「ガス黄金時代の到来」が現実味を帯びている。米国の天然ガス対策法(1978年)の規制緩和が新たに開発したガスを「総ての者にオープンアクセスが義務づけられたパイプライン」を通じて供給することを可能とした。これに勢いを得て、シェールガスを採掘する技術が開発され、革命をもたらしたのである(The Economist, August 6th 2011)。

 2011年4月に公表された米国エネルギー情報局(EIA)の報告書(U.S. Energy Information Administration, World Shale Gas Resources)は、32カ国の48のシェールガス田を調べ(調査対象地域は下図参照)、採掘可能な資源量が187.1兆立米(m3)であることを明らかにした。これは在来型の天然ガス埋蔵量とほぼ匹敵する規模である。しかも、調査対象地域には、なお在来型の採掘が数十年は続くと見込まれる旧ソ連圏や中東の諸国を含んでいないので、これらの地域の埋蔵量まで加えるとさらに巨大となる。



 利用可能なガス資源は以上に止まらない。砂岩層の「タイトガス」や石炭層の「メタンガス」の可能性もある。さらに現在は不確定ではあるが、大陸棚に眠るハイドレートとして凍っているメタンガスが採掘可能となれば1千兆立米以上の資源量が見込まれるとされる。

 シェールガスは石油と異なり資源が中東・ロシアに偏在しておらず、世界への政治的な影響力にも激変が起こると見られている。今回の調査で最もシェールガスの埋蔵資源が多かったのは中国の36.1兆立米であり、これに米国、アルゼンチン、メキシコが続いていた。

 ガス取引の形態も変化を見せている。在来型天然ガスは、ロシアのガスプロムのような上流ガス企業からパイプラインで供給を受ける長期契約による取引が多かったが、スポット価格で取り引きされるLNG(液化天然ガス)供給の増加がこれを打ち破りつつある。歴史的に、長期契約によるガス供給は、暖房用石油の代替供給からはじまったので石油価格とリンクしているが、スポット価格にはこうした慣習はもともとない。アジア(日本)では長期契約方式が主流で最も価格が高く、他方、競争的な市場をもつ米国で最も価格が低く、欧州市場はこの中間といわれる(エコノミスト誌によれば、100万btu当たり価格は、だいたい、アジア11ドル、大陸ヨーロッパ8ドル、米国4ドルとのこと。図録4124参照−1btuは約300キロワット時)。現在、世界各地に分散するシェールガスの供給増も展望しながらLNG基地の建造が活発化している。供給国でのLNGの液化・輸出基地、需要国での輸入基地が稼働しはじめると、供給カルテルによるOPEC型の価格形成は効力を減じていくと考えられている。

 図録には2011年夏段階の埋蔵量データに加えて2012年7月段階の回収可能資源量データを掲載した。シェールガスを主としてあらわす非在来型のデータがロシア、カタールなどで新たに掲載されているほか、イラン、インドネシアのデータが新たに加わり、また各国の在来型の資源量も見直されていて、全体的に、2011年夏段階より資源量の見積もりが大きく増加しているのが分かる。例えば米国の資源量は在来・非在来を合わせて32.1兆立米だったのが74兆立米になっている。

 わが国における天然ガスの位置づけについては、図録4050(エネルギー源)、図録4120(輸出入)を参照。

 図で取り上げたのは2011年段階で24カ国のデータであり、こられの国は図の順番に、フランス、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、ポーランド、ウクライナ、ロシア、カタール、南アフリカ、リビア、アルジェリア、中国、インド、パキスタン、オーストラリア、米国、カナダ、メキシコ、ベネズエラ、アルゼンチン、ブラジル、チリ、パラグアイ、ボリビアである。2012年段階では、上位15カ国、具体的にはノルウェー、ロシア、イラン、カタール、サウジアラビア、アルジェリア、ナイジェリア、中国、インドネシア、オーストラリア、米国、カナダ、メキシコ、ベネズエラ、アルゼンチンである。

(2011年8月11日収録、2012年8月27日データ追加)

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