どもの学力向上を見張るために教師との定期的なコンタクトを持ち続けている」(同上)。

 科学得点の分散から見た学校間、学校内の学力格差の国際比較について、日本の学校間格差が大きい点を図録3941(2006年結果による)に掲げた。

 分析対象国は、読解力の高い順に、上海、香港、シンガポール、日本、韓国、フィンランド、アイルランド、台湾、カナダ、ポーランド、エストニア、リヒテンシュタイン、ニュージーランド、オーストラリア、オランダ、ベルギー、スイス、マカオ、ベトナム、ドイツ、フランス、ノルウェー、英国、米国、デンマーク、チェコ、イタリア、オーストリア、ラトビア、ハンガリー、スペイン、ルクセンブルク、ポルトガル、イスラエル、クロアチア、スウェーデン、アイスランド、スロベニア、リトアニア、ギリシャ、トルコ、ロシア、スロバキア、キプロス、セルビア、アラブ首長国連邦、チリ、タイ、コスタリカ、ルーマニア、ブルガリア、メキシコ、モンテネグロ、ウルグアイ、ブラジル、チュニジア(ここまで図示)、コロンビア、ヨルダン、マレーシア、インドネシア、アルゼンチン、アルバニア、カザフスタン、カタール、ペルーの65カ国である。

(2004年12月19日収録、2007年12月10日更新、2010年12月8日更新、2013年12月4日更新、12月19日コメント追加、2014年1月31日池上氏意見関連コメント追加)


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