イチローは2005年から2013年まで9年連続でスポーツ選手人気度ナンバーワンだったわが国を代表するアスリートである(2016年にも再度1位、図録3976g)。ここではイチローの年度別ヒット数の推移をグラフにした。

 2017年7月6日のカージナル戦で7試合ぶりに先発出場したイチローは、複数安打で通算3054安打とした。これは、パナマ出身で首位打者を7度獲得したロッド・カルーを上回り、歴代24位、米国以外の出身でメジャー史上最多安打となった。イチロー選手は「米国以外出身最多記録はカルーの記録を超えたことほど重要ではない」と言い切ったという(毎日新聞2017年7月7日)。

1.2016年度中、メジャー史上30人目の算3000安打を達成

 2016年度は95本の安打と昨年より増え、1試合当たりの安打数もこれまでの減少傾向を反転させた。

 2016年8月7日、マーリンズの外野手として、ロッキーズ戦で、公式記録として、メジャー史上30人目の通算3000安打を達成。8試合ぶりに先発で出場し、七回の第4打席で右越え三塁打。メジャー16年目、通算2452試合目でアジア出身選手では初となる偉業を成し遂げた(デイリースポーツ2016年8月8日)。

 以下は、時折声を詰まらせながら語った試合後の会見の発言(朝日新聞2016年8月9日)。

 ――達成した感想は
 「ずいぶん年をとったと思うが、チームメート、ファンの人たちが喜んでくれた。3千という数字よりも、僕が何かすることで、僕以外の人たちが喜んでくれることが、今の僕にとって、何よりも大事なことだと再認識した瞬間でした」

 ――記録達成に近づく中、気持ちが一番揺れた瞬間は
 「この国には『粋』という概念はない中、『察する』という概念はあると感じている。みんなが察してくれた。1打席、2打席、3打席と(凡退で)終わったときに、誰も何も言わない。これはうれしかった。口にしなくても、みんな(つらさを)分かっている。だから結果を出したいという気持ちが強くなった。(記録を達成して)みんなの顔を見たとき、すごく安心しました」

 ――放った安打には様々な意味が込められている
 「ただバットを振って、3千(安打)は、おそらく無理。それなりに長い時間、数字を残そうと思えば、脳みそを使わないといけない。使いすぎて疲れたり、考えていない人にあっさりとやられたりすることもたくさんあるけど。それなりに自分に説明ができるプレーをしたいのが、僕の根底にある。それを見ている人に感じていただけるなら、とても幸せですね」

 3000本安打が何故祝われるかというと米国では引退後の野球殿堂入りとつながる成績ととらえられているからである。この点についてふれた東京新聞の社説を引用する(2016年8月10日)。「大リーガーの最終ゴールは米野球殿堂に入ることだ。殿堂入りは記者投票で決まり、打者は通算3000安打または500本塁打がその目安とされる。(イチロー以外では現役唯一の3000本安打打者であるヤンキースの)ロドリゲス選手や大リーグ歴代最多762本塁打のボンズ氏らはその数字をクリアしているものの、薬物使用の過去から殿堂入りは絶望視されている。付け加えれば、イチロー選手が日米通算で安打数を上回った大リーグ歴代最多安打のピート・ローズ氏も、野球賭博問題で殿堂入りは果たせていない。大リーガーの中では小柄でありながら、クリーンな体と心で安打を積み重ねた。守備と走塁でも卓越したプレーを続けている。そのような選手に称賛の声が集まるのは当然といえる」(カッコ内は引用者による)。

1a.2016年度中、日米通算で大リーグ記録の4256安打を越える

 2016日6月15日、マーリンズの野手として、パドレス戦で2安打を放ち、日米通算で4257安打に達し、ピート・ローズ(元レッズなど)が持つ大リーグ記録の4256安打を上回った。公式記録ではないので大騒ぎすることではないという批評もあった。マーリンズ・イチロー外野手の話「(日米通算4257安打について)ここにゴールを設定したことがなかったので、実はそんなに大きなことという感じはしていない。それでもチームメートやファンの方々の反応がすごくうれしかった。日米通算という数字はどうしたってけちがつくことは分かっていた」(毎日新聞2016年6月16日)。

 イチローが4257安打を達成した時点で、大リーグのローズと日本球界における最多安打成績をもつ張本勲(東映など)のNPB(日本プロ野球)記録と対比したデータ表を以下に引用する。イチローは、年数、安打、1試合当り安打、打率、盗塁で他の2人を今の段階で上回っている。

イチロー、ローズ、張本のプロ野球成績比較
イチロー ローズ 張 本
年数 25年 24年 23年
出場試合 3363 3562 2752
打数 1万3107 1万4053 9666
安打 4257 4256 3085
1試合当り安打 1.266 1.195 1.121
打率 0.325 0.303 0.319
本塁打 231 160 504
打点 1275 1314 1676
盗塁 703 198 319
(注)イチローは日米通算、ローズはMLB、張本はNPB成績
(資料)デイリースポーツ (2016年6月16日)

2.2015年度は91本

「マーリンズは6日(日本時間7日未明)、イチロー外野手(41)と契約を1年延長することで合意したと発表した。AP通信によれば、年俸は今季と同じ200万ドル(約2億4000万円)と報じられている。メジャー15年目の今季は153試合に出場し、398打数91安打、打率.229と自己最低の数字に終わった。(中略)今月22日に42歳となるイチローはメジャー通算3000安打まであと65本に迫っている。マイケル・ヒル球団本部長によれば、来季も第4の外野手としてのプレーとなる見込みというが、十分にクリアできる計算となる。

 ▼マーリンズ・サムソン球団社長の話 イチローはこれまでに会った野球選手の中で最も興味深い人物だ。イチローと時間を共有することは、英国でビートルズと一緒にいるのと同じようなもの。卓越した人物と過ごすことは、そこにいる者をいい気分にさせてくれる。」(スポニチ・アネックス、2015.10.7)

3.2014年度は102本に減少

「(イチローの今季最終戦)五回の第3打席は二ゴロ。その裏の守備から交代し、40歳のシーズンを終えた。今季は開幕から控え。後半は故障者が出て出場機会が増えたものの、大リーグ14年目で初めて規定打席に到達できなかった。「いつか自分の支えになっていく経験があるが、その中に加わる時間だったと思う」と今季を振り返った。序盤は代走や守備固めに起用されることが多かった。それでも気落ちすることなく、自分の仕事をすることに集中したのだった。
 規定打席には足りなかったが、打率は2割8分4厘。昨季の2割6分2厘から向上させた。「(成績については)プラスに考えられることなんか、いっぱいある。マイナスが思い浮かばないくらいですね」とイチロー。来月22日で41歳になるが、まだまだ自信たっぷりだ。
 今季限りでヤンキースとの契約が切れ、フリーエージェントになる。ヤンキースとの再契約か、他球団への移籍か。去就が注目される。」(東京新聞2014.9.29夕)

4.2013年度は136本に減少

 「イチローは今季150試合に出場し、メジャー13年間で最も少ない136安打に終わり、打率2割6分2厘、7本塁打、35打点、57得点、20盗塁でシーズンを終えた。イチローはシーズンを終了し感じることはと問われ「まあ、もう1周やりたいです。もう1ラウンド。162試合。それ1ラウンドでしょ」と話した。」(日刊スポーツ2013.9.30)

5.2012年度178本に止まる

 イチローは、2012年7月23日、D.J.ミッチェルとダニー・ファーカーとの2対1のトレードでシアトル・マリナーズからニューヨーク・ヤンキースへ移籍した。

 10月「3日、レギュラーシーズン最終戦が行われ、ア・リーグ東地区はヤンキースが2連覇を果たした。黒田は16勝目(11敗)を挙げ、広島時代の05年の15勝(12敗)を上回って自己最多となった。イチローにとってはマリナーズ1年目の01年以来の地区優勝だが、メジャーでは最少の178安打にとどまった。」(毎日新聞2012.10.5)

6.11年連続200本安打はならず

 マリナーズのイチロー外野手は2011年9月28日の今季レギュラーシーズン最終戦に「1番・右翼」で出場したが、無安打となり、シーズン184安打に終わった。メジャー11年目で初めて打率3割、年間200安打に届かなかった。

 以下は東京新聞(2011.9.30)が報じたイチローとの一問一答

 −今の気持は。
 なぜか晴れやかです。
 −苦しい年だったが。
 苦しい時期があった。2カ月ぐらい。しんどかったですよ。
 −晴れやかな理由は。
 200安打に一応、区切りがついた。(記録に)追われることがなくなったので、ちょっとほっとしている。
 −思うようにはいかない部分があったか。
 去年で10年になって、今年はいろいろやったが、4月に結果が出ることへの判断がすごく難しかった。それが誤った判断であったとは言える。(反動が)5、6月に出てますからね。結果が出てかえって難しくなることがあるということ。
 −不調の間の支えは。
 体は元気だった。ずっと。折れた心も体で支えていた。
 −200本安打が途切れた寂しさは。
 寂しさが来るかなと思ったが、そんな感じじゃない。ぎりぎりのところでやってきた自負があるからでしょう。余裕を持ってできたのは実質3回ぐらい。今年で止まってもいい、でも今年はやりたい、という感覚でやってきた。
 −3割も途切れた。
 それはどうでもいい。特別な感情はないですね。

 打率は、先発以外の選手を含めて、打てているかの厳密な指標である。しかし、人々が話題にし、また選手が目途とするのは、一試合、また一シーズンに何本打ったかである。統計数字は厳密な方が望ましいのか、行動に密着した数字が望ましいのか。私は後者だと思う。図にはシーズン打数とともに指標としてはシーズン打率でなく一試合当たり本数を掲載したのはそうした理由からである。

7.2010年、10年連続200本安打達成

 2010年9月23日、大リーグ・マリナーズのイチローがトロントでのフルージェイズ戦で、5打数2安打を記し、自らの大リーグ記録を更新する10年連続200安打を達成した。「簡単なことじゃないことは僕が一番知っている。それなりの思いがある」というイチロー語録はマスコミ各紙の紙面を飾った。

 連続ではない200安打達成回数も大リーグ最多のピート・ローズにタイで並んだ。来シーズンも200安打を達成するとこれも越えることとなる。なお、2004年の262という安打数は大リーグのシーズン最多安打であり1920年のジョージ・シスラーの記録を破っている。

8.2009年の大リーグ記録樹立の際のコメント

 米大リーグ、マリナーズのイチローは2009年9月13日、レンジャーズとのダブルヘッダー第2試合の2回に安打を放ち、大リーグでも初の9年連続200本安打を達成した。

大リーグにおける連続シーズン200安打以上の記録
9年 イチロー 2001〜2009
8年 W.キーラー 1894〜1901
7年 W.ボッグス 1983〜1989
5年 C.クライン 1929〜1933
A.シモンズ 1929〜1933
C.ゲーリンジャー 1933〜1937
M.ヤング 2003〜2007
4年 J.トービン 1920〜1923
P.ウェイナー 1927〜1930
B.テリー 1929〜1932
K.パケット 1986〜1989
(注)現役はイチローとM.ヤング。日本プロ野球で年間200安打を記録したのは1994年のイチロー(当時オリックス)と2005年の青木宣親(ヤクルト)のみ。
(資料)毎日新聞2009.9.14夕刊

 この偉業については、野球界ばかりでなく各界から称賛と尊敬の発言が相次いでいる。「米大リーグは日本以上に日程がハードで、時差もある。その中で強靱な体力と精神力を保ってきたのが素晴らしい。」王貞治・ソフトバンク球団会長の話(東京新聞2009.9.15)

 ここではイチローのこれまでのシーズンごとの安打数をグラフにした。1試合当たりの安打数も示したが、日米を通じ、1.3〜1.6安打と、安定したヒットを放ち続けてきた点が印象深い。

 なお、シーズン200安打の通算で最多なのはピート・ローズ(レッズ等)の10回であり、イチローの9回はタイ・カップ(タイガーズ等)と並ぶ史上2位である(毎日新聞2009.9.14)。

 参考のために、以下に長嶋茂雄・王貞治選手の年度別安打数のグラフを掲げた。ホームランバッターかどうかという違いを考慮しても、安打数の多さや安定性において2010年までのイチローの成績がいかに凄いかが分かる。


(イチロー選手のグラフの原データ)
イチローの年度別安打数・試合数
日本プロ野球 年度 安打
試合
1試合
当たり
安打数
オリックス 1992 24 40 0.60
1993 12 43 0.28
1994 210 130 1.62
1995 179 130 1.38
1996 193 130 1.48
1997 185 135 1.37
1998 181 135 1.34
1999 141 103 1.37
2000 153 105 1.46
米国大リーグ 年度 安打
試合
1試合
当たり
安打数
マリナーズ 2001 242 157 1.54
2002 208 157 1.32
2003 212 159 1.33
2004 262 161 1.63
2005 206 162 1.27
2006 224 161 1.39
2007 238 161 1.48
2008 213 162 1.31
2009* 200 128 1.56
2009 225 146 1.54
2010* 200 152 1.32
2010 214 162 1.32
2011 184 161 1.14
2012 105 95 1.11
ヤンキース 2012 73 67 1.09
マ・ヤ通算 2012 178 162 1.10
ヤンキース 2013 136 150 0.91
2014 102 143 0.71
マーリンズ 2015 91 153 0.59
2016 95 143 0.66
*200安打達成時、米国時間2009年9月13日、2010年9月23日現在
(資料)東京新聞2009.9.15ほか

(2009年9月15日収録、9月24日長嶋茂雄・王貞治選手成績追加、11月11日更新、2010年9月27日更新、10月4日更新、2011年9月29日・30日更新、2012年10月10日更新、2013年9月30日更新、2014年6月12日まえがき追加、2014年10月2日更新、2015年10月8日更新、2016年6月16日更新、ローズ、張本との比較表、8月8日メジャー3000本安打、8月9日会見の発言、8月10日東京新聞社説引用、2016年12月29日更新、2017年7月7日コメント追加)


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