ウクライナでは、2014年2月の政権崩壊以降、首都キエフを含む親EUの西部とロシア人が多く親ロの傾向の強い東部の地域性の違いを背景に、欧米やロシアの対立を含んで国内の政治混乱が続き、クリミア半島の地方政府が行った住民投票で決まったロシアへの編入をロシアが了承したことから世界の関心を集めている。そこでにわかに重要課題として浮上したのがEU諸国におけるエネルギーのロシア依存の状況についてどう対処するかである。

 EUとロシアは複数の天然ガスパイプラインで結ばれており、中でもウクライナを通るパイプラインは大きなシェアを占めている。ここでは、EU各国の天然ガス供給に占めるロシアへの依存度を示した。ロシアからの天然ガス供給への依存度はEU平均で24%。80%以上の国が7カ国。主要国ではドイツの37%、イタリアの29%が高くなっている。一方、英国やスウェーデンではロシア依存度はゼロである。

 ヨーロッパの天然ガス供給体制について、東京新聞はEUが策定しようとしているエネルギー安全保障と関連付け、こうまとめている(2014年4月11日)。

「欧州にはロシアからウクライナやベラルーシなどを経由して天然ガスを送るパイプラインがくまなく走る。クリミア半島を併合したロシアにEUが経済制裁を科さないのは、ガス供給停止といった報復を恐れていることが影響している。

 EUが検討しているのは、供給停止などの緊急時に備え、隣国に融通して助け合うためのパイプラインの接続と備蓄体制の拡充に加えて、ロシア以外からの輸入先確保と代替エネルギーの開発を中長期にわたって進める−という内容だ。

 欧州には、欧州向け天然ガスの5割が通過するウクライナをめぐる苦い経験がある。2006年と09年、ガス料金の値上げなどをめぐる争いからロシアがウクライナへのガス供給をストップ。欧州向けは無関係にもかかわらず、09年にはブルガリアなどに真冬の2〜3週間、ガスが全く来ない事態となった。

 この教訓からEUは、パイプラインの接続を推進。ハンガリーとルーマニア、クロアチア、スロバキアが結ばれ、チェコとポーランドも接続。最大輸入国ドイツからはポーランドやチェコ、イタリアにも送れるようになった。ロシアにガス供給を頼るブルガリアやバルト三国も、隣国との接続を急ぐ。

 こうした緊急時対策は進むものの、代替源は見あたらないのが現状だ。

 ロシアと並ぶ供給元のノルウェーは増産できてもロシア分の16分の1を賄える程度と専門家は分析。液化天然ガス(LNG)も、カタール産は単価の高い日本などアジアに振り向けられ、アルジェリアやリビアなどの北アフリカは政情不安で供給が安定しない。

 米国産シェールガスへの期待を高めるEUは、米国とエネルギー協力の話し合いを今月から始めた。ただ米国がLNGを輸出できるようになるのは15年以降で、欧州への輸出に踏み切るかはまだ分からない。

 EUはロシアの全輸出の6割を占め、その8割が天然ガスや原油などエネルギー資源。欧州のロシア離れは、ロシアの歳入源が失われることを意味する。専門家は英紙フィナンシャル・タイムズで「ロシアはガスの単価を下げてでも、EUの取り組みを阻むだろう」と予想している。」

 東京新聞はこの記事に図録に掲げた英国エコノミスト誌データをやはり掲載している(残念なことに新聞掲載図では依存度の小さい国やゼロの国を省略しているので説得力がかえって落ちる結果となっている)。この記事と同様の内容を記述した後にエコノミスト誌は次のように総括している。「ヨーロッパは天然ガスの24%をロシアから得ている。その半分(年800億立米)はウクライナ経由となっている。(中略)エネルギーの備蓄、相互融通、供給源多角化、自由化、シェールガス開発、そして省エネに関するヨーロッパの意思決定はのろのろしているが、クリミア併合のショックを契機にこれらについての意思決定を早めるべきであろう。政策決定の当事者たちはプーチン氏をひどく嫌っているようであるが、うらではいい機会を与えてくれたと認めるであろう。何をなすべきかは分かっている。ただしようとしていないだけである」(The Economist April 5th 2014)。

 世界のパイプライン及びLNGによる輸出入状況については図録4120参照。

 ここでデータを掲げたEU諸国は、依存度のたかい順にリトアニア、エストニア、フィンランド、ラトビア、ブルガリア、スロバキア、ハンガリー、スロベニア、オーストリア、ポーランド、トルコ、チェコ、ギリシャ、ドイツ、イタリア、ルーマニア、ルクセンブルク、スイス、フランス、オランダ、ベルギー、クロアチア、デンマーク、アイルランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、英国である。

(2014年4月10日収録、4月11日東京新聞記事引用)


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