2014年9月28日、ベルリン・マラソンで、男子のデニス・キメット(ケニア)が2時間2分57秒の世界新で優勝した。ウィルソン・キプサング(ケニア)が昨年のこの大会で出した2時間3分23秒を26秒更新し、史上初めて2時間2分台に突入した。2位のエマニュエル・ムタイ(ケニア)も従来の世界記録を上回る2時間3分13秒だった。

 男子マラソン界は、ベルリン・マラソン、東京マラソンなど主要6マラソン大会による「ワールドマラソンメジャーズ」(WMM)の創設(2006年−東京は2013年から参加)で高速化に一層の拍車がかかっているといわれる。これは、各大会5位までに入賞すると1位25点、2位15点、3位10点、4位5点、5位1点が付与され、2年のシリーズ期間における合計得点を競い、男女ともに、最高得点の選手へ賞金50万ドルが贈られるというもの。

・東京マラソン(2月下旬)
・ボストンマラソン(4月中旬)
・ロンドンマラソン(4月下旬)
・オリンピック(4年に一度、主に8月)
・世界陸上選手権(2年に一度、主に8月)
・ベルリンマラソン(9月下旬)
・シカゴマラソン(10月上旬)
・ニューヨークシティマラソン(11月初旬)

(過去コメント)
 2013年9月29日に行われた第40回ベルリンマラソンが行われ、男子で昨夏のロンドン五輪銅メダルのウィルソン・キプサング(31)(ケニア)が、2時間3分23秒の世界新記録で初優勝した。一昨年の2011年9月25日に行われた第38回ベルリン・マラソン大会では、パトリック・マカウ(ケニア)が2時間3分38秒の世界記録を樹立して2連覇を果たしたが、これに次ぐ2年ぶりの男子マラソン世界記録である。

 ◇ ◇ ◇

 毎日新聞は、2008年10月29日(夕刊)の特集ワイドにおいて、「人類の夢2時間の壁突破へ〜「あと4分」に何年」と題し、男子マラソンのハイレ・ゲブレシラシエ選手(エチオピア)が9月に叩き出した2時間3分59秒の世界記録を踏まえ、人類が2分の壁を破る日はいつかという特集記事を掲載している。

 記録樹立の条件として、ベルリンなど起伏の少ないレース環境、またウエアやシューズの機能性、そして高額の優勝賞金があるというような話題が記載されているが、掲載された過去の世界記録のデータを図示してみると、そう間近に2時間を切るような記録が出るとは思われない。

「ゲブレシラシエ選手は世界記録を出した9月のレース後、2時間の記録の壁を越えるには「あと20年はかかるだろう」と話した。...山地教授(新潟医療福祉大学)もほぼ同じような見方をする。「世界記録と樹立された年の関係から算出してみると、2時間の壁が破られるのは、2030年ごろというのが妥当だろう。」(同紙)

 図の傾向線を直線的に先に伸ばせばこのような結論となることは明らかだろう。いくつか新記録が重なる時期と何年も新記録が出ない時期とが交互に訪れることもうかがわれる。

 ただ人間の体力の限界を想定するなら直線的に2時間に近づくとは必ずしもいえない。記録の更新幅が小さくなっていくことがあり得るのである。何が真実かは実際の記録が出てみないことには分からないと言うのが妥当なところかも知れない。

 以下に戦後の世界記録の一覧表を掲げる。戦前は2時間26分台だったといわれる。別の記事によると1939年には2時間35分が世界記録であり、その後、第二次世界大戦をはさんで高速度化が進んだが、最近は伸びしろが狭まったという(The Economist July 18th 2015)。世界記録がどこまで速くなるのかという点については図録3988k(人間はどこまで速く走れるのか)を参照。結論はマラソン女子の記録は限界に近づいているが男子の場合はなお若干の伸びしろがあるというもの。限界の予知値は2時間1分程度とされている。

 なお短距離100m走の世界記録については図録3988p参照。

男子マラソンの世界記録の推移
年次 記録 選手 大会
1965年 2時間12分0秒 重松森雄(福岡大) チスウィック
1967年 2時間9分36秒 クレイトン(豪州) 福岡
1969年 2時間8分33秒 クレイトン(豪州) アントワープ
1981年 2時間8分18秒 ドキャステラ(豪州) 福岡
1984年 2時間8分5秒 ジョーンズ(英国) シカゴ
1985年 2時間7分12秒 ロペス(ポルトガル) ロッテルダム
1988年 2時間6分50秒 デンシモ(エチオピア) ロッテルダム
1998年 2時間6分5秒 ダコスタ(ブラジル) ベルリン
1999年 2時間5分42秒 ハヌーシ(モロッコ) シカゴ
2002年 2時間5分38秒 ハヌーシ(米国) ロンドン
2003年 2時間4分55秒 テルガト(ケニア) ベルリン
2007年 2時間4分26秒 ゲブレシラシエ(エチオピア) ベルリン
2008年 2時間3分59秒 ゲブレシラシエ(エチオピア) ベルリン
2011年 2時間3分38秒 マカウ(ケニア) ベルリン
2013年 2時間3分23秒 キプサング(ケニア) ベルリン
2014年 2時間2分57秒 デニス・キメット(ケニア) ベルリン
(注)ハヌーシは2000年に米国の市民権取得。67年と69年の記録は
正確にはそれぞれ36秒4、33秒6。
(資料)東京新聞2014年9月29日

(2008年11月5日収録、2011年4月21日ジョフリー・ムタイ記録コメント(のち削除)、2011年9月25日更新、2013年9月29日更新、2014年9月29日更新、2015年7月27日補訂)


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